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前世、妹と恋人に裏切られた悪役令嬢は恋愛なしの穏便な道を平凡に生きていくはずだったのですが...  作者: はな


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アスター視点①




 私にはとてもとってもとーっても大好きなお姉様がいる。


 お姉様がいれば他は何もいらない。


一目見たときから私はこの人のために生まれたんだと思ったの。


 お姉様は何も心配せず、私とずっと一緒にいればいいと思う。


 安心して。私が仕事をするから。

 お姉様はただ家で好きなことだけやっていて。

 そばにいてくれるなら何してもいいよ。


 これからもずっとずっとずーっと一緒にいようね。





 そんなことを考えていた私は、お姉様が王子の婚約者になるなんて全く考えていなかった──



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 私が4歳の時に公爵家の養子になった。お母さんと2人で暮らしていたけど、病気で死んでしまった。お父さんは覚えてない。4歳ながらにお母さんがもう死んでしまったことを理解した。

 これから1人どうすればいいのかと思っていたとき、ハーディング家の執事という人がきて、公爵家の養子にすると言われた。そのときはよくわからなかったけど、ひとりぼっちだったからついていくしかなかった。


 

 話を聞くと私に姉が出来るという。姉という言葉に心臓がドクンッと脈打ち、鼓動が早まっていく。理由はわからないが、お姉ちゃんに並々ならぬ憧れが前々からあった。

 身近にお姉ちゃん的存在がいたわけでもないのに不思議だったが、「お姉ちゃん」を渇望していた。

 そのお姉ちゃんができる聞いて私の目は輝いていたと思う。



「シェリル、昨日話したお前の妹になるアスターだ。仲良くするように」

「あ、アスターです。シェリルお姉さま、よろしくお願いします」

「....」


 ペコリと頭をさげて、ちらっと2人の様子を見ると、シェリルお姉様がお父様を冷めた目で睨みつけている。

 お父様は眉間に皺を寄せてそれ以上何も言わず運ばれてきた朝食を食べて早々に退出していった。

 お姉さまは黙ったままこちらを見ることもなく、じっと下を見て食事をしていると思ったら、早々に出ていってしまった。


 お姉さまと話せると思って楽しみにしていたが、私も緊張して話しかけることもできず、結局何も話せないまま終わってしまった。


 その後も何度となく、話しかけようとお姉さまを探し、見かけたらついていったがすぐに見失ったりした。それでも諦めず見かけたら返事がなくても話しかけ続けていた。


 半年ほどしたときに、いつものように見かけたので話しかけにいくとパッとこちらを振り返った。


「いつも私の周りをウロチョロと。私の視界に入らず、関わらないでちょうだい。いい加減目障りなのよ。邪魔」


 眉間に皺がより、とても嫌だという気持ちを全面に押し出した表情で、お姉さまは冷たく言い放った。


 初めて反応が返ってきて、その可愛らしい声に驚き何も反応できないまま、お姉さまは去っていった。

 声を聞けたことを嬉しく思ったが、言われたことについてはショックを受け、しばらくそこから動けなかった。


 気づけば自室のソファに座って、クマのぬいぐるみを抱きしめていた。どうやって戻ってきたか覚えていない。

 マーサが気遣わし気な様子でこちらの様子を伺っている。目の前のテーブルにはココアとお気に入りのクッキーが置いてあった。


 お姉さまに嫌われていたのかと考えながらも、お姉さまへの気持ちは変わらず、近くにいたいという想いが強い。でも迷惑をかけたいわけじゃない。

 

(とりあえず、これからは遠くから様子をみることにしようかな...)


 それから、私は遠目からお姉さまの様子を伺うようになった。

 しばらくすると、私にも家庭教師がつけられ忙しくなったが、1日に一目だけでもお姉さまを見ることができると嬉しくなった。


 そんな日々が1年半ほど続き、アスターも7歳になった頃。部屋でお菓子を食べていると廊下から忙しない足音が行き交っているのが聞こえた。


「...何かあったのかな?」

「...そうですね。少し確認して参ります。アスターお嬢様はこちらでお待ちください」


 マーサも不思議そうな顔をして部屋をでていった。


 すると、マーサが慌てて帰ってきて、お姉様が魔力枯渇で倒れたという。


(あの完璧なお姉様が!?)


 嫌われていてもお姉さまの情報収集は欠かさずしていた私は、何事も1回で全てを覚えて実践もできる完璧な人だと思っている。


 いつも私がお姉様を気にしているのを知っているマーサは詳細を聞いてきてくれた。

 

 お姉様は現在高熱もでており意識もないそうだ。危ない状況なのでお見舞いとかも行けないらしい。


 それからは何か情報が少しでもあれば教えてもらうように伝えて、そわそわと部屋の中を行ったり来たりしていた。授業は変わらずあったが、お姉様が気になって何も頭に入ってこない。

 

 夜に熱は下がったと聞いた翌朝、朝早くに目が覚めたため少し様子を見に行ってこようと思い立った。いつもの癖でこそこそお姉様の部屋に行った。


 するとちょうどサラが慌てて出てきた。慌ててたので扉をしめ閉め忘れたのか、少しだけ開いたドアの隙間から様子を覗き見た。


 久しぶりに見るお姉様はおそらく寝起きだろうに、相変わらず神々しかった。

 見惚れて動けずにいると、目があってしまった。


 びっくりしたのもあり、目線を逸らせず、かと言って何かいうでもなく、数秒見つめあったあとにハッと我に返った。


「あの、アスターどうし「ご、ごめんなさい!!お姉様が心配で、つい...!!お邪魔しました!」」


 近寄るな、と言われていたのにここまできてしまったことを思い出し、謝ろうとしたらまさかのお姉様の言葉に被せてしまった。


 思わず言い訳をして逃げ出してしまった。




読んでいただきありがとうございます

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