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世界一可愛い君と家族生活(仮)をしてみた件。  作者: 瑠璃
第1章 世界一可愛い美少女
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世界一可愛い君と文化祭

 あれから1週間、とうとう文化祭がやってきた。

 うちの文化祭は生徒の家族のみ入場可能だから俺は緋色と一緒に学校にやってきた。


「お兄ちゃん、私、文化祭初めてだから楽しみ」

「そうか。緋色は文化祭自体初めてか」


 俺がそう言うと緋色は「うん!」と嬉しそうにはにかんだ。

 よく考えたら緋色は今まで病院で暮らしてたから、こういった催しは初めてか。


「……そういえばさ、お兄ちゃん」

「ん?」

「陽和さんのこと、ホントによかったの?」


 俺はその場で歩みを止めた。

 その拍子に緋色も止まり、俺をじっと見つめてくる。


「完全否定してるわけじゃないんだよ?私はその時塾に行ってたからお兄ちゃんがどんな気持ちでその判断をしたか分からないし、けどお兄ちゃんはこれでいいって思ってるのかなって……」


 緋色は言い終えた瞬間、一瞬だけつらそうな顔を見せたが、すぐにいつもの笑顔に戻る。

 多分、緋色は俺の亊心配してくれてるんだろうな。

 俺は心配させまいと、緋色の頭に手を伸ばし、くしゃりと撫でた。

 突然だったので、緋色は「ちょっ、お兄ちゃん!?」と言って困惑しているが嫌そうではないので継続した。


「……お兄ちゃんってホントに女たらし……」

「だめか?」

「だめですー。お兄ちゃんの魅力に気づいていいのは私だけですー」

「はいはい」


 適当にあしらいながら学校の昇降口を通過すると、緋色は急に顔が強張り始めた。

 どうしたのだろうか。そう思い顏を凝視すると、少し震えているのが分かった。

 そうか、初めて来る場所に緊張してるのか。


「大丈夫か?」


 そう聞くと、緋色はフルフルと顔を横に振った。だいじょばないらしい。

 俺はしょうがないと言わんばかりにため息を小さくついて、緋色の手を握った。

 すると緋色がビクンと体を震わせたので、違ったかなと手から力を抜くと、行かないでと言わんばかりに緋色が俺の手を強く握り返してきた。


「教室前までだからな」

「えー」

「えーじゃない」


 シスコンだと誤解されるのはもうご勘弁願いたい。

 病院内でどれだけひどい目に遭ったことか。思い出すだけで胃が痛くなる……。

 ただ、緋色はそれでもなお、絶対離さんと手を必死に握りしめるので、俺はしょうがないなと笑って緋色と共に歩みを進めた。


                      22


「オース、すずー。おはよう」

「おう、おはよう」


 教室に入ると、親友の流星がいつもどうりに挨拶してきた。

 ふと教室を見回すと、俺以外のクラスメイトは全員来ているようだ。

 いつもどうりの面々ではあるが、唯一違うとしたら教室の雰囲気で、お化け屋敷らしい涼やかな室温に、装飾された壁。後は電気さえ消してしまえばお化け屋敷の出来上がりといった感じだ。


「なんか昨日よりもクオリティー上がってない?」

「なんか、一番早く来た佐藤と加藤がさらに工夫をしたらしい」

「マジかよ。美術部マジ神。後で拝みにいこっと」

「おうおうそうしとけ。……まあ、そんなことよりも……」


 俺が美術部に尊敬の念を抱いていると、流星はニヤリと笑ってこちらを見た。細かく言えば、緋色の方に。

「この可愛い女の子について説明してもらおうか。すーずーくぅ~ん」

 うぜえ……。この上なくうぜえ……。

 そのニヤニヤごと一気にぶん殴ってやりたかったが、流石にそういったことをするとクラスメイトに引かれてしまうのでしない。


「そういえば、緋色とは初めてだよな。俺の妹の緋色だ」


 俺が緋色の紹介をすると、クラス中がざわざわと騒ぎ始めた。

 それを見た緋色は顏を不安の色に染めて、俺の手をぎゅっとさらに強く握った。


「涼……いや、お兄様」

「今更媚びを売ろうとしても緋色は簡単には嫁に出さん」

「どこの親父だよ」


 いきなりお兄様と呼んできた流星にしっしっと手を払うように振ると、流星は大人しく引き下がった。

 緋色は見た目がいいからそりゃあモテるだろう。変態だけど。

 ただ、流星のようなチャラ男ではなく、もっと根のしっかりした優しい男性が良いと俺は思っている。

 まあ、そんな思いは小指の爪先も気づいていない緋色は未だ兄離れ出来ておらず、昨日なんて俺の昔の写真見て「おにいちゃあん」とよだれを垂らしていた。

 ちなみに、その写真は緋色が寝ている隙に抹消した。


「お兄ちゃん……」


 そんな緋色は消え入りそうな声で俺の名前を呼んだ。

 ふと緋色を見ると、今にも泣きだしそうな顔で俺をただ見つめていた。

 俺は「大丈夫だ」と緋色の頭を再び撫で、できる限りの笑顔を見せた。

                 

