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メッセージ  作者: K
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16/30

16 あなたのせいではありません

恭平が『ありす』の駐車場に着くと、バイクはあったが、巧と渉の姿が見えない。

『ありす』の中に入ると

「遅かったな。」

と、巧が声をかけた。

カウンターを背中にして、もたれるように座っている。

そして、そのすぐそばの4人テーブルの手前に、榛名渉が座っていた。

同じテーブルの奥から、こっちに向いて座って、どうやら遅いランチを食べていたのは、

「爽君。」

「お久ぶりです。」

巧の弟、大学生の志筑爽だった。

にっこりと笑うその雰囲気は、相変わらず優しい。

カウンターに、行儀悪くもたれている巧とは、ことごとく対照的だ。

派手な兄貴に比べて、穏やかで、どこかホッとさせる。

「爽が来ていたのは偶然だ。けど、こういうのは、たいてい必然なんだ。」

巧が、謎のような言葉を吐いて、何がおかしいのか、一人でくすくす笑っていた。

恭平は、『ありす』のママである凛の母親に軽く挨拶をして、奥のテーブルに向かった。

渉は、巧にアイスコーヒーをおごってもらっていた。

学校にいるより、ずいぶん、リラックスしているように見える。

巧とは、バイクの話で盛り上がっていたようだ。

恭平は、腕時計を見て、まだ、学校での説明会が終わっていないことを確認し、渉をうながした。

学校に戻らなければならない。

渉も、それは、よくわかっていた。

コップのアイスコーヒーを飲み干し、巧に頭をさげた。

「また、来いよ。いつでも乗せてやる。」

「はい。」

渉が笑っている。

恭平は、生徒が微笑むだけで、こんなに嬉しくなるのかと、少しく感動する。

今日ばかりは、巧の馴れ馴れしさに感謝しなければならない。

渉がこんな感じでいられる空間から、引っ張り出すのは、残念な気もするが、時間は迫っている。

「じゃ、これで。」

促す恭平に、続くように、渉が立ち上がろうとした、その時だった。

テーブルの向こうから手をのばし、爽が、いきなり、渉の腕をつかんだのだ。

「?」

皆が、一斉に爽の顔を見る。

「どうした?爽。」

巧の怪訝そうな声に、爽は、ハッとしたように瞬き、それでも、驚く渉の腕をつかんだまま渉の目を、しっかり見据えた。

「あなたに、伝えなければならないことがあります。」

その真剣なまなざしに、恭平も、ただ事ではないと感じる。

相手は、爽なのだ。

それは、同時に巧も思ったようだった。

そして、何か面白い事がはじまるのかと、口元が緩んでいる。

「事故は、あなたのせいではありません。」

「は?」

鳩が豆鉄砲をくらったような…

そんな表現がそのままあてはまったように、渉は、面食らって爽を見て、そして、次の瞬間、さっと、掴まれた爽の腕を振りほどいた。

恭平と巧が、爽の言葉に首を傾げる中、渉の顔色は、明らかに変わっていた。

その渉に、爽は、更に、言い重ねる。

「あなたに、事故の責任はありません。」

穏やかだった渉の顔に、ピンと緊張感が走り、警戒心が極限まではねあがる。

恭平も巧も、爽が、意味なく、こんなことを言いだす男じゃないことはわかっている。

「何なんだ? あんたは…。」

渉の顔は真っ青だった。

爽の目は真剣だ。

場の空気を読めない男じゃない。

それでも、こんなに唐突でも、言わなければならないと判断したその目は、渉をじっと見据えていた。



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