表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世、妹と恋人に裏切られた悪役令嬢は恋愛なしの穏便な道を平凡に生きていくはずだったのですが...  作者: はな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/65

46、アレクシスの前世①

アレク視点です。


少し長くなるかもしれませんが、アレクがシェリルに執着している理由が少しでも伝われば幸いです。


 ガタゴトと揺れる馬車の中、シェリルは俺の腕の中ですっかり安心しきったように力を抜き、安らかな寝息を立てている。


 ──寝てる手前何もしないけど、さすがに寝るのは想定外だ。


 先ほど、両想いだと分かり、口付けをしたまではよかった。そのあと感極まって抱きしめていたら急にシェリルの身体から力が抜けた。

 一瞬、何事かと焦ったが、寝息が聞こえ、ただ寝てるだけのようで安心した。


 しかし、自分の腕の中でスヤスヤと眠るシェリルに、信頼されているような気がして嬉しいような、身勝手にも悔しいようななんとも言えない複雑な気分になる。


 (俺たちは、恋人になったと言うことで、いいんだよな……?)


 少し自信がなくなるも、今日は色々あったし、もうすぐ日も跨ぐ時間だから無理もないかと考え直す。



 『アレク様は、斗真さんだったころの記憶を思い出して、よかったですか?』



 あの質問が頭をよぎる。答えたことは嘘ではない。

 正直、瑠璃が死んでからの記憶はあいまいだ。

 でも俺の前世については言うつもりはない。


 自分の腕の中で安心しきって眠る愛しい人を見つめると、幸せな気持ちが溢れてくる。


(やっと…やっと、手に入れることができた)


 シェリルと出会って…前世の記憶が戻って5年ほど。長い戦いだった。

 

 何者にも代えることができない愛しい存在を優しくぎゅっと抱き直し、前世のことを思い返す。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 最初は父親と母親、そして俺というよくある一般的な3人家族だった。


 母さんが水難事故で俺を助けて亡くなったのは俺が5歳の時。


 当時は父さんもしばらく塞ぎ込んでいた。父さんが俺を見る目が俺のせいだと訴えてくる気がする。それもつらかったが、母さんがいなくなったということにぽっかり穴が開いたようだった。


 それから5年経ち、俺も父さんもだいぶ元気になったと思っていた時のことだった。


 俺が10歳の時、父さんが再婚した。


 父さんから再婚しようと思う。と話があり、高級そうなホテルのレストランで義母となる美紀さんとご飯を食べた。朧げに覚えている母さんと、どことなく雰囲気が似てるな、父さんのタイプはこういうのなんだなと子供ながらに思った。

 年齢は35歳の父さんの10歳年下で、仲良くなれればいいな、とそのときはそれ以上なにも思わなかった。


 ほどなくして義母さんは妊娠して、弟が生まれた。俺が12歳の時。弟はめちゃくちゃ可愛かったし、あまりの小ささに感動した。

 父さんも新しく出来た家族に嬉しそうだった。


 しばらくは何も考えずに過ごしていたが、義母さんが弟を抱っこして、父さんが肩を抱き寄せているのを見て、ふと自分が邪魔者ではないかと思った。


 最近は義母さんのこちらを伺うような視線も居心地が悪い。


 一度思ってしまったら、時折その考えがよぎるようになっていき、家に居づらくなっていった。




 高校生になり、あまり家にいたくなくて街とか公園で時間を潰してから帰るようになった。


 俺は世間で言うところのイケメンという部類らしく、逆ナンとかよくされた。

 全く知らない女たちが熱のこもった目で俺を見て、遊びに行かないかと誘ってくる。


 そのときに、最近の義母さんからの視線と似ていることに気づいた。義母さんには父さんがいるのに、それにもかかわらず、その息子に?と嫌悪感が湧いてきた。


 それに気づいてしまうと、自分に声をかけてする女全般が気持ち悪いもののように思えてくる。

 声をかけてくるものも最初は断っていたが、それでもしつこかったので無視することにした。



 家にも外にも居場所がない。




 そんなある日、人がいないところに行きたくて河川敷の方まできた。一息ついたところで、つけてきたのか逆ナンしてきた女の彼氏とかいうやつが絡んできて一方的にボコボコにされた。

 喧嘩なんかしたことがなかったし、相手は5人いて、多勢に無勢。やり返すこともできなかった。


 思い切り顔や胴体を殴られ、髪を掴まれる。血の味が口内に広がり、痛みで目尻に涙が浮かぶ。

 そして再び殴られる、と思った時だった。


『おまわりさん!こっちです!こっちで喧嘩してます!』


 そんな声が河川敷の高架下に響く。


『やべ、逃げるぞ!』


 そんな声が響くやいなや、男たちは走って逃げていった。


 しばらくして静かになると、小学生高学年くらいの女の子が来た。


『…大丈夫ですか?』


 水で濡らしたハンカチを持ってきてくれたようで、地面に横たわっている俺の頬にそっと当ててくれる。

 

