34、懇願
いいねやブクマなどありがとうございます!
とても嬉しく励みになります!
一通り思い返したことで、それを踏まえてどうするべきか考える。
アレク様はまだ眠っている。
窶れていても損なわれていない美貌の寝顔を眺めながら、ずっと考えている。
しかし疑問がたくさん浮かび、そしてどうするか葛藤することを繰り返している。
このまま何も話さずに逃げるか。
しっかりアレク様と…斗真さんと話すか。
そして、今私がアレク様に対して持っているこの気持ちは、ひどく身に覚えがあるものだ。
もう認めてしまおうと思っていたのに。
まさかアレク様が斗真さんだったとは──
もう、アレク様は斗真さんの生まれ変わりなのは…受け入れた。思い返せば重なるところもある。
私だって生まれ変わっているんだから、他の人でもそういう人はいるだろう。
ただ斗真さんも生まれ変わっているという発想がなかったから今まで思い至らなかったけれど。
性格はアレク様と斗真さんは違う。
それは私同様、もともとの性格と混ざったのだろうと思う。
そして先ほどの謝罪は浮気をしたことに対してのものか。ただ私が死んだことに対しての罪悪感を感じているだけなのか。それとも全く違う何かに対してのものか。
いつ前世を思い出したのか。
私だとわかっていて婚約したのか。
なぜ、私と婚約をむすんだのか。
なぜ浮気しておいていまさら好きだというのか。
気づけば外は雨が降っていた。昼前に突撃し今はもう夕方になっている。雨が降っているせいか薄暗く感じる。静かに雨の降る音が聞こえる。
前世ではリラックス効果があり、ストレス解消にいいとか言っていたけれど、私にとってはあの日を思い出すものでしかない。
「…うぅ…」
ぼんやり外の景色を眺めている時、アレク様がうめき声をあげ、とても苦しそうな顔をした。
アレク様に視線を戻し、早く決断しなければと気が急く。
自分がどうしたいのか。考えていたがその結論が出ていなかった。
浮気して前世の私が死ぬきっかけを作った人。
だが一方で斗真さんの存在に救われていたのも事実だった。
この人がどうなってもいいとは思えなかった。
今この中途半端な状況で私が姿を消したらどうなるか。
──きっと探すのだろう、この人は。私が見つかるまで。
私がいままで見てきたアレク様はそういう人だと思う。
ここは別れるにしても、きれいさっぱり別れたほうが後腐れもなく、私の気持ちも楽かもしれない。
そしてもう前世のように後悔することはしたくなかった。
そしてまだぎこちない会話しかできないが、私にはお父様もいる。そう思えた自分に驚くも、お父様がいれば大丈夫と思える。少し前まで険悪だったのに先日の出来事で強気になれた私がいる。
お父様のお陰で向き合うことの大切さと勇気をもらえたのかもしれない。
本当は、とっても怖い。
やっぱり裏切られてたんだと確認することになるだけかもしれない。
でもこれを乗り越えなきゃ、私はこの先ずっと人を信じれずに怯えて生きていくことになるかもしれない。
その結論に至り、向き合う覚悟を決めたとき。
「瑠璃…!!」
そう叫んで手を上に伸ばし何かをつかもうとしたのか、アレク様が飛び起きた。息も上がっていて震えており、冷や汗をかいている。
驚きすぎて肩がはねた私はびくっとしたまま固まっていた。心臓はばくばくしている。
そして私が座っていることに気づいたアレク様は目を丸くして私を凝視している。
「…瑠璃?いや、シェリル…?」
今の状況に混乱しているようだった。まだ夢を引きずっているのかアレク様は、少し考えこんでハッとした。
倒れる前のことを思い出したのか、近くにあった私の手を両手で離すまいとするように、強く握りしめて額に当てた。
「シェリル。いてくれて、よかった。いなくなって…しまったかと…」
「……どうしようか、迷ってはいました。けど、今後どうするにしても、話し合いは必要かと思いました」
「…っ!お願いだ!俺から離れないで!シェリル…いや、瑠璃。前世のこと、許せないと思っていることはわかっている。それでも、俺の話を聞いてくれないか…!」
「……」
「シェリル、ごめん、好きなんだ。君を、愛してるんだ……」
「……」
何も言わない私の態度をどう思ったのか、焦ったように私の手を引いて抱きしめてきた。
そしてアレク様はそのまま消えてしまうんじゃないかと思うほど、か細い声で懇願する。
「どんなに悔やんでも、前世でおきたことは消せない。思い出すたびに君を傷つけてしまう。本当なら、今、再び出会って一緒にいられること自体が奇跡だと、わかってはいるんだ…」
アレク様の声が震えている。
アレク様もまた、私と同じように癒えない心の傷を抱えているのかもしれない。
「俺への不満は全部言ってほしい。シェリルの幸せのためなら、俺のすべてを差し出す。だからお願いだ。俺の前からいなくなるのだけはやめて……」
「アレク、様……」
「もう、俺を……置いていかないで──」
ここまで懇願されて困惑する。黙って考え込んでいると、アレク様の私を抱きしめる腕の力がきゅっと強くなる。
「あ、の……」
腕の中から顔を上げようとしたけれど、アレク様がもっと強く私を抱きしめるから身動きできなくなった。
ぽたっ……
冷たい何かが頬に落ちてくる。
なんだろうと思ったら、それはアレク様の顎先を伝って落ちた涙だった。
──なんで
私のことが…瑠璃のことが好きだと言うのか。浮気したのは誰?あのとき聞いた会話は何?ホテルに入って行ったのは?
──でも
私は何か、勘違いをしている?
アレク様の様子は私にそう思わせるほど、切羽詰まったものだった。
『アレクシス殿下の話を聞いてあげてくれませんか』
ルカ様の言葉が思い出される。
アレク様の懇願は、話合いをするにもまずはアレク様の……斗真さんの話を聞いてみないといけないかもしれない、と思わせるには十分だった。
読んでいただきありがとうございます。
すいません、里帰りのため更新が2日ほど遅れるかもしれません。読んでいただいているのに申し訳ありません。




