第二十二話
二十一、二十二を連続で投稿しています。
屋上からもうダッシュで爆発が起きたであろう場所に移動した私は、ザワザワと人の集まる場所を見つけ人を掻き分けて進む。後ろから、シュノー君もついてきているみたい。
「シズカ!」
その声に振り向くと、チュゼが焦った顔をして立っていた。取りあえず、チュゼの元に急ぎ、進みながら事情を聞く。
「何があったの」
「俺が目撃したわけじゃないんだが、いきなり爆発が起こったらしい」
「怪我人は?」
「それは俺もわからない」
そう言った瞬間、中央に出た。そこには、腕から血を流す男子生徒と頭から血を流す男子生徒、それを手当てする二人の女子生徒が見えた。
「シーザさん!?」
そのうち頭から血を流していたのは、シーザさんだった。
「あ、シズカちゃん」
よかった。意識はあるみたいだ。私はシーザさんに駆け寄り、手当てをしていた女子生徒と変わる。躊躇なく治癒魔法を使った私に、シーザさんは少し驚いた顔をした。
「シーザさん。今の状態で申し訳ないんだけど、何があったか説明してくれない?」
「あぁうん。俺とセフェスがこの傍を通りかかったんだ。そしたら、空中でいきなり爆発して、窓の傍を歩いてたもんだから割れた窓ガラスがセフェスの腕と俺の額を切ったんだ」
もう一人は、セフェス・リテーニオ。魔族の中でも貴族、というのはいる。それの上位に位置する家の息子がセフェス君。セフェス君は腕を怪我しただけで他は大丈夫みたい。怪我で言えばシーザさんの方が重症だ。額を切ってるから、いくら治癒魔法をかけても検査入院はしてもらわないといけないと思う。
「シズカ。先生を呼んできた」
「ありがとう。シャインさん。集まった生徒を寮へ入れてください。二人は保健室へ連れて行きます。あなた達も一緒に来てもらっていい?」
一応、治療をしてくれていた女子生徒に声をかけ了承を貰う。
「保健室には誰かいくと思います。僕も生徒達を入れたら行くきます」
「分かりました。転送魔法の許可をもらえますか?」
「はい。サーシャイン・オレビが許可します」
その言葉を聞いて転送魔法をかけた。景色が屋外から屋内へと変わり、白いベッドが見える。保健室の中にいるのは、セフェス君、シーザさん、女子生徒二人とシュノー君。シュノー君については逃がすわけには行かないって言う理由と、何か事情を知ってるかもしれないということで強制連行。
「シーザさんとリテーニオ君はそこに座って。二人も座ってて。シュノー君は先生が来たら教えて」
シーザさんが座ったを確認し、治癒魔法をかけながら春翔に念を送る。春翔には、念を送れば春翔が自分で受け取ってくれるので取りあえず保健室に大至急来いっていうのを言っておく。
集中するために閉じていた目を開いた私は、女子生徒二人に名前を聞いた。
「私は、ミサ・キューオ」
「私は、ネール・メンタです」
「キューオさんにメンタさん。二人はどうしてあそこに?」
「私達は、窓が割れた部屋にいたんです。それで二人が血を出していたので急いで向って治療してたんです」
「でも、私達は魔力が少ないから。治癒魔法はかけれなかった。ごめんなさい」
そう言って頭を下げたキューオさんに、シーザさんもセフェス君もそんなことはない。ありがとうと言っていた。
「ドラーク。髪の色、変化してるぞ」
「え、うそ」
そう言って自分の髪を見た。うわ、本当だ。あれだ。魔力をいっきに使いすぎたからだなぁ…まぁいいや。そう思ってシーザさんを見上げると、驚いて目を見開いていた。あれ?
