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ピンクの小人  作者: 加水
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ピンクの小人(2)

「美喜、二つ目の願いって、本当にそれ?」


「そうよ、できない?」


私は悩んでいた。一つ目の願い事を叶えてから数日経った時、彼女私に二つ目の願い事を言った。

その内容は、『他の人にも、ももが見えるようにして。』正直、私は戸惑っている。

理由はいくつかある。一つは、どうしたら他の人に見えるようになるのか。私の知り合いには、そんな魔法を使える小人なんていない。二つ目に、この願い事を叶えて良いのかどうか。はっきり言って、私が見えるというのは特別な条件があった時だけ。それ以外で決して見えないのは何か理由があるのではないだろうか。きっとそれは小人の神様に聞けばわかるけれど……。三つ目は私のの問題。他人に姿を見られるていうことは、私自身が小人の仕事ができなくなる。

他にもたくさん不安はある。


「……ごめんなさい。ちょっとわからないの。時間くれるかしら?」


「あ、うん。無理ならいいんだよ?」


私の答えはやはりそれしかなかった。それに、美喜は慌てて首を横に振り、心配そうに私に言った。

そんな彼女に私は笑っていった。


「大丈夫よ。私、美喜の願い事、なるべく叶えたいの。じゃあ、ちょっとでかけてくるね。」


私は美喜に笑ってほしかった。だから、少しでも願い事を叶えたかったの。私は美喜が止めるのも聞かずに、病院を後にした。

私たち小人の移動は人間と違って、一度自分達の世界に戻ってから、行きたい人間の世界へと足を運ぶ。そうすることで一気に遠い距離まで進むことができるの。たまに人間の世界を散歩してることもあるけどね。

私がやってきたのは、私の好きな人兼、私たちこの街の小人のリーダー"あか"のところ。彼はすでに、山波勇徒さんば ゆうとさんって言う人間と出会って一緒に暮らしている。彼等は私が憧れてる一つ。仲のよい二人を見てると、私にもそんな人がいたらな。って思ってしまうもの。

私はゆうとさんの部屋へと出た。


「だーかーらー!なんでそうなるんだよ!?」


「それがルールってもんだからだろ。これがそうだぞ。」


そこでは、いつもどおり二人の言い争いが行われていた。なんだか、あかがゆうとさんに怒ってるみたい。そして、ゆうとさんの手には赤いひらひらとした小さなドレスが。


「妹がわざわざ作ってくれたんだけどなぁ。そうか、あかは約束も守れないのか。」


「ぐっ……着りゃあいいんだろ!?」


……あぁ、ゆうとさんにそういえば妹さんが居たんだっけ。って、そうじゃなくって!


「き、着るの!?」


思わず声を出してしまった。あかとゆうとさんがびっくりしたように勢いよく私のほうを振り向いた。しまった。そう思って口を塞いだけど遅かったみたい。


『……もも。』


見事に二人の声がハモった。流石、息ぴったり。じゃなくて、二人の視線が非常に痛い。このまま逃げちゃいたいくらいに痛い。


「久しぶりだな、もも。」


「い、いつからそこに!?」


ゆうとさんが笑いながら、珍しく朗らかに私へと声を掛ける。それとは逆に、顔を真っ赤にして怒鳴るような口調のあか。……そりゃあ、そうよね。だって、なんか着せられそうになってるところへ、私が着ちゃったんだもん。あかが機嫌が悪いのは当たり前よね。


「え、えっと。ゆうとさん、久しぶり。さ、さっき来たばっかだから。お話続けてていいよ?ね?」


慌てて返事を返すと、ゆうとさんの目が細くなり口元が歪んだ。にやり、そんな笑みを浮かべてあかに視線を送った。それに、あかは凄く嫌そうな顔で彼に対峙する。私は何か言っちゃいけないことでも言ったかしら?


