ゴブリンアサシン
「何か、か。でも7時間以内ってことは昨日の戦闘の可能性は……いや、ないか」
「はい。それ以降のものと判断します」
「……」
こうなってくると、不穏さが増してくる。
街道を整備していた人間に何かがあった。それは確実だが……まさか、昨日のオーガナイトの別部隊でもいたということだろうか?
そうだとすれば、此処から先に居るという相手も鉄犀騎士団ではなくモンスターの可能性が高まってくる。
「戻りますか?」
「ああ、いや。そうだな……」
手の中のレイブレイドに視線を向け、紀伊は考える。
もしオーガナイトがいたとして。紀伊は勝てるのだろうか?
分からない。分からないが……。
「やろう」
確かな意思をもって、紀伊はそう宣言する。
「俺達で倒すんだ」
「お望みのままに」
頷くアインに頷き返し、紀伊はアレイアスへと呼びかける。
「アレイアス、サーチだ。この付近に反応があるんだろ?」
―森の入り口付近に5つのエネルギー反応を確認しています―
「此処からでも視認可能です。こちらを伺っているようです」
「凄いな。俺は見えないぞ?」
「当機のサポート機能の1つだとご理解を」
「ああ。で、伺ってるってことは……こっちから出向けば襲ってくるってことか?」
「そう判断可能です」
「だよな」
どんな敵なのか分からないが、奇襲を狙っているのは明らかだ。
となれば、だ。
「わざわざ誘いにのってやる必要もないか」
「同意します。しかし、具体的には?」
「撃っちまえ」
「了解しました」
何故、とも何を、ともアインは聞かない。
素早い動きでアインの手に銃が現れ、その銃口が森へと向けられる。
「速射式弾、発射」
銃に装填された6発を撃ち尽くす、しかしほぼ1回にしか聞こえない発射音が響く。
「ゴブアッ」という悲鳴が幾つか響き……無感情なアインの報告が伝えられる。
「効果・小。仕留めたのは1体に留まっています」
「充分だ。来るぞ……!」
「ゴブッ!」
「ゴブウウウウ!」
黒装束を纏った忍者か何かのような恰好をしたゴブリン達が、森から飛び出るようにして走ってくる。
その手にあるのは短剣。それがゴブリンアサシンと呼ばれる類のモンスターであることを、紀伊は知っている。
「ゴブリンアサシンか……!」
「援護します」
「頼む!」
すでに再装填を終えているアインの銃撃音が響き……紀伊のレイブレイドが、それを回避したゴブリンアサシンの一体を切り裂いた。