↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
操翼士オリオ 〜 Another Mission 〜  作者: 滝澤真実
第五章 地獄へ、ようこそ
97/264

暗闇と静寂

 この工場では、人体をアウムの素材にしようとしているのだ。

 その事実に戦慄しているオリオの姿に、クリストファーが気づいたようだった。クリストファーは視線をオリオに送ってくる。

(上、上、右)

 小部屋の入口に、三体の作業ロボットが隠れて待ち構えている、という意味だろう。

 オリオはうなずくと、室内に前転しながら飛びこんだ。そのまま仰向けになって、頭上の壁にはりついていた作業ロボットにニードルガンの連射を浴びせかける。二体はすぐに破壊されてばらばらになった。

 しかし、右にいた作業ロボットに対応する時間はなかった。オリオは作業ロボットに腕をつかまれて、ニードルガンを落としてしまう。

 それでも、オリオは冷静だった。

 作業ロボットの腕の関節を逆にとると、脚をからめてひねりあげる。ヤマウチ家の兵士で格闘術が抜群にうまいケニチ・サトーという男から習った技だった。人の形に似せて作られたロボットだけに、関節の可動域も人と同じである。ロボットの腕から部品が飛び、肘関節のところから折れた。

 ロボットのもう一方の腕も同様にしてへし折ると、オリオはニードルガンをひろいあげてロボットを撃ち倒した。

 ふり返る。

 クリストファーは椅子にしばりつけられていて、身動きができない状態になっていた。作業ロボットのうち一体が椅子の向こう側でなにか作業中で、残る一体がオリオに向かってくる。オリオは迷わず近づいてくるロボットにニードルガンを撃ちこみ、破壊した。

 最後の一体のロボットが椅子の向こう側から出てくると、周囲のロボットアームが動きはじめる。オリオは作業ロボットをニードルガンで撃ち倒し、周囲のロボットアームにも撃ちこんだ。

 そこで、ニードルガンが弾切れになった。アームの何本かは機能停止したようだったが、大半は無傷のままである。外科手術用のメスがついたアームが、クリストファーに迫っていた。

 オリオはアームをニードルガンでなぐり、メスを叩き落とした。

「腕のベルトをはずしてくれ、オリオ!」

 クリストファーがさけぶ。

 オリオは迫りくる工具を持ったアームにニードルガンを押し付けて防ぎながら、クリストファーの腕を拘束しているベルトを解いた。片腕が自由になったクリストファーは、自分の手足を拘束しているベルトを解いて、椅子から転がり落ちるようにして逃げる。

「オリオ、おまえも逃げろ!」

 クリストファーは言ったが、オリオは逃げ道がなくなっていることに気づいた。回転するドリルを持ったアームが近づきすぎていて、身動きする余地がない。

 ドリルが、オリオの顔に接近してくる。精一杯顔をそらしたが、よけきれない。

 オリオの目の前で、ドリルが高速回転していた。

 ここまでなのか。だが、だれかを助けて死ぬならそれも悪くはないか……。

 オリオが苦い思いで覚悟を決めた瞬間、明かりが消えた。ドリルの回転する音も止まる。

 工場内が、暗闇と静寂に包まれた。

「おい、オリオ。生きてるか?」

 クリストファーがおそるおそる闇の中から問いかけてくる。

「どうにか。なにがあったんだ?」

「味方がやったんだよ。工場の動力源を止めたんだ。俺たちの勝ちだ」

 オリオは大きく息を吐くと、手さぐりでロボットアームの位置をさぐりながら、そろそろと抜け出す。

 疲れ果てたオリオは、そのまま床の上で仰向けになった。

「助かった……」

 オリオがつぶやくと、クリストファーが笑った。

「なんだ。死にたがりのわりには、生きのびてほっとしてるんだな」

 オリオはその言葉にひやりとした。

 かつて守りきることのできなかった大切な人たちがいる。守れなかった自分の弱さを、ずっと憎んでいた。悪党がのさばる不条理な世界を憎んでいた。その後の数年は、復讐に生きた。気づいたら、復讐という大義名分の中で、自分が憎んでいたはずの悪党に成り下がっていた。愚かで醜い自分は、死ぬべきだと思っていた。

 しかし、心のどこかでは、やはり生きたいという思いもあったのだ。

 オリオはため息をつきながら言った。

「ユイ姉に言われたからな。自分を大切にしろ、って」

 クリストファーはさらに笑った。ひとしきり笑い続けてから、ようやく言う。

「……よし。じゃあ、そろそろここから出ようや。オリオ、肩を貸してくれ」

戦いを終えて、オリオの心にはわずかな変化が生じていた。

自分は、生きていてもいいのかもしれない、と。

次回、『力強い光』にご期待ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。