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前世、妹と恋人に裏切られた悪役令嬢は恋愛なしの穏便な道を平凡に生きていくはずだったのですが...  作者: はな


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38、立太子の儀

いいねやブクマ・評価などありがとうございます!

とても嬉しく励みになります!


 2週間前、新緑祭での事故もあり延期の話も出ていたが、無事に立太子の儀が執り行われた。


 貴族は全員参加が必須なっているその儀式は、王城の儀式のためだけにあるという広間で行われた。


 通常であれば王太子となる王子の婚約者は、準王族扱いとなり王族の隣に席を用意されているのだが、今回はその席はなく。

 アレクシスの婚約者であるハーディング公爵令嬢は公爵家のほうに身を寄せている。これは前代未聞のことだった。


 アレクシスは豪華な刺繍が施された赤いマントをなびかせて颯爽と国王陛下の前に跪いた。



「本日、ここにアレクシス・シュットガルトを王太子に任命する」



 国王陛下はそういうと国王陛下のものよりはシンプルながらも金色の輝きを放っている王冠をアレクシスの頭に置く。


「身命を賭してこの国のために尽くします」


 王太子となったアレクシスはそう言葉を述べ、立ち上がったアレクシスは周りに威風堂々とした姿を示した。


 すると大きな盛大な拍手が沸き起こった。その中を国王陛下に続いて退場していった。



 その短い儀式の間、アレクシスは溺愛してやまないと言われている婚約者に1度も目をむけることもなく、儀式が終わってすぐに退出していった。


 その婚約者であるシェリルは儀式が終わるなり、ため息を吐き出し帰っていった。

 その様はただの憂鬱そうな儚げなご令嬢であり、周囲の視線を集めていたのはまた別の話。

 


 周囲は儀式などそっちのけでその様子を驚いてみていた。


 いつも一緒にいるところをみていた人たちにとっては驚愕でしかない。


 パーティーなどで見かけたときにはアレクシスがシェリルを離さずに、ずっと腰に手を回してぴったりと寄り添っているところしかみていないのだからそうなるだろう。


 あの噂は本当だったのか。周りがそう思うのも無理からぬことだった。アレクシスのシェリルへの執着ぶりを知っている人からしたらただのバカげた噂であったはずなのに。


 その噂が本当だと思ったものたちは、今後どうするかを考える。

 

 ある者は婚約が破談になったときに備えてシェリルに婚約の申し込みをと画策し、またある者は娘を王太子妃にするために動き出そうとしている。

 良くも悪くもどのようなことになっても、影響力があり人気のある人たちの噂話である。


 


 そして迎えた夜。立太子を祝う夜会も催されている。いつもならアレクシスの色をこれでもかと身にまとっているシェリルは、今日は群青色のドレスを着ている。金髪に黄金色の瞳を持つ王太子の色とは似ても似つかない。


 エスコートしていたのはアレクシスだが、いつもにこやかな2人が揃って表情がなく、入場後は少し距離がある。あの噂は本当だと周囲に思わせるには十分だった。




 あの噂とは『アレクシス殿下は新緑祭の事故での何かをきっかけに仲違いし、婚約者に愛想をつかせた』という内容だった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「……殿下、私は少し疲れましたので庭園で休んできます」



 夜会に入ってしばらくして。いつもはしない殿下呼びをして休憩のため、庭園で休むことを伝えてゆっくりと見せつけるかのように移動する。


 それに追随しようとする令息たちよりもひと足先に、遠くからそれを見ていたアスターがそっと近づいてきて周囲を牽制し、あとに続いた。



 王太子となったアレクシスはその様子を無表情で見つめていたーー






「…初めて来たけど、夜の庭は静かでいいものね。風が気持ちいい…」

「はい、お姉様。もうそろそろ屋敷に戻ってきますよね?また料理長が新しいお菓子を作ったのでたべてほしいと言っていましたよ」

「あら、そうなの?それは楽しみね。じゃあ…」


 パーティなどでアレク様と離れたことがないこともあり、少し違和感がありつつ。

 灯りで照らされた静かな庭園をアスターとなんともなしに歩きながら会話をし、開けた場所にでたとき、ざっと人の足音のようなものがした。


 あたりを見回すと、庭園に植えられている低い木々の間から黒い外套を被った人物が5人ほどぬっと顔をだした。

 その手には暗器と思われるものや小ぶりの剣が握られている。


 すると、それを見たアスターは私をかばうように立ちはだかり、鋭い口調で問いただした。


「あなた方はだれですか。ここがどこで、この方が誰だかお分かりで?」

「……」


 その集団は何もいうことなくじりじりと間合いを詰めてくる。


 私はいつでも応戦できるよう魔力を練り始める。


 ちょうどそのとき、そのうちの1人がどさっと倒れた。なんの予兆もなくいきなりのことで外套集団は一瞬うろたえたが、すぐに持ち直したのか私に向かって一気に襲いかかってくる。


 魔法で迎撃しようとしたところで、突然私とアスターの周りに突風がふき、残りの4人は吹き飛ばされた。



「これは何?何かの余興…ってわけではないよね」

「え…?」


 そういいながら現れたのは、いつもゆるっとしているのにそんな雰囲気を微塵も感じさせない、鋭い気を纏っているオーウェン先生だった。




読んでいただきありがとうございます。

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