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前世、妹と恋人に裏切られた悪役令嬢は恋愛なしの穏便な道を平凡に生きていくはずだったのですが...  作者: はな


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51、忙しく...?

明日で最終話になります。



 次の日の朝、気づいたら王太子妃の部屋で目が覚めた。


 昨日はキスをして抱きしめられたとこあたりで記憶がなくなっている。

 おそらく寝てしまったのだろう。あの状況で寝てしまえる自分の神経の太さにおどろく。


 しかし事件の犯人たちが捕縛されたことから馬車でのあの時間はしばらく無いであろう休息の時間だった。

 そこで自分の気持ちをアレク様に伝えられたのはよかったのかもしれない。


 しばらくは会えないかもしれないが、私も私で事件解決に向けて手伝おうと決意を固めた。





 その日の夜──





「…なぜ、アレク様はこちらにいらっしゃるので?」

「なぜって…ひどいな。シェリーに会いたくて必死に仕事を終わらせてきたのに」





ーーーーーーーーーーーー


 よしもう寝ようかなと寝支度を整えたころ。今まで開いたことがない扉からこんこんとノックの音が聞こえた。一瞬聞き間違いかと思うも、再びノックの音が響いた。


 一瞬幽霊でもでたかと思うも、アレク様の声が聞こえる。


「シェリー。起きているのなら少し話さないか?開けるよ?」


 そう言って入ってきたのはアレク様だった。


 幽霊でないことにほっとするも、なぜここからアレク様がでてきたのか困惑する。


 いつもながら私の顔から読み取ったのか、この扉は2人の寝室につながっており、それぞれ私室からいけるとのこと。


 なるほど、たしかにそんな話は聞いたなと納得していると、すっと近くまできていたアレク様は私を横抱きにしてそのままソファに座った。



 そして今──



 私を膝にのせて上機嫌なアレク様は私をぎゅうっと優しく、でも力強く抱きしめてくる。

 私の髪を一房とり指でくるくるともて遊んでいる。


「あの、お仕事は…?」

「ああ、…俺も忙しくなることを覚悟していたんだが…今回は尋問などは違う人物がすることになってな…。まあ必要そうなのには立ち会う予定だが…」

「そうなんですね…」

「まあ、適材適所というやつだ…」


 何やらアレク様は遠い目をしている。



 適材適所。それは最もなのだが、今回尋問するのはオーウェンになった。嬉々として最近開発した自白魔法を試させてほしいと名乗り出た。

 シェリルを害そうとしたことで、というのもあるのだろうが、9割型好奇心だろうと思う。

 そんなオーウェンにいろいろ実験体にされていた人たちを思い出してしまった。

 自白魔法の効果は大きく、思っていたよりもスムーズに事が運んだことでこうした時間もとれている。

 今はシェリルとの時間を満喫しようと切り替える。




(それ以上は聞いてはいけないのかしら…?)


 アレク様の表情からそんなことを思っていると、不意にアレク様は私の顎に手を添えた。

 そしてそのまま彼の方を向かされ、顔と顔が一気に近づく。


「な、なにを……?」

「恋人同士が触れ合うのに、理由が必要か?」

「え?こ、恋人…?」


 たしかに、昨日気持ちを伝えあったから、恋人なのかもしれない。

 しかしそこまで考えていなかった私はいきなりのアレク様の行動に動揺してしまう。


 アレク様は余裕たっぷりな笑みを浮かべると、私の頬に軽くキスを落とした。

 それだけで顔が熱くなり、思わず頬を抑える。

 そんな私をみてアレク様はくすりと笑う。


「可愛い。好きだよ」


 あまりにも何もかもが甘くて、全身が火照っていく。


「仕事中、ずっとシェリーのことを考えていた。シェリーに会いたくて、触れたくて仕方なかった」


 低く甘い声で囁かれ、私の存在を確かめるみたいに頬や首、手に触れられる。

 私はもう指先まで火照って落ち着かなくて、アレク様の顔を見れなくなっていた。


「そ、それにしても前よりも近いというか……」

「シェリーが俺のことを好きだと言ってくれたから、浮かれているんだ」


 そう言って本当に嬉しそうにアレク様は微笑んだ。

 そんな言葉が嬉しいと思うのと同時に、ぎゅっと胸が締め付けられる。


 これからは前世も含めて今まで後悔した分、たくさん気持ちを伝えていこうと思いながら、綺麗な黄金色の瞳をまっすぐに見つめる。


「……本当は、ずっと…ずっと前からアレク様のことが好きだったんです。でも、そのときは認めるわけにはいかなかったんですけど…」


 黄金色の瞳が驚いたように見開かれる。

 するとみるみるうちに涙が目にたまっていくのが見えた。

 すかさずアレク様は私の首筋に顔を埋め「ありがとう」「俺も好きだよ」と呟いた。


 そんなアレク様がとても可愛らしく感じて、思わずやわらかな金髪をそっと撫でた。

 ビクっとしたアレク様もそのあとはされるがまま。むしろ首筋に猫みたいにすりすりしてくる。


 しばらくはそのままだったが、アレク様はふいに私を呼んだ。


「シェリル」

「はい──んっ」


 顔を上げると、そのまま唇を塞がれる。

 啄むような軽いキスが繰り返された後、大好きな体温と香りに包まれた。


「……本当に、夢みたいだ…」


 心からの言葉に胸がいっぱいになる。


「…夢じゃ、ないですよ」


 私の言葉に対し嬉しそうに微笑んだアレク様が、とても大切で愛しく思う。

 再び近づいてくる彼の唇を受け入れながら、私はこの幸せを噛み締めていた。



 前世、あんなことがあったけど。

 あんなことがあったからなおさら。

 明日が必ず来るとは限らないから。

 今掴んだ幸せを失くしてしまわないように。

 大切に生きていこうと、そう思った。




読んでいただきありがとうございます。

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