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前世、妹と恋人に裏切られた悪役令嬢は恋愛なしの穏便な道を平凡に生きていくはずだったのですが...  作者: はな


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23、事は立て続けに


「──え」


 痛む身体を起こし、振り返る。関係者待機場所があったはずの場所は火の手が上がっており、まだ爆発し続けていた。


 何が起きたのか理解できず、呆然とその様子を見つめていると、お父様がこちらへ駆け寄ってきた。


「シェリル、大丈夫か!」

「……一体、何が……」


 私の心配をしてくれているらしいお父様の様子に戸惑いつつも、お父様の体をみるとあちこち血がにじんでいる。お父様は同じくあちこち怪我をした私を見て、普段よりも眉間の皺が深く険しい表情をしている。


(は!アレク様は…?!)


 ハッとしてアレク様がいたであろうところに視線を向けた。しかしそこにアレク様はいなかったため、私同様吹き飛ばされたのかもしれない。


 再び爆発が起きた場所へ視線を向けると、ときおりパァンパァンと爆発しつつ燃え盛る炎のなか、逃げ惑う人々や泣き叫ぶ子どもまでいてまるで地獄絵図のよう。


 突然のことで理解が追い付かず、強い不安や恐怖に襲われる。心臓はどくん、どくんと大きく嫌な音を体に響かせている。私の体は小さく震えていた。お父様はそんな私を支えてくれている。



「ううっ……誰か……たすけ……」



 そんな中、すぐ近くで怪我をしたらしい男性が助けを求めながら、血で塗れた手を必死に伸ばしていた。


 私とは比べものにならないほど酷い怪我で、頭からは血が流れ続けている。


 私はハッとした。こんなときに私の魔法を使わないでいつ使うのか。


 震える体を奮い立たせ、しっかりと立った私を確認したお父様は燃えさかる炎に向かっていった。私と同じく水魔法の適性があるお父様は魔法で消火を試みている。


 しかし、消化したらまた別の箇所が爆発する。もしかして花火が置いてあったところなのか。爆発の仕方が普通と違うことでそう感じる。ピュー!と音を発しながら火が飛んでいった。まるでいつか見たロケット花火だ。


 お父様の姿を見てそれに続くように、私も自分の水魔法に聖魔法をかけ合わせて魔力を練っていく。 まだ練習段階だったが今はそんなことは言っていられない。


(私はできる。なんて言ったって失敗しらずの悪役令嬢、シェリル・ハーディングなんだから!)


 自分に言い聞かせ、一気に魔力を放出した。自身の周りに水球がたくさん浮かび上がらせ、怪我をしている人に飛ばし広場一帯に水球をいきわたらていく。本当は聖魔法使いが近くにいないときのための応急処置ができるポーションみたいなイメージをして練習していたもののため、こんなに大規模に展開するのは想定外だったがなんとか形になった。


 魔力の消費があまりに大きかったため消火は諦め、そちらはお父様に一任することにする。


 うわぁ!と言っている人もいるが気にしてはいられない。死んでしまったり欠損したりしたらいくら何でも治すことはできないだろう。スピーディーに行わなければならないため、とてつもない集中力が必要になる。


 しばらくして広場に行き渡ったころ、奥の方にアスターとアレク様が一緒にいるのが見えた。アスターとアレク様も魔法で消火と治癒をしている私に気づいたのか、振り向き目を見開いてこちらを見たのが分かった。

 

 その光景で一気に前世がフラッシュバックする。集中力が切れ、魔法も途絶えた。


 広場は水球が割れてあたり一面水浸しになった。

 しばしの静寂の後、大きな喧騒につつまれた。


「さっきの怪我が治っている!」

「やけどもなおってもういたくないよ!」

「すごいぞ!持病の腰痛まで治っている!」


 怪我の大小にかかわらず、けがは治ったようだった。みな自分がずぶ濡れになっていることは気にしていないらしい。


 周囲の喧騒は耳に入らず、茫然として動くことができない。さきほどの光景がずっと頭を占めており、他はなにも考えられなかった。


 するといきなり身体に衝撃をうけ、視界がブレた。


「──え?」

「うっ…!」


 いきなりお父様に抱きしめられて一気に現実に戻ってきた。記憶にある中では初めて抱きしめられた。だが今はそれどころではない。今の状況が理解できない中、お父様がうめき声をあげた。


 お父様の走ってきたのだろう勢いのまま、どさっと後ろに倒れ、その衝撃に息が詰まる。さきほどまで晴れていたのに今は分厚い雲に覆われたのか灰色になった空が見えた。


「…お、とう様?何を...」

「シェリル…無事か…?」


 声をかけるも今にも消えそうな小さな掠れた声が返ってくるが、倒れた姿勢のまま動かずさらに困惑する。先ほどの爆発での怪我なら私の魔力を帯びた水を浴びた人は治っているはず。よくわからずひとまず肩を叩いてみるも動かない。


 顔を覗き込んでみると真っ青な顔をしており、気絶しているようだった。


 そのことに驚いているとどちゃっという音ともに「くそっ!」と舌打ちが聞こえた。聞こえたほうをみると黒い外套をきた男がぐちゃぐちゃの地面に押さえつけられていた。押さえつけていたのはなんとラニアだった。


 なぜラニアにこんなことできるのか。そもそもなんでここにいるのか。訳も分からず肘をついて少しだけ起き上がれたためお父様のほうに再度視線をうつすと、腰にナイフが刺さっているのが見えた。 一瞬理解できなかったが、そこに手をのばすとべっとりと血が手に付着した。

 咄嗟にナイフを引き抜き、聖魔法をかけて怪我を治癒した。しかし流れた血が多かったのか、魔力が枯渇しているのか。お父様は目を覚まさない。


 そのタイミングで凄まじい速さでアレク様が駆け寄ってきた。お父様を抱き起こし怪我が治っていることを確認し、次にアレク様は私に怪我がないかなどを確認ている。


 この騒ぎで集まってきていた騎士たちにアレク様が指示を出しお父様は担架に乗せられ運ばれていった。


 私はその光景をただただ茫然と見つめていた。


 アレク様やラニアが何か言っているが私の耳にはなにも入ってこなかった。


(お父様が…私を庇って、刺されたの?)


 いつも私に無関心だと思っていたお父様と今の行動が結びつかず困惑するも、私の代わりに刺されたのは明白だった。


(…ど…して…なんで…?)


 そんな私の心情を表しているかのように、アレク様が送ってくれた黄色のワンピースはところどころ破れ、泥でぐちゃぐちゃな有様になっている。



 次第に昼間なのに薄暗くなっている空から、ぽた、ぽたと水が降ってきた。


 無意識に上を向いて雨が降っていることを確認する。


 その間にも雨はだんだん強くなってくる。


 雨も相まってどうしても前世の死んだ日のことが頭からこびりついてはなれない。


 ただひとつ、思うのはー


読んでいただきありがとうございます!

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