「じゃあ、もものお言葉に甘えて、さっさと済ますか?」


「……。」


にっこり爽やかな笑みを浮かべるゆうとさんが正直気持ち悪い。そんなキャラかい。って突っ込みたくなるくらいよ。あかはそれに固まって、顔に暗い影を落としているけど、どうも反抗ができないみたい。さっきの会話からして、きっと何かの勝負でもして負けたんでしょう。だって、ゆうとさんが持ってる罰ゲームのようなものだし。

それから、数分後。


「かーわーいーいーっ!」


「……。」


あかはものの見事にゆうとさんが持っていた服を着こなしていた。落ち込むあかをよそに、その可愛さに私は声を上げ、彼に抱きついた。ちなみに、ゆうとさんは原を抱えて笑っている。もう、笑い死にするくらいになってたりする。


「……離れろよ。これを見に来たわけじゃないだろ?」


怒りと諦めが混じったような暗い口調であかがそう言った。それに、私の身体をはびくりと反応する。

そうだった。遊びに来たんじゃなくて、美喜のこと、話しに来たんだった……。

いまさらになって話すべきかどうか戸惑った。

戸惑ったせいで、まともにあかの顔が見れなくて、私は思わず顔を下に落とす。


「……もも、何かあった?」


流石にワタシの行動が不自然だったのか、あかが心配そうに私の顔を覗き込んだ。私は、彼の服をぎゅっと掴んで顔を上げる。


「実は……私が見える人にあったの。」


『それって!』


ゆうとさんが笑うのを止めて、あかと一緒に驚いた。けれど、次の言葉は二人とも別々の言葉だった。


「誰!?危険なやつじゃないのか?あれだったら願い事をっ!」


「やったじゃないか!もも。前から会いたいって言ってたもんな。」


あかは焦って否定的な言葉を。ゆうとさんは嬉しそうに笑顔を向けてくれた。二人とも相手の言葉に、思わず顔を見合わせる。まったく違う意見だったから、驚いたに違いない。


「あか、お前まだそんなこと言ってんのか?」


「うっ……あのな、良い奴ばっかりとは限らないんだって、言ってるじゃないかっ。」


あかとゆうとさんの視線の間でバチバチと火花が散り始める。私は慌てて二人の間に割って入った。


「良い人よ。大丈夫。とっても良い人なの。ただ……。」


私の言葉に、二人が『ただ…?』と反復して台詞を促してくる。私は、少し悩んだけれど、話す決心をした。

力強く頷いて口を開く。


「ただ、目が見えない人なの。だから、私。彼女の願い事を少しでも叶えてあげたいの。」


精一杯笑っていった。決して彼女の目を治したいがために願い事を聞いている。そういう風に悟られないように。


「三つの願い事をしてるのか?それで、お前は、三つの願い事を叶えたら」


「嫌だな、三つの願い事はしてないよ。ただ、願い事があるっていうから、聞いてあげたいと思っただけよ。」


胸の奥がちくんと痛んだ。まるで針に刺されたように。

私はあかの言葉を遮って、彼に嘘をついた。だって、彼ならきっと"無理だ"、"やめろ"っていうはずだもの。確かに不可能に近いことだけど、彼女の目を治したいの。それで、私を見てほしい。そうだ、自分のためにやってることだから余計にやましい気持ちになるのかもしれない……。


「そうか……で?」


「えっと、それでね、願い事が"ももが他人に見えるようになること"なの。」


私の顔をあかはまじましと見た。そして、ため息をつく。


「そんな願い事、叶えてどうするんだ?」


「どうするもこうするも、叶えてあげたいだけよ。ねぇ、あか。どうしたらそうできるか知らない?そんな魔法を使える小人なんていないじゃない?」


駄目もとで、多少体勢を低くして、下からあかを見上げてみる。ちなみに目は多少潤ませるのがコツね。それと、一気にいろんなことを言うことで最後尾しか答えられなくするのも一つの手ではあるけど。


「……方法はあるにはある……。」


あかが一歩身を引いて、仕方なさ気に口を開いた。そのまま身体を半回転させて私に背を向けた。これは拒否の体勢、教えたくないと身体で表現してるのがよくわかる。だけど、私もここで引き下がるわけにはいかない。


