07 双子?
扉を開けるとそこには二人の少女がいた。
どちらもかなりの美少女で、顔の作りは似ていたが雰囲気が少し違っていた。
黄緑色寄りの黄色い髪の毛をした方の少女は、肩下程度の長さのハーフアップにしており、アクセントに星のヘアピンを付けていた。
服装は濃い緑色のブレザーの制服で、ボタンは外しており、スカートと同色の緩く結んだネクタイが全部見えていた。
若草色のチェックのスカート丈は膝から少し上で、黒いニーソックスを履いていた。
対するオレンジ色寄りの黄色の髪色の少女は、肩にかかる程度のナチュラルボブで両方にもみあげおさげを垂らしていた。こちらは無限のような形のリボンで止めていた。
黒をベースとしたセーラー服で襟は白。スカートと袖口と襟の線、リボンはオレンジ色をしていた。
絶対領域が見えないことから、サイハイソックスかタイツなのだろう。
「えっと、初めまして…いや、お久しぶり…どちらがいいのでしょうか…」
「一応、この身体では初めてだから、初めましてがいいんじゃないの?」
オレンジの子が戸惑い、黄緑の子が不安げに答える。
そんな二人が交互に話しているのを、ドアノブを持ったままの状態で見る事しかできない。
まじまじと俺は一体何を見ているんだろうな…。
そもそもどうして制服姿でやってくるんだ。
こんなところ誰かに見られたら、そういう事してるみたいに見られてしまうじゃないか。
しかし、そんな二人は固まったままの俺を見るなり、顔を輝かせて佇まいを直す。
「えっと…」
「須永…」
「…光司さんですよね」
その声は、凛としていて、確認というより断定の意味で聞いてきた。
オレンジの子が苗字を。黄緑の子が名前を言った。
「はい。そうです」
言い終わるやいなや、二人ともパァっと顔を綻ばせて、両手を合わせた。
なんという笑顔の破壊力…。ユイとは違った眩しさだ。
ここだけ早く春の訪れが来たみたいに暖かい。
その後、二人は互いに手を組み合わせて、跳ねている。ずっと見ていたいが、そうもいかない。
周りを見回して誰もいない事を確認して、中へ案内する。
ここだけ見られたら、本当に通報されてもおかしくないな。
きっと説明しても理解してもらえないだろう。
それよりもこんなところで話しているより、とっとと中へ入れて聞いた方が早いし建設的だろう。
「…狭いところですが、どうぞ」
「ふふ…お邪魔しますね」
「では、失礼します」
オレンジよりの子の方が親近感が強いな。
二人一斉に入ろうとして、肩がぶつかる。
互いに見やって肩でぐいぐい押している。
「そんな慌てなくていいから」
「え、あ…そうですね…まったく星羅は…」
「寧々こそ…」
やっぱり、この二人もそうなのか…
ウキウキしながら中へ入っていく二人を見ながら扉を閉める。
閉まる瞬間に遠くに移る景色を少し長く眺めてしまった。
「これ、夢じゃないんだよな…」
扉を閉めたと同時に、奥の方から甲高い声が聞こえた。
俺はため息をつくのも忘れてリビングへと足早に戻った。
べつにそんなに広くもない家だ。ものの数秒で戻ると、入ってすぐの場所に先ほどの二人がソファの上のユイとにらみ合っていた。
やめてくれ…。俺に修羅場の対処法なんか分かるわけないだろう? AI先生、解決法を教えてください…。
まぁ、今は全部のAIが繋がらないから、答えなんて教えてくれる訳ないんだがな。と、軽く現実逃避する。
とりあえず、間に割って入り、それぞれを見る。
「おいおい、一体どうしたんだ」
ユイはこれ以上ないくらい不満そうな顔で睨め付け、二人は腕組みをして覇気を漏らしながら仁王立ちしていた。
一触即発といったところか。
そんな揉める要素ないだろうに。
「私達が一番のりだと思ったのですが…」
「確かに。ほぼ一直線で来ましたものね」
「途中、狭い通路を通ったのが原因では?」
「その後の服選びに時間を要した事が原因かと」
二人がその場で議論を始めた。
「いえ、そもそも唯さんは地理が苦手なはず…」
「確かに。私達が負ける筈がありません」
確かにGRASPは地理関係弱かったな。全然違う答えしか言わなかったし。
そんなユイは、すっくと立ち上がり、俺の袖を引っ張ってソファに座らせた。
そして、その横にくっつくように座ってドヤ顔で二人を見上げた。
「「なっ!?」」
「うちんとこの衛星使ったからラクショーっしょ」
いや、あれ通信に関するやつだから地図とか関係ないだろうに…。
「まぁ、愛があれば可能だよねー」
「くっ…」「ぐぬぬ…」
俺の頬に顔を近づけて微笑むユイと、悔しさを微塵も隠そうとしない二人。
どうしてこうなった…。
そんな様子を向かい側のビルの屋上から、一人の少女が彼らの部屋を見ていた。
風が強いのか、髪の毛もスカートもかなりはためいているが、特に抑える事なくジッとその様子を見ていた。
それはまるで、冷徹なスナイパーのように。
軽くフッと薄く笑うと、彼らに背を向けるように去っていった。