「ついでに目の色も変化してる」
「ッ!?」
そう思って近くにあった鏡で確認する。うわぉ…完全に黒に戻ってる。溜息をつきながら部屋からイヤリング形の魔法具を召還し耳につける。小さいから、つけててもわからない。それを赤色に設定し、振り返って治療を開始する。
「…異世界人、なのか?」
「まぁ」
「それじゃあ、特攻隊副隊長?」
「正解です」
治療しながら、驚く四人の言葉に答えた。
「副隊長さん。あんた、こうなること、分かってたんだろ」
その言葉に手を止め、セフェス君を見た。
「何故、そう思うの?」
「あんた、シーザの傷を見たとき、血の気が引いてたぞ」
その言葉に苦笑した。どうやら、顔の表情はコントロール出来ても顔色まではコントロールできなかったみたい。
「ゴメン、シーザさん。セフェス君。セフェス君の、言うとおりだ」
私は、二人に頭を下げた。
「私は、いずれこうなる事を予想してたし、分かってた。だけど、怪我をさせてしまった」
ここまで、無差別に傷つけるとは思ってなかった。
「謝っても、傷を負った事実は消えない。だから、犯人は必ず見つけ出す」
次の被害を出さないために。二人のように、怪我人を出さないために。そして、少しの償いとして。私は真っ直ぐセフェス君の目を見ていう。セフェス君は呆れて勝手にしろと言った。勝手にさせてもらうよ。そう言って笑った。
「ドラークさん、副隊長さんなの!」
「え?うん。そうだよ」
「それじゃあ、ウィルダ様やヒューレ様、ナサニエル様やシャルラタ様に会ったことがあるって事!?」
凄い勢いでメンタさんにそう言われ、顔を引き攣らせながら頷く。
それを見てメンタさんは凄い勢いで聞いてきた。
「うっそ!実物って本当にカッコいいの!?ナサニエル様はチャライって本当なの!?」
わお。サニエさんの認識がとても可哀想なことになってる。なんでサニエさんだけそんな認識なんだろ。確かにチャライけどね。私が苦笑していると、横からキューオさんがメンタさんの頭を叩いた。
「ごめんなさいドラークさん。この子、噂が好きなの」
「いや、大丈夫だよ。他はどうかわからないけど、これだけは言えるよ。サニエさんはチャライ」
「酷くない?」
その声に驚いて振り向いた。…ちょっと待て。ここは保健室。私の後ろは窓。なのに…
「なんでいるんですか、サニエさん」
驚きで目を見張る私に、サニエさんは笑顔のままこちらに歩み寄ってくる。
「ここで爆発事件起こったんでしょ?一応、そう言う原因不明な事が起きた場合は、魔法隊に連絡をいれるようになってるんだよ」
「わざわざ隊長自ら来る事はないですよね?」
その言葉にサニエさんは笑顔で無言になった。絶対面白がってきたんだ。絶対そうだ。
「…それで今、生徒達を寮に戻してもらって調べたんだけどね。シズカちゃん、ここは危険だ」
笑っていたはずのサニエさんの目が、すごく真剣なものになった。息を飲む。
「魔法では、そこに残っている感情、心の中、その人が残した言葉くらいしか分からない。だけど、感情はわかる。あそこに残ってた感情は、すごい大きな憎しみ。そして、魔族と人間が仲良くしなければいけない事への怒りだ」
その言葉を聞いて、俯く。
分かってた。皆が仲良くしたいと思う一方で、強い憎しみを抱いている人がいる事は。親や兄弟、友人を魔物に食われ、魔族と魔物を嫌う人達がいるのは知ってた。私は、そんな人達に、無能な魔物と、知能のある魔族は違うと、害はないと伝えたかったんだ。
だけど、どうだろう。知能のある魔族と無能の魔物は別物だと言って、その人達は納得するだろうか。…しない。私なら、そんなの信じられない。
「シズカちゃん?」
私は、何をしていたんだろ。今まで、両者のためだと思ってやってきたことは、皆を幸せにできていたのかな。私は、皆が笑顔になれる学校を作りたい。そう思っていた。皆は笑顔かな。
…何も、見えてはいなかった。ただ一人で突っ走って、気付いていたはずなのに、目を逸らしていた。
「シズカちゃん!」
ハッと顔をあげる。そこでようやく、サニエさんが私の肩を掴み、心配そうな顔をしている事が分かった。
「あ、すみません。ボーッとしてました」
「大丈夫?最近寝てるの?訓練にも顔出してるそうだし。いずれ倒れちゃうよ?」
「大丈夫です。それで、サニエさん。他に分かったことは?」
心配そうなサニエさんに笑顔を向け、聞く。それ以外には収穫はなかったそうなので、お礼を言って髪の色を変化させる。魔力が回復したので、そろそろ変えないと、誰かが入ってきた時にまずいからね。
「ドラークさん、顔色悪いよ…?大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。取り敢えず、皆寮に帰ろう。多分明日は休校になると思うよ。メンタさんとキューオさんは部屋の窓が割れたんだっけ?流石に窓は今晩中に直すのは無理だから、臨時の部屋を用意するように先生に言っとくね」
キューオさんの言葉に頷き、二人の部屋の窓ガラスが割れていたこたを思い出す。手配しないと。そんなことを思って二人に出るように促し、怪我人二人は取り敢えず先生が来るのを待つよう言って保健室を出ようとした。
けど、腕をグイッと引っ張られ、前にいけない状態に振り返った。
「まだ、どこか痛いの?シーザさん」
私の腕を掴む、シーザさんにそう聞いた。シーザさんは少し迷ったような顔をしてから、パッと私の腕から手を離し、苦笑して言った。
「いや、ごめん。何もない。治療してくれてありがとう」
「一応、医者に見てもらってね」
そう言って私は保健室を出る。これから、しなければならないことが増えそう。
終わり方がちょっと不思議な感じになってしまった…
次は第三者視点でいくと思います。




