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出撃の紀伊

 無人になった詰め所を出ると、そこには地獄のような光景が広がっていた。


「こ、れは……!」


 崩れた無数の建物。

 そして、町の中心部に鎮座している巨大なモンスターの姿。

 巨大な曲がりくねった鉄塔か何かのようにも見えるソレは、塔ではなくアースワームだ。

 まだ生き残りがいるのか魔法や矢の類が放たれてはいるが、アースワームは気にした様子もない。

 その巨体を僅かに動かすだけで建物が薙ぎ倒され、悲鳴が上がっていく。

 頭部と思しき場所でギラギラと光る眼には、殺意が溜め込まれているかのようだった。


「確か、あそこには町長の家があったはず……」


 剣士のジョブを持ち、高い戦闘力を自慢していたはずの町長の事を紀伊は思い出すが、あれでは無事とも思えない。

 数年を過ごした町が、こんなにアッサリ終わろうとしている。

 その事実に、紀伊は科学文明が終わった日の事を思い出す。

 終わる時はいつも突然で……その流れに巻き込まれるだけで。

 でも、それでも……今は。今この時は。


「アイン」

「は、マスター」

「アレを倒そう」

「はい。計算結果がアレイアスより提出されています」

「そうか。なら……」

「成功率は45%。一定時間が経過するごとに確率が減少していくとお考え下さい」

「充分だ。ちょっと前までの俺なら、そんな高い確率は出せなかった」


 そう言って笑うと、紀伊はアインへと視線を向ける。


「説明してくれ。俺が勝つ為の方法を」

「では、アレに登りましょう」


 アインの指し示す「アレ」を見て、紀伊は疑問符を浮かべてしまう。


「アレって……観光塔だろ? 町を一望できるとかいう、今じゃ誰も登らないやつだ」


 この町が形になった時に作られた観光塔。

 新しい時代の象徴だとかそういうノリで作られた塔はしかし、最初の1年で飽きられ半ば放置されるに至った。

 それはそうだ。こんな場所に留まるのは然程強くもなく、大成する夢を諦めたような者ばかりだ。

 観光客など来るはずもなく、町の人間とて見飽きた風景を俯瞰で何度も見下ろそうとは思わない。


「現時点の保有火力でアースワームを撃滅するには、頭部を狙撃し一撃にて仕留める必要があります」

「……再生能力か」

「はい。アレが攻撃を受ける事を気にしていないのは、その能力故。アレイアスの試算では、生命活動に支障が出るレベルでも短時間にて再生可能です」

「とんでもないな」

「故に、頭部を確実に視認できる状況で最大火力の一撃を放つ必要があります」


 最大火力。つまり紀伊の場合であればレイガン。それも……。


「チャージ式超高出力砲撃モード『レイブラスト』。それしかない……ってわけだな」

「はい。レイブラストのチャージには120秒。この間、敵に察知される確率は100%です」


 そうなれば、塔はアースワームに一撃で崩されるだろう。

 だが、それでも。


「それでも、45%の勝率がある。そうだよな?」

「現時点で44%です」

「なら急がなきゃな。マスターキー解放……エアバイクtype1・タトライズ!」


 紀伊の伸ばした手の先にエアバイクが現れ、紀伊とアインはエアバイクに飛び乗る。


「行くぞ、アイン!」

「はい、マスター」


 そうして、エアバイクは風を切り走り出す。

 決戦の場……観光塔へ向けて。

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