表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
I'll  作者: ままはる
第九章
101/114

101.ショータイム

「取り敢えず、乾杯でもする?」


 リズがそう言った矢先、ウィルは目の前にあったビールを飲み干した。


「あっ! ウィル!」

「あーあ。後でぶたいちょも来るって言ったのにー」

「……よしっ。開き直った! 折角用意して貰ったんで、ありがたくいただきます!」


 まだほんのり赤みの残る頬で、ウィルは料理に手を伸ばす。

 リズたちも、それぞれ飲み物を手にした。


「誕生日会なんて、子供の時以来だな。あれは……セイルの11歳の誕生日……」

「おい、ゼン。それ以上口を開くな」

「お前の記憶が戻ったら、俺は昔の話をすると言ったはずだ」


「え? 何? 11歳のセイルの誕生日がどうしたんだ?」

「招いた同級生の中に、ソフィアというーー」

「やーめーろっ!」

「なになに? 私も聞きたーい!」

「私も興味があるわ」


「おい、貴族かぶれ! この飯、どうにか頑張ったら食えるようにならねーか?」

「それは僕のことかな? 頑張ってみたらいいのではないかな。食せるようになった暁には報告してくれたまえ。首を長くして待っているよ」


「なるほど! 頑張れば食えるようになるってことだな!」

「ラグエル殿……シュイ殿は、不可能だと言っていると思われるのだが……」

「おゎ!? て、てめぇは俺に話しかけるんじゃねぇ!」

「精霊さんたち、面白いね」


 それぞれが賑やかに食事と会話を楽しむ中、キリーがそっとウィルの側へとやって来た。


「ねぇ、ウィル?」

「んー?」


 骨付き肉にかぶり付きながら返事をするウィル。


「私のこと、嫌いになった?」

「はぁ?」

「だって最近、目も合わせてくれないし……」

「そんなこと……」


 自覚はあるだけに、何も言えない。けれど勿論、嫌いになったわけではない。


「私、ウィルとずっとこんな感じだと悲しいんだけど」

「……」


 ウィルは久しぶりに、キリーの顔を正面から見た。

 いつも明るい笑顔の彼女の顔には、今は不安そうな表情が浮かんでいる。


(俺が避けたって何にもならねぇよな……)


「ちょっと、考え事してただけ。別に嫌いになったとか……そんなんじゃねーから」

「ホントに?」


 頷くウィルに、キリーは嬉しそうに笑った。

 そんなふたりを、ラリィは離れた席から満足そうに眺めている。


「ずっとこうやって、みんなでワチャワチャ出来たらいいなぁ」

「……ラリィ。お前、何を考えている……?」


 静かな声音で尋ねるゼン。するとラリィは含み笑いで、ポケットの中に手を入れた。


「ふっふっふっ……オレの新技を披露してやろうと考えていたのだ!」


 高らかに宣言したラリィは、ポケットから次々と、色とりどりの連なったハンカチを取り出して見せた。更にハンカチをひらひらと翻すと、それは一瞬で一輪のバラの花へと変化する。


「ラリィ君、すごい……!」


 目を輝かせ、ラリィの手品に魅入るフォト。前回ラリィの手品を見た時は目がほとんど見えていなかったので、ちゃんと見るのはこれが初めてである。


 バラの花はゼンの目の前で消え失せ、一個の小さな卵へと姿を変えた。卵はラリィが手を振る度に、指の間に一個ずつ増えていく。


「……?」


 ゼンは不思議そうにラリィを見た。ラリィはニコリと笑い、両手を閉じる。

 手の中から卵は全て消えた。

 そして両手をパンッと打ち鳴らした次の瞬間、両手の間から真っ白な本物の鳩が現れたのだった。


「お見事ではないか、お猿君」


 シュイを筆頭に拍手が起きる。


「シュイに褒められると嬉しいなぁ」


 ラリィは鳩を撫でながら、満足げである。


「ホントにただの手品ですか? 実は魔法とかじゃないですよね?」

「オレが魔法なんか使えるように見えるか?」

「見えないですけど。ねぇ、ゼン先輩。ホントに魔法じゃなかったですか?」


 魔法士にしか見えない魔力の痕跡は無かったかと、ゼンに尋ねるウィル。


「……あ……ああ……」

「目の前で見ても分かんなかっただろ?」

「……そうだな」

「また新しい技覚えたら見せてやるからな」


 そう言ってラリィはビールを喉に流し込んだ。

 やがてキリーたち精霊と入れ替わりに他の隊士たちやライトが合流し、ウィルのサプライズ誕生日会は賑やかに過ぎていった――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