眠りの始まり
お初にお目にかります。初投稿になりますが、よろしければ読んでいってやって下さい。
(ここは?)
そこは、見たことのあるような気もするが、やはり知らない場所。
(どこかの商業施設のフロア?かな?)
周りを見渡して状況を確認する。真っ白な天井、壁、床。正方形の形の台が複数、レジカウンター。
四角い台の上にはデザインTシャツ等の衣服が並べられて置かれていた。
どこかのアパレルの区画のようだ。
(とにかく、ここから出て帰ろう。)
なぜここにいるのかわからなかったが、家に帰ることにした。
(なんとなく、こっちに階段がある気がする)
知らない建物ではあるが、勘で端の方に向かって歩いていく。
(それにしても、商業施設のはずなのに従業員は1人もいないんだな…というか、客も俺だけ?)
歩いて端まで行っている間に、今いるフロアには自分しかいないようだと気付いた。
フロアは広くなかったのですぐに端に着いた。
(やっぱり階段があったな)
見つけた階段を降りて行った。
階段の踊り場の辺りに大きな窓があった。
見える景色からわかることは、ここはどこかの駅ビルという事だった。眼下に線路が見える。そこから見える景色は、何となく見たことあるようなものだった。
(とにかく、下に行くか)
階段を降りていくが、下の階のフロアへ繋がる道はなく、ただ下へ続く階段があるだけだった。
階段の踊り場には常に窓があり、外の様子が確認できた。
(おかしいぞ、いま何階ぐらい降りた?)
男は下へ向かって階段を降り続けていた。
一向に階段から他のフロアへ繋がる道が現れない。
それどころか
(なんで窓から見える景色が変わらないんだ!?下へ降り続けてるんだぞ?何で高さが変わらない?8階くらいの高さだったはずだぞ!)
階段の踊り場から見える景色は常に同じで全く変わっていなかった。
(…下には降りてるはずなんだ、とにかく降り続けるしかないか。)
男は階段を降り続けた。
どのくらい階段を降り続けたのだろう。いつの間にか階段の踊り場に必ずあった窓が無くなっていて、外を確認することもできなくなっていた。
更に階段を降り続けていると、ついに階段は終わり、フロアへの道があった。
(1番下の階に着いたってことだよな?外が見えないから地上なのか地下なのかわからないな。)
階段から入ったフロアは、薄暗く、長い廊下のようだった。
そこには、他の人間達が数人いた。
「あの、きみも、そうなのかい?」
1人の男が話しかけてきた。どこかの会社に勤めているのだろうか、話しかけてきた男はスーツを着ていて、みるからにサラリーマンのような格好をしていた。
「あ、えっと、何が何だか…出口を探してるんですけど…」
何を聞かれたのかわからなかったが、何となく同じ状況であろうと考え答えた。
「やっぱりそうなのかい。今ここにいる皆んな、同じ状況のようだよ。」
周りにいる数人も不安そうな顔をしている。
皆一様に、階段を降りてきたそうだ。
行く先は薄暗い一本道の廊下しかないため、先に行くのを躊躇していたようだ。
しかし、この場に留まっていてもしょうがない。
全員で先に進むことにした。
薄暗い廊下だが、狭くはなく、10人以上でも横並びで歩けるくらいの広さがあった。
いくらか進むと、少し先が十字路になっているように見えた。そこから少し明るくなっているようだ。
明かりがある。その安心感から全員の足が軽くなる。十字路まで進むと、ふと、左手の道から獣のような唸り声が聞こえた。
左を見ると、犬なのか、狼なのか、それにしては何か悍ましい風貌の獣が大群で、今にも走り出しそうに構えていた。
(な、なんだアレ?ゲームに出てくるモンスターみたいな…)
獣の1番後ろに、軍服のようなものを着ている人物がいた。
「行け。」
軍服のようなものを着ている人物は、獣達をこちらにけしかけるように、右手を突き出し、号令をかけた。
瞬間、全員走り出していた。
獣達が追いかけてくる音が聞こえていた。
十字路を来た道からまっすぐ、駆けた。
時折、誰かが獣に捕まったのか、叫び声が後ろの方から聞こえてくる。先程見た獣の異常な風貌もあり、振り返る余裕はない。
(はやく!はやくどこか出口はないのか!)
必死に出口がある事を信じて真っ直ぐ走っていた。
道の先に服が飾られているショーウィンドウの内側のような場所が見えた。
(あれは!きっとあそこから外に出られるはず!)
ガラスが割れる保証もない。強化ガラスだったら大怪我して終わりだろう。しかし、他に出口を探す余裕なんてなかった。
獣の気配を感じながら、走る速度を落とさずにガラスに飛び込んだ。
どうやらサラリーマン風の男も同時に飛び込んだらしく、2人でガラスを突き破っていく。
ガラスを突き破っていく時に悍ましい獣が、サラリーマン風の男に飛びついているのが見えた。
ガラスが砕ける音とともに、建物の外に飛び出ることができたようだ。
地面に飛び込むような形になったが、獣が飛びついてくるのではないかとすぐに起き上がって周囲を確認した。
サラリーマン風の男が獣に取りつかれているのが見えたが、次の瞬間、獣は緑色のネバネバしたものに変わりサラリーマン風の男を包み込んでしまった。
(な、何だよアレ!!)
サラリーマン風の男は息ができないのかもがき苦しんでいたが、すぐに動かなくなった。
すると、緑のネバネバは、そのままサラリーマン風の男の姿になり、何事もなかったかのように起き上がり、どこかへ歩いて行ってしまった。
(何がどうなってる?今のは何だ?あの人に獣が飛びついたと思ったら、獣が緑色のスライム?みたいなのに変わって全身を覆って…そんで、あれじゃまるでスライムが擬態したみたいな…)
目の前で起きた異常な事態を飲み込めずにいた。
(それにしたって、ショーウィンドウ?のガラスを突き破って出てきたんだ、騒ぎになってるはずじゃ…)
自分が突き破ってきたはずの場所をみて、言葉を失った。
そこには建物の壁しかなく、ガラスなど無かった。
そして、建物の前の道は広い通りに面していて、人通りも少なくないのにも関わらず、まるで何も見えていないかのように人々が通行していた。
(な、なんで?)
怖くなり、立ち上がってすぐにその場を離れた。自分が今いる場所が、何か恐ろしい場所のような気がして、一刻も早く離れたかった。
(街並みは、普通の日本なのに…)
少し離れた場所にまで移動して周りを見渡すと、工場地帯のようなものから煙がもくもくと上がっているのが見えた。
(レンガ作り?みたいに見えるな…何だか、近代的な工場じゃ無いような気がする)
ゴォーーン!
突然大きな鐘の音が鳴り響いた。
大きな音に驚いて、音の発生源の方を向く。
見上げると、見たことのないほど大きな時計塔の上で鐘が鳴っているようだ。
(こんな建物、知らない)
今いる場所が、自分の知らない場所であり、もしかしたら世界さえ違うのではないか。今はただ、鳴り響く大きな鐘の音が恐ろしかった。




