プラネテス商団
昼食を食べ終えたアリアは王城の広場に足を運んだ。今日という日の目玉イベントであるプラネテス商団による王城マーケットに参加するためである。定期的に来るイベントではあるもののメイドや執事たちも入れ替わりで休みを取り、たくさんの買い物を楽しむ。王室の人間がほしいものを買うためのイベントであることは間違いないのだが、王城で働く使用人たちへの福利厚生の一環として扱っている。そのためプラネテス商団がいる3日間は王城の中でも類を見ないほどの盛り上がりを見せる。
しかし、アリアにとっての一番の目的は買い物ではなく、いろいろな人と触れ合うこと、いろいろな話を聞くことである。といっても年頃の少女ではあるのでやはりアリアも服などに興味はある。もちろん何着かは買うつもりである。最近街ではワンピースという上下一体型の服が流行っているらしいので、それらを何着か買いたいところである。
「おーい!そこのお嬢さん、こっちの商品を見ていかないかい?」
急に声をかけられることに慣れていないアリアはびくっと背を張る。声のした方を見ると40代くらいだろうか、豪快そうな女性の方が笑顔で手招きをしていた。身なりは周りよりもきれいにしているためこの商団の幹部クラスの方なのだろうか。
「銀髪に青い瞳、お嬢さんが噂の王女様かな?王様に話は聞いてるよ!こういうイベントごとには初参加なんだって?楽しんでいきなよ!」
王城にはいないタイプの人間で面食らったアリアは困惑していた。
「うちはこういったアクセサリーを扱っているんだよ!どうだい?綺麗だろ?といってもこれらは一般向けにも売っているものだから高価な宝石が使われているというわけじゃなく、職人がガラスや綺麗な石なんかを自分の持てる技術すべて使って加工したものなんだ。だからそこらの宝石には負けないくらい美しい仕上がりになっているんだよ」
上を見上げていたため自分のすぐ下に並べられている商品には気が付いていなかった。指をさされた方向を見てみるとそこには確かに美しいアクセサリーがたくさん並べられていた。みつあみのような模様で円の中に2羽の鳥が枝を加えあいながら飛んでいるようなデザインの透明な素材で作られたネックレス。歩いているような躍動感のある黒猫の耳飾り。...これは黒曜石というものだろうか?他にも翡翠色の三日月や雫の形をした透明なネックレス、植物の蔦を模した指輪なんかもある。確かにどれも息を飲む程美しい。
「この鳥のネックレスをいただけますか?」
女性は笑顔でうなずきながらネックレスを袋に入れて渡してくれた。
「あの、あなたたちは世界各国いろいろな場所を旅しながら商いをしていると聞きます。そういった旅行記といいますか、体験談的なお話を聞きたいのですがそういったものが聞けるようなところはないのでしょうか?」
「それならこのまままっすぐ行ってマーケットを抜けてすぐ左のところに吟遊詩人がいろいろな話を語っているところがあるからそこに行ってみるといいよ!」
アリアはお礼を言ってその吟遊詩人がいる場所を目指し、歩き始めた。
道中で目にはいいたワンピースやアクセサリーなんかを買い自分の部屋にあとから送ってもらうようにしてもらいながら目的地を目指す。
声が聞こえてき始めるにつれ人も多くなっていった。すでにたくさんの人が聞きに来ているらしい。
彼らは本当にいろいろな世界を見てきていた。中には信じられないようなこともあった。氷の大地や砂の国、先の見えないほど大きい川やこれに囲まれた年に4回景色の変わる魔法の国。どれも今のアリアには想像することすら難しい。この国は安定しているし、とても豊かだが経験できる物事には限りがある。世界の広さにアリアはひどく興味を覚えた。それも王城の中でずっと過ごしてきた思春期の少女となれば外への興味の道方は計り知れない。
「お城に戻ったら、街に出かけてもいいかお父様に相談してみよう...」
その後の勉強も、何もかもが上の空だった。
今の彼女にとってそれらはどうでもいいことだったのだ。それくらい今日の出来事は彼女に刺激を与えた。
無事明日街に出る許可を得ることができた。というのも、今日アリアを祭事に参加させたのは外に出ることへの興味を抱かせる目的もあったらしいのだ。どういうことなのだろうか。
明日は今日買った新しいワンピースに2羽の鳥のネックレスを身に着けて街へ出かけよう。
そうして彼女はもう一つの、彼女だけの理想郷へ一晩限りの旅に出た。
---これは彼女の物語
ここまで読んでいただきありがとうございます!
前置きが長くなってしまいましたがこれから物語が少しずつ動いていくと思います。
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