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エルウィンの家は入り口のドアを開けるとすぐにリビングとなっている。リビングからはキッチン、寝室、エルウィンの仕事場へとつながっているが、リビングとキッチンには仕切るものはなく1フロアで繋がっている。
寝室はリビングから階段を上った二階にある。一応こちらはドアで仕切られている。ただ、寝室は一つしかなくベッドも一つしかない。聞くところによると、普段はリリカがこの寝室を利用し、エルウィンはリビングにあるソファーで寝ているのだとか。もっとも昨日は私もリリカと同じベッドで一緒に寝たのだけど。
そしてエルウィンの仕事場。こちらも扉でリビングと仕切られている。中がどうなっているのか気になるが、エルウィンに入ってくるなとくぎを刺されているので中の様子は全くわからない。
リリカは聞くと年齢は14歳だという。リリカはお姉さんができたみたいだととても喜んでいた。そして、私のいた世界について興味があるらしく、ベッドの中に入っても日本についていろいろ聞きたがっていたが、疲れがたまっていたのだろうか、リリカはすぐに眠ってしまった。もっとも私は始めて見る異世界のためかなかなか寝付くのができなかったのだが。
そして朝を迎えた。
私が起きたときはリリカはいなかった。
今は何時ぐらいなんだろう?
時計もないこの部屋で、時刻を知るのは外の太陽の位置だけだ。太陽の光が射す窓をあけてみると日は結構な高さまで上っていた。思ったより眠ってしまったのだろうか。
そんなことを考えながら私は寝室のドアを開けた。リビングからは香ばしいにおいがすパンが焼けたにおいだろうか?
「あ、おはようございます!シズクさん!」
「ん、おはよう、リリカちゃん。」
キッチンのテーブルの上を見ると、焼けたばかりのたくさんのパンとスープが並べられていた。
「これ、リリカちゃんが作ったの?」
「はい、これが私の仕事なので!さ、シズクさんもスープが冷める前に食べてください。」
「うん、ありがとう。」
私はテーブルの席につき、スープを一口、口の中に運ぶ。
・・・おいしい。
「リリカちゃん、おいしいよ、このスープ!」
「ふふふ、お口に合うみたいでよかったです。おかわりもあるので沢山食べてくださいね!」
私はその言葉に甘えてスープのおかわりをおねがいした。
・・・そういえば。
あのエルウィンはどうしたのだろう?全く姿が見えないが。
と思ったらリビングの、仕事場へと通ずる扉が開き、ふらふらした体で、疲れ果てた顔でエルウィンが仕事場から姿を現した。
「師匠、また徹夜だったんですか?」
「ああ、やっと仕事が終わった・・・俺はこれから寝る。納品は任せた。」
「わかりました、納品はこちらでやっておきます。でも師匠、スープだけでも飲んでください。体に悪いですよ。」
「あぁ、そうさせてもらう。」
そういってエルウィンは差し出されたスープを器ごと口元に運びぐいっと一気に飲み干してしまった。そして器をテーブルの上に置いたらすぐさまリビングのソファーへと向かい、横になったと思ったらすぐにいびきをかき始めた。
「・・・よくあることなの?」
「しょっちゅうですよ。あ、これから依頼品の納品に行くんですがシズクさんも一緒にどうですか?一緒にこの街の案内もさせてください。」
私はこの提案を快く受け入れることにした。元の世界に戻れる手がかりをつかめるかどうかはわからないが、この世界のことをもっとよく知りたい。
「うん、よろしく。」