4話
「全然眠れなかった」
アイツの告白はなんだったのか。混乱しすぎて昨日のことは全然覚えてないし、夜はそればかりが頭によぎってなかなか寝れなかった。
「いやいや、落ち着け。どうせアタシをからかってるだけに決まってる…」
あの男は色白でとても整った顔立ちから王子様のようだと女性たちからもてはやされている。アタシもアイツがメイドから告白される現場を見たことがあるぐらいのモテっぷり。
そんな女性を選び放題な男がアタシなんかに告白するだろうか?
答えは否だ。
きっとアタシで遊んでいるに決まっている…
でも、その割には真剣な表情をしていたような気もするし…
「あーもう! 考えても分かんないからこの話しは終了!」
・・・
アリアは朝からモヤモヤした気持ちを抱えながら職場に来ていた。
(エリアスのことは考えないようにするって決めたのに…! 頭の中にアイツのことばっか出てくる)
「ラスト1周!!」
今日はアリアが団長を務める第6騎士団の訓練日。第6騎士団は腕っ節には自信のある脳筋騎士たちの集まりだったが……訓練場には涙目で走り回る男たちの姿があった。
「ひぃー!!」
「もう限界だー!」
「そこ! 足を止めない!」
アリアは泣き言を言う騎士たちに檄を飛ばしていく。
「もう無理ですよー!」
それに対して必死にもう無理だとアピールする騎士たち。
「泣き言を言うならもう10周プラスするわよ!」
「走りますー!」
情けない男たちに喝を入れながらもアリアは考える。
誰もアタシが失恋したことや1人執務室で結婚について愚痴っていた事を知らないみたいだ。
いきなりの告白も頭を悩ませる要因の1つだったけど……昨日の醜態に関しても噂になってるんじゃないかと心配だった。
エリアスは黙っていてくれたのだろう。もちろん噂になっても全力で否定していたけど。
「おー、相変わらず鬼だ」
アリアが考え事をしていると後ろから声が聞こえてきた。そのため振り返るとこちらに手を振るエリアスの姿が。
「アンタは何してるの…?」
朝はちゃんと見かけたのに訓練場にいなかったから、どこに行ったのかと思ってはいたが、この男は何を堂々とサボっているのか…
「団長を見てる」
「な、なにふざけたこと言ってるのよ!」
「ふざけてないよ。好きな人の顔を見てるだけ」
「い、いいから! アンタも走りなさいよ! 普通にサボってんじゃないわよ!」
当たり前のように訓練をサボるエリアスをアリアは注意する。
「えー、今走ると余計なこと喋っちゃいそうだなー」
こ、コイツ…!
あのネタでアタシを脅して訓練をサボるつもりか?
「調子に乗るな!」
舐めた事を言うエリアスの頭にアリアはチョップを入れる。
「えー、もっと動揺してよ」
つまんないと言った表情で文句を言うエリアス。
「いちいち動揺してたらアンタの思う壺でしょうが!」
これ以上コイツのおもちゃになってたまるか。
この男はアタシの反応を見て面白がっているだけだ。
「それにアンタはアタシの秘密をバラすなんてつまんないの事はしないわ」
「…どうして?」
「女の勘」
「アハハ!! なにそれ!?」
アタシがそう言うとコイツは腹に手を当てて爆笑しだした。
なんかバカにされてるみたいで凄いムカつくわね…
「なによ?」
「別に。それより、この後は模擬戦だよね?」
「そうだけど…」
確かにこの後は騎士同士で模擬戦をする予定だが、この男は何を企んでいるのか。
「もし俺が全勝したら明日デートしてよ?」
「は?」
何を言っているんだこの男は。受けたところでアタシにメリットがなさすぎる。
「それとも自分の部下に自信がない? 誰も新人の俺に勝てるやついないの?」
プチっとアタシの中で何が切れる音がした。
「上等よ! 誰にも負けなかったらデートだろうと何だろうとしてあげるわ!」
そう宣言してからまんまとアイツの挑発に乗ってしまったことに気づく。
「じゃあ、明日は俺とデートね」
「それは勝ってから言いなさい!」




