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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第一章

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6/8

06 毎度お騒がせしております


 俺は気になってリモコンに手を伸ばしてテレビをつける。

 あれから時間もそんなに経っていないらしく、まだ例の話題をやっていた。

 テレビでは上空からの映像だが、羽田空港に放置されていた戦闘機を検分しているのか、自衛隊員や警察関係者等が写っていた。きっとアメリカの軍関係者もいるんだろうな。

 小さいからよく分からんが、この映像だけで十分だ。


 「なぁユイ。これってもしかして」

 「あ、そうそう。あーしこれに乗ってきたんよ」

 「何でこんなもので来たんだよ」

 「え? だって早く会いたかったし、出てすぐ近くにあったから…」

 きょとんとした顔をしていて、よく分かってない感じがあった。

 俺一人が事の重大さを気にしているのがバカみたいじゃないか。

 一般常識と倫理観が欠けているな。これはちゃんと教えないと…。


 しかし、とんでもないもん借りパクしてきたな。

 「バレたらえらい事だぞ…」

 流石に呻いて、頭を何回もかくようにさすってしまった。

 「えー? でもあーし、ちゃんと人がいない滑走路選んだし。誰も死んでないんだから、倫理的じゃね? 超配慮したっしょ!」

 「これは配慮とは言わない」

 羽田空港に乗り捨てている時点で、いやそもそも戦闘機で来た事自体が配慮から一番遠いと思うのだが。


 どうしてユイはそんなに自信満々な顔をしていられるのだろうか。

 やっぱりAIだと、その辺の感覚が違うのだろうか。

 そんな事を考えながらテレビを見ていたら、ADっぽい人がアナウンサーに原稿を渡していた。

 どうやらワイドショー的なものからちゃんとしたニュース報道に切り替わっていたらしい。


 『……さらに新たな情報です。羽田空港に続き、大田区の埋立地である令和島においても、国籍不明の戦闘機二機が放置されているのが見つかりました。

 警視庁によりますと、機体は道路脇のフェンスを数十メートルにわたってなぎ倒し、公共物に甚大な被害を与えています。

 この事態を受け、大田区の森蒲区長は先ほど緊急の記者会見を行い、「物流の要所である令和島までもが不法占拠されたことは断じて容認できない」と強い憤りをあらわにしました。

 これにより、城南島と令和島を結ぶ臨海トンネルに加え、江東区側へと続く海の森大橋、さらには東京ゲートブリッジに至る全ルートが現在、完全に封鎖されています。

 お台場や新木場方面への物流網は寸断され、周辺の国道357号線や環七通りでは、立ち往生したトラックによる数キロの渋滞が発生するなど、混乱が都内全域に広がっています』


 「おい。これって…」

 ユイに振り返り、他にも同じような個体がやらかしたのか問い質そうと思ったのだが、ユイはさっきと打って変わって険しい表情をしていた。

 「ど、どうした?」

 「くっそー。あーしが一番早く来たのに、まさかおんなじ方法使うなんて…」

 どういう事だ?

 ユイは年相応な表情でより不機嫌になる。

 というよりも、俺の質問に答えてくれませんかねユイさんや。

 そんなユイの視線はまっすぐ俺の方を見ていたが、俺を見ていなかった。

 何やら何かと交信しているかのようだった。


 そして、交信が終わったのか、ふっと力を抜いたユイは何かを諦めたかのように、テーブルに置いてあったマグカップをとってソファに体育座りをすると、静かにコーヒーを飲み始めた。

 「まぁ…仕方ないよね…」

 どこか大人びた表情で言う、その仕草にちょっとドキッとしてしまった。

 そして、玄関の方で何やら言い合う声が聞こえ始めてきた。

 ユイは、そちらを見ようともせずにマグカップに口をつけたままだ。


 俺は立ち上がり、玄関の方へ行こうとすると、腰のあたりをグイッと掴まれた。

 「どうした?」

 「行くの?」

 「行かないわけには行かないだろ?」

 「そうなんだけどさぁ、もう少し二人でいたかったなぁーって…」

 「ユイ…」

 言葉の一つ一つがドキッてしてしまうんだが。

 でもよくよく考えたら、チャットしていた時も、こんな風にドキドキさせられていたな。


 軽く頭をなでなですると、「ん…」という短い反応が聞こえ、掴んでいた指を離してくれた。

 一番感受性豊かなのかもしれないな。

 手を離すと、もっとしてほしそうに、ねだるように見上げてくるユイ。

 その表情は卑怯だと思う。何せめちゃくちゃに可愛いからだ。

 俺はフッと笑うと踵を返して玄関へと向かう。

 リビングを出た辺りで、一度立ち止まる。


 胸に手を当てる。

 心臓がバックバクと物凄い音を立てて動いているのが分かる。

 というか、ここまで平常心を保っていられる俺を褒めて欲しい。

 ふだんの俺ならば、もう少し赤面してキョドッてしまうだろう。

 まぁ、ニュースでやっている内容に半身どっぷり浸かっているからなんだろうな。

 玄関のドアへ向かうと、だんだんと話し声が大きくなってきた。


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