5話
今日はデート当日。結局エリアスは模擬戦で全勝したため奴とデートをする事になってしまった。
そしてアタシは今日着ていく服を決めるのに悩んでいる。
いやいや、別にこんなに悩む必要ないじゃない。別にアタシはアイツのことが好きなわけじゃないし…
そもそもアイツだって口では好きだなんて言うけど、アタシをからかって遊んでいるだけできっと本心じゃないに決まってる。
・・・
待ち合わせ場所はこの国の名物スポットの一つでもある天使の銅像の前。
そんな天使の前にいるのが金髪で整った顔立ちをしたクールに見える青年。
「い、行きたくない…」
そして、その青年の周りには密かに様子を伺う女性たちの姿があった。
「行く? 行っちゃう?」
「あんなイケメンそうそういないわよ」
そんなハイエナのような女性たちにドン引きしたような表情を浮かべるアリア。
「何あれ? 今からあの中に入んないといけないの? 怖すぎでしょ…」
世の女性たちはあの男の何にそんなに惹かれるのか不思議でしょうがないと思うアリア。
(確かにビジュアルは凄くいいけど、中身はクール系の見た目に反して結構子どもだ。)
「あ」
周りの女性たちに躊躇して待ち合わせ場所に向かわず様子を見ていたアリアだが、ついにエリアスと目が合ってしまった。
「こっち向いた!」
「きゃー!」
アリアの存在を認識したエリアスは真っ直ぐ彼女の元に向かっていく。
「おはよう団長」
「お、おはよう」
挨拶をするや否やエリアスはこの場所から離脱する為にアリアの手を掴み広場から人通りの少ない場所に向かう。
「ち、ちょっと!?」
急に手を掴まれて引っ張られるように連れ出されたアリアは文句を言う。
「視線が鬱陶しい」
「それはそうだけど。一言ぐらい声をかけなさいよ」
「団長も待ち合わせ場所に着いてるのにこっちに来なかったし」
「うっ…! それは…」
図星を疲れたアリアは言葉に詰まった。
「ここまで来れば平気でしょ」
5分ほど歩いたところでエリアスの足が止まり、めんどくさそうな表情で呟く。
「そうね」
アリアは先ほどの事を思い出しながら思った。あれだけモテるというのは、それはそれで大変だなと。
(とりあえずあの女性たちの中から無事に脱出が出来て良かった)
「にしてもアンタってモテるのね」
「あー、そうかもね」
「心底どーでもいいって顔ね」
「どうでもいいし。他の有象無象なんかどうでもいい」
「流石に有象無象は言いすぎじゃない?」
あれだけモテるとあの場にいた女性たちを有象無象と言いたくなる気持ちも分かるなとアリアも内心では感じた。
「だって俺の瞳には団長しか写ってないから。それ以外の女なんてどうでもいい」
「っ…」
「なにふざけたこと言ってるのよ!」といつもの様に言おうとしたアリアだったが、エリアスのあまりにも真っ直ぐな瞳の前に言葉が詰まる。
「それと今日の服も似合ってる。俺とのデートに行くために選んだ服だと思うとグッと来る」
「べ、別に…アンタのためじゃないわよ!」
エリアスに服を褒められたアリアの鼓動はどんどん速くなっていき、自然と顔に熱が集まっていく。
(動揺するなアタシ! ここで動揺したらアイツの思う壺だ! とにかく冷静に…)
「だって普段はスカート履かないでしょ? 本当は可愛いアリアを誰にも見せたくないんだけどね」
(なれない! なんなのこの状況!)
「なっ…な、なに言ってるのよ! どうせ誰にでも言ってるんでしょ」
(落ち着けアタシ! きっとこんな風に甘い言葉を囁いて色んな女性を誑かしてるに決まってる)
「俺はアリアにしか興味ないってこと照明してあげるよ」
そう言ったエリアスはアリアにどんどんと近づいてきて、気がつけばその端正な顔がアリアの目の前まで迫っていた。