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私は森の中で出会った青年と少女の後についていった。
どれくらい歩いただろう?小一時間ぐらいだろうか。
「もうすぐ森の出口ですよ。」
そう少女は告げる。それまでの間、幸いにもオオカミのような動物に出会うことはなかった。
そして、私たちは森の外に出た。
その場所は遠くまで見渡せる高台だった。遠くにお城のようなものが見える。そのお城を囲むように大小様々な建物があり、それを大きく取り囲むように城壁で囲まれている。
「さて、ここでお昼にしましょう!」
「そうだな。ここなら安全だ。小腹も空いたしな。」
そう言ってカバンの中からシートを取り出すとそれを草原の上に敷き、そこに座って、少女はカバン中からさらにサンドイッチを取り出す。
「お一つどうぞ。えっと・・・。」
「あ、私は巳波雫っていいます。」
「シズクさんも座って一緒に食べましょう!」
「しかし、なぜあんな場所にいたんだ?」
青年が私に話しかける。私は目を閉じ、この身に何が起こったかを必死に思い出す。
たしか・・・学校の帰りだったと思う。
部活が終わって親友の優香と一緒に学校を出て、途中で彼女と別れ、その後は・・・目の前が真っ暗になった。その後は覚えていない。目を覚ますとあの森の中にいたのだ。
私はその事を青年と少女に告げる。
しばらくの沈黙。
その沈黙を破ったのは私だった。
「あの・・・ここはやっぱり日本じゃないですよね?」
「ニホン?なんですかそれ?どこかの遠い国ですか?」
「たぶん倒れたショックで頭がおかしくなっているんじゃないのか?」
失礼な!私はありのままを正直に言っただけなのに!
「でもにわかに信じられない話でもありませんよ。この方の服装、見たことありませんし。」
そうだ。私はさっきまで学校からの帰宅途中だった。私の今の服装は制服であるセーラー服姿だ。
「私の話を信じてくれるの?あなたいい人!」
「でも、私も半信半疑なんです。」
そうですよねー。
「それよりも、ここはどこなんですか?」
「ここはリーゼガングっていう国ですよ。
リーゼガング?初めて聴く名前だ。
「あそこがリーゼガングのお城ですよ。私たちもあそこに住んでいるんです。」
と少女が指さす方向を見る。あの遠くに見える高い城壁に囲まれたあのお城だ。
「さて、俺たちもそろそろ帰るとするか。素材も十分集まったしな。」
サンドイッチを食べ終えた青年が少女に話しかける。
「あの、師匠!シズクさんも連れて行くことはできませんでしょうか?」
うれしい申し出だ。この右も左も分からない、しかも先ほどのオオカミのような動物が出てきたら確実に殺されてしまう、それだけはごめんだ。
「こんな所に放りだしておくわけにはいかないだろう。ここで死なれたら後味が悪いからな。オレのアトリエに連れて行くぞ。」
「あ、ありがとうございます。えっと・・・。」
「私はリリカです。で、こっちが私の師匠のエルウィンです。」
「よ、よろしくお願いします!エルウィンさん、リリカさん!」
私は深々とお辞儀をした。
「こちらこそ!」
リリカと名乗る少女は笑顔を返す。しかし、エルウィンと名乗る青年は早くかたづけろと言わんばかりにこちらをにらみつけるだけだった。