出撃の紀伊2
瓦礫の町を、紀伊とアインはエアバイクで走り抜ける。
タイヤではなく浮遊移動のエアバイクは瓦礫すら気にすることなく走り抜け、やがて観光塔の威容がその前に現れ始める。
「よし、見えてきた! そろそろバイクを」
「直進を推奨します」
「はあ!? ぶつかっちまうぞ!」
「いいえ。エアバイクであれば問題ありません」
「なら、やってやる……!」
アインの言葉を疑う理由などない。
紀伊は覚悟を決めてエアバイクを走らせ……壁へと衝突するその寸前、腕を伸ばしたアインがスロットルを操作してウィリーのように車体の前面を高く浮かせる。
そして車体は壁にぶつかることなく、そのまま滑るようにして壁を登り始める。
「う、うおおお!?」
「スピードを上げてください。このまま登り切ります」
「思ってたよりずっと怖いぞコレ!?」
「慣れてください」
「無茶言いやがるなあ!」
言いながらも紀伊はエアバイクの速度を上げ、壁を登っていく。
操作方法こそ頭に直接入れられているものの、その性能について全てを把握しているわけではない。
だからこそ、こんな壁登りが出来るとは思わなかったのだが……とにかく、これであれば大幅に時間を短縮できる。
「よし、屋上だ……!」
壁を登り切った紀伊はエアバイクを急停止させ、塔の上へと降り立つ。
暴れ回るアースワームは紀伊には気付いていないようで、しかしこの塔を壊しに来るのも時間の問題だろう。
「さて、ここからが本番だな」
眼下に広がるのは、瓦礫になりつつある町。
放っておけば、何処まで被害が広がるか分からない。
……とはいえ、放っておいてもいつかは収まるだろうし、此処であえて無謀な賭けに出る必要はない。
元々、紀伊はこの町で何も持ってはいないのだ。本来であれば、何の義理も責任もない。
命を賭ける必要など、何処にもないのだ。
だからこそ、無謀。紀伊が今からしようとしているのは、そういう類の事だった。
「実行開始から、敵がこちらに気付くまで2秒。当機が稼げる時間は47秒。そして」
「俺の準備完了まで120秒。71秒、足りないな」
「分の悪い賭けです。それでも?」
「やるさ。そうしないと……どうにも寝覚めが悪い」
紀伊の答えに……アインは、満足げに微笑んでみせる。
「それでこそ、です。さあ、それでは始めましょうマスター」
「ああ。いくぞ……マスターキー解放!」
アースワームへと向けた腕が輝き……何かが展開していく。
それはまるで、銃……のような……?
いや、「ような」ではない。それは銃そのものだ。
……既存の技術体系に全く属していない、という、ただそれだけの。
レイガン。使い慣れたソレが紀伊の手の中に納まって。
「レイガン、展開完了! チャージ要請!」




