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2度目の転生に関する報告書  作者: トール
第四章 ロマ帝国との戦い

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最終話 論文集7(民主主義に関する一考察)

とうとう最終話になってしまいました、

トール・イスタンの功績について


最後にトール・イスタンの功績について述べる。


①魔法技術発展への貢献

②農業革命への貢献

③産業革命への貢献

④科学技術発展への貢献

⑤資本主義成立への貢献

世界平和成立パックス・バルティカへの貢献


これらが既存研究で多く取り上げられているトール・イスタンの功績である。

確かにこれらの功績のどれもが現代社会成立のためには事欠かさないものであり、その重要性については疑う余地はない。

また、この他にも医療福祉体制の成立、戦時国際法の成立等数多くの功績を

トール・イスタンは残している。

しかしながら、筆者は、これらを上回る功績をトール・イスタンは挙げている

と考えている。それが、


⑦民主主義成立への貢献


である。


そもそも民主主義に必要な要件とは何か。

自由・平等といった理念、三権分立などの制度的枠組み、普通選挙の実施に代表される適正なプロセスの確立など、民主主義には数多くの必要とされる要件が挙げられる。これらを一言でまとめるならば、

「法治主義を大前提とした上での、立法府への国民の参加(普通選挙による立法府議員の選出)」であると筆者は考える。


この定義に従えば、民主主義の成立を論じるうえで重要なのは、単に選挙が実施されたかどうかではなく、法に基づく統治の下で、国民が立法府の形成に参加する制度が整えられたかどうかである。


それではバルト連合王国において如何にして普通選挙による立法府が成立した

か、これについて簡単に述べる。


立法府の起源は、王歴30年イスファ幕府成立の際に征夷大将軍の諮問機関と

して発足した諸侯会議である。

諸侯会議は大政奉還による幕府消滅後も宰相(ならびに全権宰相)の諮問機関

として存続した。

この会議体は、王歴40年の税制大改革を行うにあたり、都市代表ならびに村

落代表を取り込み、商人ならびに農民の意見を反映することとなった。


王歴41年には諸侯を上院、都市代表ならびに村落代表を下院に分離。

同年に下院議員選出のための普通選挙が行われた。


この普通選挙実施にあたり、トール・イスタンの夫人である三聖女がそれぞれ

政党を結成、政党政治の基礎を作ることとなる。


王歴45年 バルト連合王国基本法(憲法)が制定された。

憲法の規定により、この会議体は立法府として位置づけられることとなった。


立法府成立までの一連の施策は、公式には全権宰相であるティナ・イスタンに

より進められたとされている。しかし、実態としてはトール・イスタンが主導

したものであることは、数々の資料から明らかである。


また、トール・イスタンはバルト連合王国元老院(後に議会上院と統合)議員

の立場で、民主主義において必要とされる官僚制度の確立、義務教育制度の確

立、マスコミの育成等に多大な貢献をした。

征夷大将軍辞任後のトール・イスタンは民主主義政治がバルト連合王国に根付

くよう奔走したといっても過言ではないであろう。


さて、このように成立した民主主義であるが、これは決して優れた政治体制で

はない。


民主主義は政策決定に時間がかかり非効率的である。

民主主義は多数派が少数派の権利を侵害する危険がある。

民主主義においてはロビイストによる特定集団への利益誘導が行われがちである。


なかでも近年は、短期的な人気取り政策を優先して長期的利益を軽視したり、扇動的な指導者が大衆感情を利用して極端な政策を進めたりする、いわゆるポピュリズムが横行している。


そのような多くの欠点を抱える民主主義を、多大なコストをかけてまで守らね

ばならない理由はあるのだろうか。

その問いに対するトール・イスタンの回答をもって本論文を終えたい。


「我々は民主主義を守らねばならない。なぜならば、民主主義は民衆が政治責

任を負うことができる唯一の政体であるためである」

            王歴46年9月15日 トール・イスタンの意見書

 文学部史学科論文集より


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


おまけ


トール「先日言ったとおり、民主主義を機能させるためには組織化された多数

派形成の制度、すなわち政党を作ることが必要です。僕が政党を作る

と、それに対抗する政党が作られない危険性がある。

このため、姉上、ティナ、ユメにそれぞれ政党を作ってほしい。ここ

まではよろしいですか」

クレア・ティナ・ユメ「大丈夫です」

トール「本日はみんなが考えてくれた政党名を披露してもらいます。まず、テ

ィナから」

ティナ「はい、先ず民が主であることを具現化するための政党であることを表

すため『民主党』という名称を考えました」

トール「ふむふむ」

ティナ「ただ、これだけでは不十分です。民主主義は法治主義を前提として成

立することを表したいと考えました」

トール「なるほど」

ティナ「法治主義を行うためには法律が必要。法律を作るためには指針、すな

わち国のあり方を定義する基本法が必要です」

トール「そのとおりだ」

ティナ「私はその基本法を憲法と名付けました。我が国にはまだ憲法が制定さ

れていません。これを速やかに制定するという思いも込めて、政党名

を『立憲民主党』といたします」

トール「---」

ティナ「トールお兄さま、何か問題でも」

トール「いや、問題はない。では次、ユメ」

ユメ 「民主党までは同じ。我が国の民は国の民であるという意識が乏しい。

諸侯の民であるという意識がまだある」

トール「そのとおりだな」

ユメ 「国民国家になる必要がある。だから『国民民主党』」

トール「---」

ユメ 「ダメなの?おにいちゃん?」

トール「いや、ダメじゃないよ。次、姉上」

クレア「三日三晩寝ずに考えた。『トール様と愉快な仲間たち』だ」

トール「それはちょっと---」

クレア「何が悪い!これからもトール様を中心として仲間と愉快に暮らしてい

く。だから『トール様と愉快な仲間たち』だ」

ティナ「クレアお姉様、それはさすがにダメでしょう」

ユメ 「ん。クレアお姉様はおにいちゃんの思いを理解していない」

トール「姉上---却下です」

クレア「なんだ、みんなでよってたかって私が考えた名を---もういい!勝手に

しろ!お前たちの好きな名前をつけろ!お前たちが自由に名前をつけ

ろ!」

ユメ 「ん?」

ティナ「私たちが自由に名前をつける---自由に?」

トール「(やめろ、やめてくれ!)」

ティナ・ユメ「「自由民主党!!」」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


王歴41年第一回普通選挙結果


軍部ならびに民衆に絶大なる人気を持つクレアが率いる自由民主党が議席の2/3超を獲得するという圧倒的勝利を収めた。

医療・福祉関係を中心にユメの国民民主党が20%の議席獲得。

ティナの立憲民主党は、10%の議席獲得にとどまる惨敗であった。


なお、第一回普通選挙は三聖女の人気投票にすぎなかったという分析がされて

いる。


最期までおつきあいいただきましたこと、厚くお礼申し上げます。


最終話の論文集について、当初は論文の筆者名を記載するつもりでした。

筆者名は、「文学部史学科准教授 楊 文理」または 「文学部史学科准教授 尤里安·敏茨」としたいと考えておりました(そのため、マックス・ウエバーならびにクラウセビッツについて、あえて中国語表記とした)が、さすがにこの名前を出すのはまずいだろうと考え、「筆者名なし」にした次第です。


なお、次作について構想中です。

内容は、トールの3度目の転生を描くものと考えております(ローファンタジーです)。

次回作品についても、おつきあいいただければ幸いです。


---あと、本作品に関する感想をいただければ、うれしいです。次回作品の参考にしたいので。



 

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