 警察に補導されると親に連絡いくな、と思ってたのに少し待ってみるも警察がくる気配がない。


『...警察は?』

『あれは嘘なの。一方的に大勢で1人を襲ってたから思わず...うまくいってよかったー!』


 そう言ってと満面の笑みを向けられた。この間ドラマでやってたのを真似してみました、と得意げな顔をしている。

 そして再び俺の怪我に目を向けて、自分の方が痛そうな顔をした。


『うわーとっても痛そう...。お兄さん、病院行きますか?』

『いや、それはいい。...どうして、助けてくれたんだ?』

『え?それは...なんでだろう?気づいたらもう体が動いてて...。お父さんもお母さんも、困っている人がいたら声をかけてあげなさいって言っていたからかな?』

『いい親だな。あんたみたいなやつなら、親から恨まれたりとかなさそうだ...』

『恨まれる?』


 気づけば話してた。ずっと、誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。

 相手がまだ子供で、理解できないと思ったのもあるかもしれない。

 全く関係のない人間だからか、一度言葉がぽろっとでてしまうと止まらない。


 別に答えが欲しかったわけではない。

 しかしその少女は最後までただじっと聞いていた。


 全て吐き出すと幾分スッキリしてふと、小学生相手に何してんだか、と我に返る。


『…それは、本人からきいたの?』

『......いや....そうなんじゃないかと、父さんたちの様子から思っただけだ...』

『それなら、確認してみたほうがいいと思うな』

『…簡単に言うな』


 真剣に聞いてくれて、真剣な顔で質問して意見を言ってくれた少女に、見当違いにも勝手に事情を吐き出したくせにイラっとしてしまう。


『だって、生きているうちしか答えを聞くことはできないんだよ。死んでしまったら、もう聞くことは永遠にできない。……本人にしか、わからないことなんだから……』


 俯きがちに少女が言った言葉は、やけに実感がこもっていた。それに内心驚き、思わず尋ねてしまう。


『...身近な人が亡くなったのか?』

『....うん』


 顔を上げた少女はここではない、どこか遠くをみるような目をしている。大人びた表情をした少女はそれ以上は何も言わなかった。


 俺もそれ以上は踏み込んではいけない気がして聞けなかった。




 怪我だらけで帰ると家は騒然とした。


 弟には号泣され、義母さんに何があったのか根掘り葉掘り聞かれ、今までみたことない剣幕で泣かれながらめちゃくちゃ怒られた。


 父さんも義母さんから連絡をもらったのか肩で息をするほど急いで帰ってきて、何をやってる!といきなり殴られた。

 被害者は俺なのに何故。と不服に思ったが、そのあとすぐにぎゅっと思い切り抱きしめてきた。

 父さんに抱きしめられたのはいつ以来か。記憶にないからとても驚いた。


 弟が泣き疲れて眠ったあと、この機会に腹を割って2人と話すことが出来た。


 母さんが自分のせいで死んだと思っていたこと。

 それで父さんから少なからず恨まれていると思っていたこと。

 父さんと義母さんと弟をみていると自分は邪魔者なんじゃないかと思ったこと。

 少し言いづらかったが、街で逆ナンされたときに義母さんの視線と少し似たように感じたことで、居心地が悪かったことなど思い切って打ち明けた。


 父さんと義母さんは驚いた表情で俺の話を聞いていた。

 話し終わたところで、申し訳なさそうな顔をした父さんと義母さんが話し始めた。


 父さんは母さんが死んだことは俺のせいだと思っていなかった。

 たしかに母さんが死んだことは死ぬほど辛かったが、大事な息子を守ってくれたことはとても感謝していると。

 ただ今後ひとりで育てていけるか、それがとても不安だったみたいで、それが顔に出てたのではないかとのことだった。

 また、義母さんとは歳が離れているが幼馴染らしく、義母さんはずっと父さんに憧れていたそうだ。

 それで、俺が小さい時は母さんに似てたが、成長するにつれて若かりし頃の父さんに似てきたことで、幼い頃の憧れて恋してたときを思い出していたらしい。


 俺にではなく、当時の父さんに。

 それもどうかとは思うが、ただの自意識過剰だったとわかった。恥ずかしい。


 話してみれば、なんてことはない些細なすれ違いだった。


 あの子のおかげで向き合う勇気を持てた。

 今度もしまた会えたらお礼を言いたい、とそう思った。




今日できたらもう1話投稿します。

読んでいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