うねり
開明塾。
斎藤壮志が20人ほどの男女に講義を行っていた。
全員に短い銃の描かれた紙が渡されており、斎藤がそれについての説明をしている。
「先生、それではこのピストルというのは、短筒とはまったく別物ということですか?」
生徒の1人が質問した。
「そうだ。確かに火薬を爆発させて弾丸を打ち出すものだが、これまでの火打ち石で火薬を発火させるのではなく、弾丸に衝撃を与えて発火させる」
「衝撃を……?」
「これがその弾丸だ」
斎藤歯懐から小さな金属を出し、教壇に置いた。
「変わった……弾丸ですね」
「みんなが知っているのはこれだろう?」
そういって、もう1つ、丸い玉を出した。
「はい。それを銃口から火薬と一緒に詰めて……」
質問した生徒が玉を込める動きをしてみせた。
「うん。だがこれは違う。これは銃口から詰めないし、火薬を詰める必要のない。これは弾倉と呼ばれる……」
描かれた銃の一部を指さして
「この部分に入れて、さらにここの撃鉄という部分で弾倉の後部」
次に弾丸の後部の小さな丸を指して
「ここに衝撃をくわえることで発火する。この部分には雷管と呼ばれる衝撃により発火する部品が組み込まれている」
生徒から「ほおぉ」と声が上がる。
「先生、それではこの弾丸の、その後ろ部分をどこかにふつけたりしたら、発射されてしまうのでは?」
「いい質問だ。結論から言うと、少々の衝撃ではこれは発射されない。例えば……」
斎藤は弾丸を床に落としてみせた。
「おっ!!」
と、声が上がったがゴロンと転がっただけだった。
「このように少しくらいの衝撃では発射されない。この撃鉄という部品は尖端が細く、小さな力だが一点に集中させた衝撃があるから雷管は発火する。つまり例えば……この雷管に細い釘のような物をあてがい金槌で強くなっ叩くと発射させることはできる」
また教室に「おおお」と肥が上がった。
「先生、この弾倉という部分にどうやって弾丸を詰めるのですか?後ろには撃鉄があります」
別の生徒が質問した。
「それは、絵ではわかりにくいが、この弾倉は少し膨らんだ形をしていて、横に1カ所、弾丸を詰められるよう開けてある個所がある。そこから1発ずつ込めていくんだ」
「1発ずつ……?」
「このピストルには6発の弾丸が込められる」
「ほお!それではつまり……」
「途中で弾丸を込め直さなくても6発の銃弾が撃てるということだ」
「それはすごい武器ですな……」
「今までの短筒のように1発撃って、先端から玉を込める必要もない」
生徒たちはピストルが描かれた紙を真剣に見ながら、1人が言った。
「メリケン『現在のアメリカ合衆国』の異国兵どもはこんなすごい武器を使いよるのですか………」
その言葉に斎藤は、少し声を低くして言った。
「異国兵だけじゃない。メリケンは一般人もこれを持っている」
その言葉にどよめきが起こった。
「一般人!?つ、つまり我々のような?」
「そうだ。メリケンではちょうど侍が刀を持つように、ピストルを持ち歩いている。なんなら町人たちもピストルを入手することができる」
「なんと………こんな物が……」
「それほどまでに我々は遅れをとってしまっているんだ。侍である君たちにこんなことを言うのは忍びない。そして反感も買うかもしれない。だがあえて言わせてくれ。剣がものを言う時代はもうすぐ終わる。これからは剣ではなく銃で戦う時代が来る!」




