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緑の恋――あるカナブンの話  作者: Kentarou Tou


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第十話「緑のまま」


秋が来た。


光が変わった。



体が、動かなくなった。



木の上にいた。


そのものも、近くにいた。



動かなかった。


動けなかった。


しかし、いた。



光が来た。


体に当たった。


温かかった。



緑色だった。


まだ、緑色だった。


光が当たると、金色になった。


青色になった。


また緑色になった。



そのものも、光っていた。


隣で、光っていた。



土の下に、卵があった。


見えなかった。


しかし、あった。



来年、出てくる。


春になれば、出てくる。


緑色で、出てくる。



自分たちがいた木に、来るかもしれない。


同じ汁を飲むかもしれない。


並んで飲むかもしれない。



分からなかった。


しかし、そういう気がした。



光の中にいた。


そのものと、並んで、光の中にいた。



緑のままだった。


最後まで、緑のままだった。



それで、よかった。



(第十話 了)



緑の恋――あるカナブンの話 完

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