「教えてよ!」


「……嫌だ。」


私がとてとてと歩いてあかの前に移動して、抗議すると、あかはまた半回転して拒否をした。


「教えて!」


「嫌だ!」


また私があかの前に移動して、あかはまた半回転。この行為を行うこと数十回。

なかなかあかは折れてくれない。流石に息切れがしてきた。

もう、どうして教えてくれないかな……別に減るもんじゃないのに……。


「……教えてよ!」


「い・や・だ!!」


これで45回目……流石に空しくなってきた。諦めようかという言葉が頭をよぎって、胸がしめつけられた。


「……うぅ……あかの馬鹿……。」


口から罵りの言葉が出て、同時に目から生暖かいものが溢れた。怒りに任せちゃいけないというのはわかるけど、感情を抑えられるほど私は大人じゃない。

もう、爆発寸前。


「ば、何泣いてるんだよ!!?」


泣きたくて泣いてるわけじゃない。出てくるんだもん。

けど、そんな言葉よりも怒りのほうが強くて、私はキッとあかを睨んだ。


「あかのケチ!へたれ!おたんこなすぅ!」


我ながら陳腐で幼稚な罵倒……でも、あかはショックを受けてるらしく口に手を当てて固まっている。

うぅ……私って本当馬鹿かもしれない。

私はついに我慢できなくなって、蹲って泣いてしまった。


「お、おい。」


「あーあ、なーかした。」


慌てるあかの声に、おちょくるようなゆうとさんの声が私の耳に聞こえる。あかがそれに怒るように反応して、ゆうとさんが更におちょくっているのがわかる。

とりあえずそんな風に二人が言い合ってる間に、私はなんとか涙を止めることにした。


「ならさっさと教えてやれば泣きやむんじゃねぇの?」


「うっ……わかったよ、もも!教えてやるから泣き止め!」


ゆうとさんの言葉にようやっと折れたあか。その頃にはワタシの涙も止まっていた。


「ほんと!?」


私はばっと身を起こしてあかへ視線を向ける。

あかはたじろぎながらも頷いてくれた。


「……あぁ、教えてやる。」


「やった!だから、あかって好きよ!」


私は嬉しさのあまりあかに抱きつこうとする。あかはそれを手を突き出して止めようとするものだから、私の顔に彼の手が当たった。正直痛い……。


「いっとくけど、怒ってるからな?俺は。まぁ、いいけど。そんな危険じゃないし。方法って言うのは、もも、シンデレラの話を知ってるか?」


やっぱりあか怒ってるのね……。とりあえずあかは説明をしようと、私に問いをぶつけてきた。

シンデレラ。あの子供が幼い頃よく聞く御伽噺のシンデレラかしら?


「それなら知ってるわ。シンデレラっていう少女が王子様と結婚した話でしょ?」


「そう。それのあらすじ覚えてる?」


おかしなことを聞くものだ。そう思いながらも、私は頭をフル回転させて話しの内容を思い出す。


「えぇと、継母と義理の姉に家事全般押し付けられていじめられてたシンデレラがいました。ある日、その国の王子様のお妃を選ぶ舞踊会が行われることになり、継母と義理の姉だけが舞踊会へ行ってしまいました。シンデレラが仕事をこなししていると、魔法使いのおばあさんが現われ、シンデレラに舞踊会へ行ける手助けをしました。ただし、12時に魔法が切れることを伝えます。シンデレラは城の舞踊会へ行きました。そこで王子様と出会い、互いに一目ぼれ。12時になりました。シンデレラは慌ててお城を飛び出し、ガラスの靴の片方を階段で落としてしまいます。魔法はとけてしまいましたが、ガラスの靴だけは残っていました。王子様がガラスの靴が入る少女を探し始めました。シンデレラの家では、姉達が競ってガラスの靴をはこうとしますが、小さくて履く事ができません。その後、シンデレラはその靴を履き、王子様のお后様となりました。よね?」


「あぁ、だいたいそんな感じのがメジャーかな?な、ゆうと?」


私の説明に耳を傾けていたあかは、ゆうとさんへと話をふる。それに、人間であるゆうとさんは頷いた。



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