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どこかに武器屋があるはずだが、なかなか見当たらない。見当たらないが周囲には様々な露店があるので、これからの旅に備えていくつか買っておく。腐っては嫌なので、なるべく腐りそうにないものを次々に収納ポーチの中へ入れる。
試しに先ほど買った干し肉を取り出してみる。ポーチの中は取り出したいものを願えば取り出せる仕組みのようだ。
「あ、響、ここじゃないか?」
そう言った律の指差す方を見てみると、確かに剣と盾の意匠が施された看板が見える。冒険者のような人も数人出入りしているので間違いなさそうだ。
「入るか」
響は少し緊張しながら両開きの扉の片方を開ける……が、扉は開くことなく引っ張ったり押したりしてみても開かない。右の扉だから駄目なのかと左の扉も同じようにするが開かない。
「……律」
困ったときは律様なのだ。響は己の力の弱さにがっかりしつつも律に頼るのであった。案の定律は扉を普通に開けてくれた。が、そこに待ち受けていたのは響と律の思うものとは違っていた。
「ここってもしかして……冒険者ギルド?」
困った。非常に困ってしまった。武器と防具を買いに来ただけなのにどうしてこうなった。そう思いながら二人は受付らしきところまで進む。
「冒険者登録でしょうか?」
「「はい……」」
「ではこちらの用紙に名前と適正属性など必要事項を記入してください。秘匿しておきたい項目には無理して埋める必要はございませんので」
そうして二人に差し出された用紙には、名前、種族、適正属性、戦闘方法、使用武器、スキルという項目が書かれていた。種族の欄は律が獣人とバレないためのブラフとして響自身も空欄にする。適性属性はそれぞれ空間と闇を書き、戦闘方法と使用武器、スキルはそのまま空欄にしておいた。
「これで頼む」
そう言ってスレンダー美女の受付に渡すと、にこりと笑った後問答無用で指に針を突き刺してきた。
「「うっ」」
「はい、この用紙に血液を垂らしてくださいね。そうすると冒険者カードが出来上がりますので」
想像以上に痛みはないが驚きすぎて声が漏れてしまった。受付、侮ることなかれ。
用紙に血液を垂らすと、どういう原理かぴかりと光ってB5サイズの用紙が一気に手の平に収まるか収まらないかくらいのサイズになった。しかもペラペラな紙だったのが厚紙に変わっている。受付に聞けばめったなことでは汚れることもないすごい魔道具もどきなのだそうだ。
「それではお二方の冒険者カードを登録させていただきますので、カードの提示をお願いいたします。こちらの水晶にかざせば完了になります。お一人様銀貨3枚ずつです。冒険者カードは身分証にもなる大事なものなので、紛失などにより再発行なさる際は大銀貨1枚必要になります」
響と律は再び思った。受付、侮ることなかれ、と。
お金を払って冒険者カードをかざしてもらうと、一瞬だけ水晶が光る。
「冒険者ギルドはどの国にもございまして、国の介入をほとんど受け付けません。F~S級までの冒険者ランクの内、B級以上になりますと指名依頼などが入ることもあります。しかし一つの国に留まり続けることがない限りめったなことでは指名されませんので、ご理解ください。また、お二方F級の場合3か月依頼をお受けなさらない時は冒険者としての資格が剥奪されます。依頼はあちらのギルドボードに貼ってありますのでそちらでご確認後、紙を受付に提示されて初めて受けることができます。以上で、何か不明な点はございますか?」
ここまで懇切丁寧に説明してもらえたら、もう何も聞くことはないな。冒険者カードのおかげで国を出たり他国に入国することにも困らないし。響と律は礼を言って冒険者ギルドを出た。律がしっかり扉を開けて。
「次は武器だな……ん、あれか?」
城から出た時はまだだいぶ明るかったが、今では日が沈もうとしている。この国を出るのは明日になるのだろうと思いつつ、今日の内に揃えられるものを全て揃えようと武器屋探しには必死になっていたのだ。運よくそれらしいところを見つけたので(今度はあっているはず)、入ってみることにする。
「坊主、何の武器が要るんだ」
入って早々ガンを飛ばされたが、店主に自覚はないのだろう。店主は背が低く腹が出ていて、たぶんドワーフのおっちゃんだ。
「どんな武器があるんだ?」
「初心者か……、そうだな坊主くらい非力そうな見た目ならこういう刺突剣がいいんじゃないか? 距離も取りやすいし受け流しと突きに特化しているんだ。あと、そっちの坊主は……力は結構強い方か?」
「ああ、それなりには強いと思う」
「それならこのガントレット辺りはどうだ? あとはこっちの大剣かだな」
そう言って律に差し出されたのは無駄に華美でない所々に青の玉がついているガントレットと、刃が真っ黒で持ち手が青い大剣。
「ガントレットがいいな」
「よし、他に入用のもんはねえか」
響はあれよあれよという間に武器が刺突剣に決まり、律の方もさらっとガントレットに決まった。もっとこう、俺ツエー的な何かを体験させてくれるのかと思った。初めてこういう武器屋に入るし。響としては二刀流とかかっこいい、と思ってしまうお年頃なのである。自分の命には代えられないので、店主が見合ったものを渡してくれるのはありがたいのだが。
ついでにと、数本の短剣や予備の刺突剣とガントレットを追加してもらうことにする。
「全部で32980ジルだな」
手持ちの金がどんどん消えていく。だがこれも仕方がないのだ。全てはこの身を守るため。まだ10000ジルはあるから大丈夫、と心の中で響は呟いて泣く泣くお金を差し出すのであった。ありがとよ~という店主の声をBGMにして二人はさっさと店を出た。
「防具買えるのかな~」
「あといくら残ってるんだ?」
「大体10000ジル。金貨1枚ってとこだな」
「おおぅ、それに防具って何が必要なのか分からないからな。一体いくら必要なんだ……」
二人でぶつくさ言い合いながら、防具屋を目指して歩く。先ほどの武器屋の店主に抜かりなく防具屋の場所を聞いておいたのだ。そしてすぐ傍には手頃な宿屋があるらしい。




