3
ちろちろと、頬に生温いものが当たる感覚がする。そう、まるで小動物の舌が響の頬を舐めているかのような。
「ッ!?」
それを皮切りに響の意識は覚醒したようである。薄っすらと目を開くと、そこには昼に名づけたばかりのパールの姿が映った。
(どういうことだ? 俺は……てか、ここどこだ?)
いまだに何が起こったのかよく分かっていないせいか、自分が床の上に横になっていることにすら違和感を抱けていなかった。しかも自分が横たわっている隣には、響と同じように横たわる律の姿があった。
少しだけきょろきょろと周りを伺うと、まだ響以外誰も目を覚ましていないようである。この場にはクラスメイト以外存在していないようだが、まだ何の情報もない内に行動を起こすのはよくない。
しかもここは教室ではなく、どこか神聖な雰囲気すら感じとれてしまうような場所だ。八本の大きな柱が等間隔に円状で配置されており、響たちはどうやらその円の内側にいるらしい。よく見ると地面に複雑な模様が描かれており、響は苦笑いしながらある可能性を潰す。
(さすがに違う世界に来ました、というわけではないよな)
ドッキリはもういいから帰りたいなどと思いながらも、ここに連れてこられる前に聞いた『異世界転移』という言葉が頭の中をよぎる。
「んん……」
隣から聞こえた呻き声に響はハッとして律に声をかける。
「律、律、起きてるか?」
「ひびき? ここは……?」
「分からない、でもたぶんドッキリだとおも、」
小声で話しながら律の顔をしっかり見ると、違和感を覚えた。
「なあ、お前、その頭何?」
ん? という顔をしながらも響の言うことに従って頭を触ると、律の頭にはどうしたことか獣耳が生えているらしい。生粋の動物好きということも相まってか、響は無遠慮にその耳に触れる。
「ちょ、やめ、くすぐったッ」
どうやら本物らしい。犬のような耳にも見えるが、何となくそうではないような。そう例えるならニホンオオカミのような耳だ。少しゴワゴワするものの、ブラッシングをすればきっと滑らかな触り心地になるはずだ、なんて響が思っているのとは反対に律は少し顔色が悪い。
「俺のこの変な耳を見ても友達だって思ってくれるか?」
どうやら響に嫌われると思ってしまったらしい。
「友達やめるとか、んなわけあるか。せっかくできた俺の親友をそう簡単に手放してたまるかよ」
親友という単語に耳をぴくんと反応させた律は、安心したのか嬉しそうに笑う。何故か尻尾の幻影が見えるが、幻影でも何でもなく立派な尻尾が生えていた。親友がこうなってしまっている以上は、色々ファンタジーな可能性が、そう、異世界転移の可能性が出てきてしまった。こっそりとため息を吐いた響は、これからのことを考えて頭を悩ませるのであった。
ちらほらと呻き声をあげながら起き上がる人が増えてきた。ちょうどその時、豪奢な扉からファンタジーな衣装を着た人間たちが入ってきた。
でっぷりとした恰幅の良い王様のような人と、少し露出が激しいような気がする王女様のような人、長い杖のようなものをもった聖職者のような人、それから数人の衛兵たちである。




