第2話 開拓村1
一人の男が村長の家の前で大きなため息をついた後、大声を発した。
「ジローの息子、ジローでございます。お呼びとのことなので参りました」
「おお、来たか。先ずは庭先に回れ」
応じたのは、開拓村の村長。
ジローは、言われたとおりに庭先にまわり、そこで村長を待つ。
ジローの身分では、よほどのことがない限り村長宅に上がることなど考えられず、村長と話すときは庭先に立ったままというのが常だった。
「生まれたらしいな、男と聞いた」
姿をあらわした村長。庭に出ることなく、一段高い家の中から話をすすめる。
「はい---男です」
「しからばどうする」
「いや---息子のジローが体が弱いため、できれば育ててやりたいと---」
「ほう、スペアのスペアということか。随分と贅沢なことだな」
「---」
「村では三人目の男子は流すという掟があるのはお前も承知しておろう」
「---」
「まあ、良い。息子のジローの体が弱いことは承知している。それに、ここのところ豊作が続いており、開拓もまあ、順調だ。一人くらいは食わしてやれるか」
「ありがとうございます」
「それにな、ジローの息子ジローよ。お前は我が一族だ。一族の子が増えるのは、まあ、めでたいことだ」
「はい」
「ただなあ、周りの目というものもある。飢饉に---いや、不作となったらば赤子の分の食い物を減らすからな」
「はい、承知しました」
「励めよ、ジローの息子ジローよ」
村長はそう言うと踵を返し、家の奥へ戻っていった。
村長の姿が見えなくなると、帰路につくべく歩きだした。
「まあ、なんとかお許しをいただけたか---それにしても三人目も男か。なんで女が産めないんだ、あいつは---」
不条理なことをつぶやきながらジローは村長宅を後にした。




