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メッセージ  作者: K
27/30

27 快挙です

岳が6組から出ていくのと入れ違いに、埜々下佑人が、勢いよく教室に飛び込んできた。

「6組の皆さーん!」

入るなり、大声で、叫ぶ埜々下。

「快挙です!」

昼休みが終わる2分前だから、6組の生徒は、そのほとんどはクラスにもどってきている。

バラバラと集まってきた生徒たちが、一斉に埜々下を見る。

埜々下は、十分に間をとって、6組全員が、自分に注目したことを確認すると、

大声で、嬉しそうに報告したのだ。

「何と、我が6組から、学年1位が誕生しましたー!!」

一瞬、静まりかえる6組。

埜々下が、何を言っているのか、把握し損ねた顔が、お互いの顔を見合わせる。

そこへ、別の生徒が、教室にかけこんできた。

「おい、榛名が、学年1位になってるぞ。」

「ええー?!」

どっと、歓声があがった。


3年6組は、4月の始業式の日、クラスに編入された瞬間から、あきらめた1年が決定づけられる。

学校中から、落ちこぼれのレッテルを貼られ、自分自身も、どんなにあがいても、このクラスから逃れることが出来ないことを実感する。

教師の質は、1組が優先され、6組で、スーパーティーチャークラスが授業を担当することはない。

更に、授業も1組から順に、やりやすい形で優先される。

6組の授業は、あまった時間、あまった教師で埋められている感じさえする。

そんな、学校から、先生から大事にされていない雰囲気は、感受性の強い少年少女たちには、ストレートに伝わり、ますます自己評価を低くしてしまう。

文化祭にしても、体育祭にしても、3年6組は、いつも、協調性もやる気もない、ただ参加するだけのお荷物集団となっていた。

一生懸命やるということが、無意味に思えてしまうのだ。

何をやっても無駄。

上のクラスには、何もかも、かなわない。

ただ、自分の今の分に見合った場所に落ち着けばいい。

そんな、目標をなくした生徒たちのクラスだったのだ。


その何をやっても駄目なクラス、誰かも期待されない、勉強においては、どこよりも不利なクラス、その6組の生徒が、学校から、何もかも全てに優先され、全ての条件で、受験に有利な1組全員を差し置いて、学年1位になったという。

他人のことに、興味を持つ6組じゃない。

団結して、誰かを応援するような6組でもない。

けれども、何もかも駄目だと思っていた6組から、学年1位のクラスメイトが誕生した事は、彼等自身にとっても、十分意外だったのだが、意外に愉快で、意外に痛快だったのだ。

また、クラスメイトの快挙に喜ぶ雰囲気も、3年6組になって、はじめてのことで、皆で喜ぶことを、身体で表現しているうちに、それも楽しくなってきたことに気が付いたのだ。

6組が湧いた。

こんなことは、4月のクラス編成以来はじめてのことだった。

どこか、いつも醒めていて、他人のことには無関心で、一生懸命、何かをすることを忘れてしまったような6組の生徒が、何だか、よくわからないけど、楽しい雰囲気を一緒に味わったのだ。

それは、遠巻きで見なければならないほど、人を拒絶するオーラを放っていた渉が、夏休み前から、少しずつ変わっていき、6組に少しずつ打ち解けてきたせいでもあった。


凛が、いたずらっぽく笑いながら、

「二階堂の叔母さん、きっと、今月の学級通信、破り捨てるよ。」

と、渉を見上げると、

「じゃあ、叔母さんは、もう、学級通信を卒業するまで破り捨てることになるな。」

と、渉は自信ありげに笑った。



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