表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メッセージ  作者: K
PR
22/30

22 出ていくのか?

渉が荷物をまとめていると、岳が部屋に入ってきた。

「本当に、ここから出ていくのか?」

「ああ。」

教科書と、服をまとめながら、渉は答える。

「帰ってこないつもりなのか?」

「多分。」

「防衛大学に受験するのか?」

「…。」

渉は、はじめて、岳を振り返った。

「渉が防衛大に行くなら、俺も受験する。」

渉には、わかっている。

岳が、ずっと自分を追いかけていたことを。

ずっと自分に憧れ、自分のようになりたいと思っていたことを。

体中をあざだらけにされ、階段から突き落とされても、それは、自分自身の望んでいたことであり、岳に対して、恨みなどは一片もない。

岳が、今でも自分を好きでいてくれていることもわかっている。

「岳…。」

渉は立ち上がった。

そして、じっと、この2年で、自分より少し背の高くなった岳の目を見る。

「渉…。」

岳にとっては、久しぶりの渉の強い視線だった。

この目が好きだった。

強い意思と、強い信念を感じさせるこの目に憧れた。

事故のあと、すっかり消えていた、目の光が、再び渉にともったことを、岳は認識した。

笑顔になる岳に、渉は、低い声で言った。

「岳、お前は、もう、俺のあとを追うな。」

「え?」

岳の顔から笑顔が消えた。

「俺に近づくな。」

「え? どういう意味?」

「…。」

渉は、それには答えず、さっさと、荷物を片づける。

「どういう意味なんだ? 渉?」

岳が、渉の肩をつかむと、渉は、その手を振り払った。

「!?」

少し、ためらうような間があき、岳は、渉の言葉を待ったが、渉は、積み込んだ荷物を背負い、そのまま、何も言わず、岳の横を通り過ぎていった。

「渉…。」

岳は、呆然と、渉の後姿を見ていた。


荷物を榊の車にほおりこんだ渉は、沙智子に

「お世話になりました。」

と深々とお辞儀をした。

沙智子は、苦虫をつぶしたような、嫌な顔をしていた。

片桐は、心から、ホッとしたようだった。

「それでは、榛名君のことは、おまかせください。」


片桐は、片桐自身の車で、とりあえず、校長に報告するからと、学校にもどっていった。

渉は、恭平の車の助手席に乗り、車が、二階堂から見えない位置まで走ると

「岳に、あんなに冷たい態度をとったのは、はじめてだ。」

と、深い溜息をついた。

岳を傷つけた。

自分が傷つけた岳の姿を見て、渉自身も傷ついていた。

「二階堂の為だ。」

運転しながら、恭平が言うと、

「わかってます。」

と言った渉は、窓の外を見て、恭平にその表情を見せなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