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小田氏治の異世界転生、転移  作者: M


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11/15

元亀元年八月、

元亀元年八月、結城晴朝が六千を率いて鬼怒川を越える。小田氏治は平塚原の真ん中に出ず、道と夜の荷だけで敵を戻す。分かりやすく、場面を追える形に書き直した。

平塚原

八月の昼下がり、土浦の城門に泥だらけの百姓が転がり込んだ。

「結城の旗です。船玉の渡しを越えました。多賀谷が先で、荷が続いています」

小田氏治は帳面から顔を上げた。結城晴朝。鬼怒川の向こうの宿敵だ。海老ケ島で勝ち、結城城で痛み、また川を越えてくる。六千という数は、小田の今の手勢の倍以上あった。

岡見治資が、待つまでもなく口を開いた。

「出ましょう。平塚原で迎えれば、まだ間に合います」

「原には出ない」

氏治は短く言った。治資の眉が動く。手這坂の冬から、この眉は完全には降りていない。

「では、また城に籠もるのですか」

「城にも籠もらない。水守の先で道が細る。あそこで止める」

信太伊勢守が、帳面の端を指で押さえた。

「米は土浦に置いたままにします。城へは戻しません」

「それでよい」

朱羅は隅で火縄を巻いていた。赤い南蛮胴は、夏の間に砂埃を被っている。氏治が彼女を見た。

「六挺で足りるか」

「八つまでなら生きる。それ以上は、縄だけ赤くします」

「軽機関銃は出さない」

「出さなくてよいです。六千の原で雹を降らせれば、結城も佐竹も同じ噂を持って帰ります」

治資が舌打ちに近い音を漏らした。

「鉄砲女の言うとおりに、また退くのですか」

「退くのではない。百だけ出せ。百を超えるな。夜に突く場所は、本陣ではない。折れて固まった荷の脇だけだ」

水守の先は、畦が一本になる。

多賀谷政経の先鋒がそこへ差しかかったとき、道の両脇の窪から音がした。人を撃った音ではない。轍の先の水が、二度跳ねた。馬が立ち、荷が傾き、列が折れる。畦の向こうから、もう二発。交叉はそこで終わった。三発目は来ない。

多賀谷の侍が窪へ駆け込んだときには、窪は空だった。残っていたのは、湿った火縄の匂いと、欠けた杭だけだ。

「鉄砲は二十か、三十か」

物見はそう戻った。生きていた筒は六挺である。十二挺は、別の木の陰で火縄だけを赤くしていた。

平塚原に着いた結城の本隊は、小田の旗を探した。旗は小田城の櫓にある。原には、風に揺れる草と、遠い煙しかない。晴朝は馬上でしばらく原を見た。見えない敵を、六千で追う図が、頭の中で薄くなる。

夜、治資が百騎を率いて出た。

朱羅が先に歩いた。南蛮兜の面頬の下から、短い声だけが落ちる。

「焼くのは荷です。人の陣には入らないでください。白を上げたら、退ります」

「分かっている」

治資の声は低かった。分かっている、と言いながら、刀の柄は握られたままだ。

水守の端では、昼に折れた先鋒が荷を寄せ合っていた。火が一つ、荷の脇で小さく上がる。百騎はそこを突き、米の俵を泥に蹴り、すぐ身を翻した。結城の喊声が上がるより先に、白布が夜気に浮いた。

一騎が遅れた。治資が自分で手綱を取って連れ戻す。手這坂の霧で落ちた一騎を、今夜は落とさなかった。

朱羅は撃たなかった。夜露で口薬が湿る。不発の煙は、生きている筒の位置になる。彼女は火蓋を閉じたまま、百騎の後ろを歩いて退いた。

明け方、結城の陣は立っていた。

立ってはいたが、先鋒の荷が泥になっている。晴朝は家臣の報告を聞いた。小田の本隊は見えない。鉄砲の数は分からない。多賀谷が、船玉の渡しを急げと言う。小田を食いに来たのであって、常陸の南で冬を越すために来たのではない。

結城の旗は、昼前に北へ戻った。

平塚原に、小田の死人はほとんど残らなかった。残ったのは、欠けた杭と、泥になった俵の跡だけだ。

土浦へ戻った治資は、馬を降りてもしばらく黙っていた。やがて、氏治にだけ聞こえる声で言った。

「突いて、退きました。坂の五十よりは、仕事です」

「百を超えなかった。それでよい」

信太が帳面を閉じる。村は焼かれていない。米は減っていない。減ったのは、結城の先鋒の明日一日だ。

朱羅は棚の封を数えた。夜は一発も使っていない。昼の六発だけだ。椀は割れていない。

「勝ちですか」

若い鉄砲持ちが聞いた。

「六千を殺してはいません。原の真ん中を踏ませなかっただけです」

氏治は窓の外を見た。北の空は、結城の旗が消えたあとも明るい。東には、片野と柿岡の釘が残っている。結城は戻った。佐竹は戻っていない。

平塚の露は、誰の靴底にもついていなかった。不死鳥は、また翼を畳んだまま、次の春の丘を数えている。

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