                  23


 色々あったが文化祭も無事始まり、中盤を迎えた。

 俺は実行委員ではあるものの、店の当番をサボるわけにもいかない。

 ってなわけで…………。


「GUWAAAAAA!」

「きゃああああああ!」


 ただいま、絶賛驚かせ中です。

 ちなみに緋色は一人で店を回るそうだ。

 個人的には俺もついていくべきだったのではないかと思っていたが、本人がどうしても行きたいと言ってきかなかったので、しょうがなく一人で行かせた。


「次の客入るよー」


 緋色のことを考えていると、次の客が入ると報告を受け、すぐにスタンバイする。

 すると、次の客と思わしき足音が教室に入ってきた。

 俺は最後辺りで驚かす役なので、かなり待ち時間が長くなる。

 そしてしばらくたった頃、やっと近くに足音が聞こえてきた。

 俺は驚かそうと体をそちらに向け……


「GAAAAAAAA!」


 雄たけびにも似た叫び声をあげて視界を開くと、そこには栗色の長い髪をたなびかせた少女、櫻井陽和が居た。その後ろには緋色も居た。


「……」


 しばらく気まずい空気が流れた後、陽和はそのままその場に倒れこんだ。


「ちょっ、陽和!?陽和いいいいい!!」


                   24


「慣れないお化け屋敷に行こうとするなよ」

「うう……すみません」


 俺たちはあの後、保健室に移動していた。

 あの場に倒れこんだ原因は、恐怖による失神だった。

 陽和本人に話を聞いたところ、陽和はホラーものが苦手らしく、お化け屋敷に入ったのは今回が初めてだったらしい。

 なぜそのようなチャレンジをと思ったが、どうせ緋色あたりにそそのかされたのだろう。


「その、涼、くん……」

「ん?」


 帰ったら緋色にどのようなお仕置きをしてやろうかと考えていると、陽和が寝ていた体を起こし、俺に話しかけてきた。


「涼くんは一週間前になぜあのようなことを言ったんですか……?」


 陽和が告げた言葉が俺の周りの時間を止めた。

 ただ、陽和はそんなことには気づいた様子もなく、俺の瞳をただ真っすぐに見つめてきた。


「涼くんがいない間、私は寂しかったんです。涼くんが居なくて悲しいとも思いました」

「陽和……」


 俺は緋色の言葉を深々と聞いていた。尚も陽和は続ける。


「涼くんの料理を食べたい。涼くんの声を聞きたい。涼くんの笑顔が見たい。この一週間、ずっと涼くんの亊を考えてました……涼くん?」

「え?」

「涙が……」


 陽和の言葉が俺の頬を伝う温かいものに気付かせる。

 ふと、自分の頬に手を伸ばすと、俺の頬が濡れ、泣いていたことに気付いた。


「ごめん……」

 涙を隠すように後ろを向くと、陽和は「いえ」と、顏は見えないが、確かに穏やかな声が聞こえてきた。


「涼くんの弱いところも、強いところも、全部受け止めます」

「陽和……」


 嬉しい……。

 こんなことを言ってもらえたのは生まれて初めてだった。

 ふと、俺の胸がドクンと高鳴る。

 あれ、この気持ち…………。

 俺が疑問に思っていると、胸の高鳴りはさらに勢いが増していき、苦しさへと変わっていく。


「涼くん……?」


 陽和が俺の正面に回り、顏を覗き込んでくる。

 陽和の顔が近くなって、胸の内の苦しさだけでなく顔も熱くなっていく。

 ああ、そっか。

 俺は不治の病を患ってしまったんだ。

 誰にも治せない、恋の病を。


                      25

 

「それで、流星。あの二人は結局どうなったんだい?」


 文化祭の翌日、俺こと椿流星はとあるカフェで幼馴染の佐神渡と一緒にあの二人の話題で盛り上がっていた。


「ああ、あの二人、お互いの大切さに気付いてさらに仲が良くなってた」


 俺がニヤリと笑いながら言うと、渡は「へえ」と面白いと言わんばかりに笑った。

 こいつ、今の自分の置かれてる状況を理解してんのか?


「渡には悪いことしたな」

「悪いって?」

「悪役をやらせたこと」


 俺の謝罪に渡は「いいよいいよ」と爽やかなイケメンスマイルを送ってきた。

 ま、眩しい……!眩しすぎるぜ……!


「ところで、流星は冬島を今回追い詰めるようにしたんだい」


 不思議なのだけどと俺に視線を送ってきて、別に隠すようなこともないので素直に話した。


「あの二人は、特に涼には幸せになってもらいたいんだよ。アイツとは長い付き合いだからな」

「おーい。僕も一応流星とは長い付き合いだけど」

「お前は俳優として活動し始めた中学時代から会ってねえだろ」

「それ、幼馴染の友人に言う言葉?」


 …………ちょっと何言ってんのか分からなかったのでスルーしつつ、俺は話を続けた。


「だからさ、あの二人にはお互いに存在意義を確かめ合ってもらう必要があった。だから今回はこうした」


 お前には恩を売っちまったけどなと余計な一言を付け足すと、渡は苦笑した。

 渡の苦笑いなんて久しぶりに見たから写真に収めようとスマホを手に取ると、ピロンとスマホからチャットアプリの通知音が鳴った。

 何だろうとアプリを開くと、そこには面白い内容が書いてあった。


「面白くなりそうだ……」


 俺がニヤリと笑うと、渡は不思議そうな顔をして俺の顔を見つめた。

 メッセージを送ってきた相手の名前はこうだった。


 萩原秋穂と。

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