代償の『バラバラの心』スキル
題名は前回と対になる様な感じ?
『バラバラの心』を使いウッドゴーレムを倒した所までは良かったのだが、倒したあともサリアは『バラバラの心』の副作用?って言ったらいいんかな?自分の意思とは別に体が動く、というのが続いていた。
どうやらスキルを解除出来ないでいるようだ。
「サリア大丈夫か?スキル、解除出来ひんのか?」
「カ、カイン!なんかアタシがいっぱいいて、それがスキルを解除したらアタシが消えるって皆が言ってる...」
「どういう事?姉さん、姉さんたち?スキルを解除しても自分が消えるわけじゃ、ないんだよ?」
エリスが喋りだした途端サリアは何かを我慢するように口をパクパクさせ始め、我慢できなくなったように突然喋りだした。
『でもエリス、スキルを解除したら、あたしがひとつになるでしょう?するとあたし達はどうなると思う?ひとつになったあたし達は本当にあたしなが残ってるの?あたしは、あたし達は結局スキルで作られた分身なんだよ?』
どうやら分裂したサリアが喋っているようだ。サリアは自分で言っているはずなのに自分が喋っていることに混乱している。当たり前だろう、自分自身とはいえ他人に体を乗っ取られたようなもんなのだから
『こんな事になるならスキルを使うんじゃなかった...。もちろんあたしも解除されなきゃいけないことは分かってるのよ。だけどそれと同時に、怖いのよ!』
それは確かにわかる気がすんなぁ。微妙に例え方違うかもやけど、ある日突然自分と全くおんなじ声で考え方で自分の頭ん中に「俺は本当の自分やから俺に統合されろ」なんて言われたら怖くて全力で反抗するもんな。
「サリア、確かに消滅するって考えたら怖いよなぁ。やけどな、そうじゃないねん。ひとつの人格になるまで消滅するんや無くて、一人一人の人格が主人格になるんや」
『どういう事よそれ?訳が分からないわ!?』
「例え話やけど、人格が1つになったとする。その時『バラバラの心』を使ったらまた戻る時が怖い、って感じたとするやろ?それはもう全員が主人格になってて、今喋ってるサリア達が怖いって判断した、って考えられへんか?」
自分でも大概無茶なこと言ってる自覚は勿論ある。
そもそもこれは人格が1つに戻らんとどうなるか分からんってとこもあるからな。やけどやっぱり人格をひとつに戻してもらわんとこれからの生活に支障があるやろうし。
このままかくかくした動きのままほっとく訳にも行かんしな、そんなんストレスでしかないやろうからな。
もしかしたら心を無理やり分離させてるわけやからちょっとずつ消耗していってるかもしれんしな。魂みたいな?そんなんが。
『...分かったわ。そういう事ならあたしも覚悟を決めて戻る。ただ最後にお願いがあるの。やっぱり戻るのは怖いからカインとエリスの2人であたしの手を握ってて?』
「本当にええんやな?今から言うのもなんやけど今僕が言ってたことは全部デタラメで実際に戻ったら全然違う結果になるかもやぞ?」
『そんなことは勿論分かってるわ。でもそれでいつまでたっても戻れないと、あたしはもちろんみんなも困るでしょ?それにエリスにとってもそう。エリスはあたしと同じ『バラバラの心』を持っているわ。だからね、あたしで試して、それでカインの言ってる事になったとしたら、エリスがスキルを使ったとしても結果がわかってる分、気軽に解除できるでしょ?もし、違ったとしても同じ事ね』
そこには普段の明るい雰囲気からは感じられないくらいの自分が消滅することへの覚悟とエリスという妹のため、自分で実験台になる、という決意をした顔になっていた。
...ほんまにこの世界の人は強いな。僕やったら絶対決断出来んまま何日も部屋の隅で蹲ってるわ。
サリア、僕はあんたを尊敬するわ。僕とは違う大人な考え方、妹を思いやる気持ち、何よりその決めたら一直線なところ、かっこいいと思うで?
「姉さん、ありがとう」
「サリア、すまんな」
『カイン、謝らないで?このスキルの検証もいつかはやらなきゃいけなかったんだし、それが遅いか早いかの違いだけよ』
「そうか、じゃあ言い直すわ。サリア、ありがとう」
サリアは満足そうに少し笑い、その後スキルを解いた。外見的な見た目の変化とか解除した!みたいなエフェクトは全然無かったけど呼吸のタイミングが会ってないようなそんな常にブルブル震えとった体がスっと落ち着いているのを見てスキルが解除されたのだと分かった。
その後、サリアはそのまま倒れ込んでしまい気絶した。エリスは倒れ込むように気絶したサリアを抱きとめ静かに地面に横たわらせ、そっと囁いた。
「姉さんたち、ありがとう、おやすみ」
今回で前世の『今までにない進化を求めて』は終了ですね。ここからは『未だ見知らぬ進化を求めて』のオリジナルストーリーが始まる!
いや、今までも作者が僕で同じやからオリジナルはオリジナルやねんけどな?