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前世、妹と恋人に裏切られた悪役令嬢は恋愛なしの穏便な道を平凡に生きていくはずだったのですが...  作者: はな


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33、私の前世②


 いつもより早く家を出て斗真さんが来るのを待つ。

 少し、というかだいぶ心臓がバクバクする。

 緊張しながら待っていると、斗真さんが出社してきた。斗真さんと目が合うと目が丸くなった。少しお話を、といった時の顔は少し強張っているように見えた。


 しかし朝なのであまり話を長引かせるわけにもいかず、移動してから思い切って話し出す。


『昨日のことなのですが...今は妹が私の中では最優先で、仕事もまだまだで。なんというか、恋愛をするのに心身ともに余裕がないんです...。妹が落ち着くまでは、妹を優先させていただくことが多々あると思います。それでもよければ....こんな私でよければお付き合いさせていただきたいです』


 勇気を振り絞り最後は目を閉じてしまったが、私も譲れないところをきちんと伝えることができたと思う。


 斗真さんはポカンとした表情で私を見ている。伝わらなかったのだろうか。すると、だんだん斗真さんの顔が赤くなっていった。

 怒ってしまったのかもしれない。たしかに、付き合うのにお前は2番目だっていっているようなものだもの。そう思ったらいたたまれなくなった。


『あ、すいません。こんなの失礼ですよね。図々しい、ですよね…。やっぱりこの話はなかっ『なかったことにはしない!本当に付き合ってくれるのか!??』


 食い気味に言われたことに驚くも、斗真さんは前のめりで確認してくる。


『城田さんに感謝と共に、好意を持っている自分にも気づきまして...だいぶ、鈍いのかもしれませんが...。あと今まで私が頑張らなきゃいけない、と思って気を張っていたのですが、頼ってほしいといわれて、単純にとても嬉しかったのもあります』


 少し恥ずかしくなり下を向きつつではあったが、昨日私が思った素直な気持ちを伝える。あと頼ってほしいと言われて嬉しかったことも。


『そうか…じゃあとりあえず、今日からよろしくな』

『よ、よろしくお願いします』


 すると斗真さんは嬉しそうにそう言って頭を撫でてくれた。


 それから紫苑が優先ではあったけど、斗真さんとのお付き合いが始まった。


 紫苑には初めて彼氏ができたことは伝えた。最初は心配してくれていたが、紹介してしばらくしたら認めてくれたのだと思う。

 「もう子供じゃないんだから大丈夫」と斗真さんと出かけるよう言ってくれるようになった。


 私は全てが斗真さんが初めてで、何もかもが新鮮で楽しかった。斗真さんは私はもちろん、紫苑のこともいつも気にかけてくれたし、困ってる時は仕事でもプライベートでもすぐに助けてくれた。


 話の流れで結婚の話になったこともあるけれど、結婚についても妹が落ち着いてからではないと考えられないというと理解してくれた。


 そして付き合い始めて5年ほど経った時だった。


 紫苑の就職先も決まりかけていたとき。紫苑と斗真さんがコソコソ話しているのを頻繁にみるようになった。最初はあまり気にしていなかったけど、回数がだんだん増えていったことで疑問を持ち始めた。


 でももし何かあったなら話してくれるはず。紫苑は今までどんな些細なことでも相談してくれたから、と信じることで聞くことをしなかった。


 だが信じていた気持ちとは裏腹に、夕方仕事でお使いを頼まれてそのまま直帰しようとしたとき、見てしまった。


 中央分離帯のある通りを挟んだ向かい側の歩道の先の方に遠目ではあったが斗真さんがいるのがわかった。声をかけようと手を挙げたとこで固まってしまい、声がでなかった。


 そこには紫苑が駆け寄って、嬉しそうに話しかけていたから。斗真さんも照れたように笑っている気がする。


 そして2人はホテルに入って行った。


 たしかにラブホではない。だけれど以前、友人はラブホはあまりつかわない。普通のホテルの方が利用するよって言っていた。


 そして私自身、身に覚えがあった。


 そんなことあるわけない、と自分に言い聞かせるも、じゃあ今見たものは何?と囁く自分もいる。

 気持ちがぐちゃぐちゃになり、ひとまずそこにいたくなくて家に帰ることにした。確実に誰もいないから。




『ただいまー!ごめんねお姉ちゃん。ゼミで遅くなっちゃった!』

『…紫苑』


 しばらくすると、紫苑が帰ってきた。家でぼーっとしているうちにもう20時すぎていた。

 ゼミ…私は短大のせいか、ゼミというものはない大学だったからどういうものかわかっていないけど。


──それは本当?

 その言葉は口の中から出ることなく消えていった。


『お姉ちゃん、ごはんはちゃんと食べた?……お姉ちゃん大丈夫?何かあった?体調悪い?』

『……大丈夫よ。心配かけてごめんね。少し疲れちゃったみたい。おかえり、紫苑』

『…本当に?少しでも体調悪いとかあったらすぐに言ってね。無理はしないで』


 私の様子がおかしいことにいつも通りの様子の紫苑が心配している。

 …見間違いだったのかもしれない。

 そう思うことにして、咄嗟に誤魔化した。




 その1週間後、紫苑の就職先が決まり、紫苑の誕生日と合わせてお祝いすることになった。

 せっかくだから奮発して外食でもいいといったのだが、映えるものを自分で作りたいからと言い張るので任せることにした。

 そして斗真さんも誘おうと紫苑に言われた。不信感が再燃するも、それを振り払い誘うことにした。

 斗真さんの態度も特になにも変わらなかったから。



  そして、あの日を迎えることになる──



読んでいただきありがとうございました。

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