出撃の紀伊4
「まだかよ……!」
眼下で戦うアインを見ながら、紀伊は「早く」と願う。
今から放とうとしている一撃は、アレイアスからのチャージがどうしても必要になる。
120秒。たったそれだけの時間が、永遠のように長く感じてしまう。
「アレイアス! チャージはまだか!」
―自動応答。エネルギー不足につき現在、全機能をチャージに回しています―
「くっ!」
この状況を招いているのは紀伊のワガママ故……そして紀伊の力不足故でもある。
もう少し紀伊が強くなれていれば、もっと別の手段だってあったかもしれない。
しかし、それでも……1度やると決めた。アインを巻き込んだ。
なら、やりきらなければならない。
「もう少しだ……!」
残り70秒。アインの撃っていた超威力の弾丸はすでに品切れなのか、通常弾とツインブレードがアースワームの表皮を跳ねているのが分かる。
それはアースワームにとって然程の痛みもない弱弱しい一撃。
けれど、それがウザったいことに変わりはないのか身体を大きく動かし、それでもアインは振り落とされない。
「WAAAAAAAAA!」
「うあっ!」
「アイン!?」
そして、ついにバランスを崩したアインが空中へと投げ出され。鞭のように巨体を振るうアースワームの一撃がアインを吹き飛ばす。
轟音と共に地面に叩きつけられたアインに、しかし紀伊は何も出来なくて。
「WAAAAAAAA……」
ついにアースワームが、その目を紀伊へと向ける。
ドウ、と。地響きと共に突き進むアースワームは、紀伊を目指して。
―チャージビーム、発射―
光が、天より発射される。
その場に生き残っていた誰もが注目する程の、そんな鮮烈な輝きを放つ光の塔が顕現して。
それは、たった1つの「銃」へと吸い込まれていく。
「チャージ、完了」
突き進むアースワームに向けて、紀伊はレイガンを向ける。
ほんの少し前までであれば、戦うどころか「どうやって生き残ろうか」と考えていたはずのアースワーム。
けれど今は、全く怖くはない。
レイガンの銃口を向けて、紀伊は塔に体当たりしてきたアースワームを見下ろす。
崩れる塔。その瓦礫の中で、アースワームは紀伊を飲み込もうと巨大な口を開いて。
「消し飛べ……レイブラストォォォ‼」
紀伊の放った超極太の光線が、その巨大な口に着弾し大爆発と共にその頭部を消し飛ばす。
いや、頭部だけではない。
頭部を含む身体の大半を一撃で失ったアースワームは、残った身体を崩壊した町へと倒れこませ……紀伊は、そのまま落下していく。
「ははっ……ざまあみろってんだ」
此処から助かる手段を、紀伊は持っていない。
だからこそ、諦めたように……しかし、満足げな笑みを浮かべて。
「祝辞を。しかし、自身の安全の確保を当機は要求します」
落下する瓦礫を足場に跳んできたアインに抱きかかえられながら、紀伊は「そうだな」と笑う。
「次は気を付けるさ」
「改善策の実行を望みます」
お互いにボロボロで。
しかしそれは、とても大きな勝利だった。




