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大好きだった幼馴染に『あんなデブで醜い奴、好きじゃない』と言われもう誰も信じる事ができそうにないです。   作者: ニャン吉


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第1話「聞きたくなかった言葉」

容姿を理由にいじめられながらも、幼馴染・美咲だけを信じていた月島蓮。しかし彼女の残酷な一言で人間不信に。傷を抱えたまま海外へ渡った蓮は、一年後、別人のような姿で学校へ帰ってくる。

 春。


 桜が舞う校門を、一人の少年が歩いていた。


 正確には――少年というより、青年に近い。


 身長は185センチほど。


 すらりと伸びた手足に、制服の上からでも分かるほど綺麗に鍛えられた体。


 短く整えられた黒髪。


 そして、どこか冷たさを感じさせるほど端正な顔立ち。


 道を歩くだけで、何人もの生徒が振り返る。


女子生徒1「……誰、あの人」


女子生徒2「新しい先生?」


1「超イケメンじゃない♡」


2「まじでモデルみたい」


 そんな声が聞こえてくる。


 しかし本人は、気にした様子もなく歩き続けていた。


 彼の名前は、月島蓮。


 一年前まで、この学校にいた生徒だった。


 ただし――今とは、まるで別人だった。


 一年前。


 蓮は学校で有名な存在だった。


 良い意味で有名だったわけじゃない。


 デブで、運動も苦手。頭もたいして良くわなく


 人付き合いも得意ではなかったし、いつも教室の隅にいた。


 それだけなら、ただの大人しい生徒だった。


 しかし、学校という狭い世界では、それだけで標的になることがある。


 からかわれ。


 笑われ。


 物を隠され。


 廊下を歩くだけで聞こえてくる笑い声。


 蓮は何度も傷ついた。


 それでも、誰かを恨むことだけはできなかった。


「……僕が悪いのかな」


 何度そう思ったか分からない。


 そんな蓮のそばに、いつも一人だけいてくれた。


 白石美咲(しらいし みさき)


 小さい頃から一緒だった幼馴染。


 長い栗色の髪と大きな瞳が特徴で、明るい笑顔がよく似合う学校でも有名な美少女で、男女問わず多くの人から好かれていた。


 もちろん僕も美咲の事が好きだった。


 そんな人気者の彼女が、なぜか蓮にだけはいつも優しかった。


「蓮、一緒に帰ろ」


「……いいの?」


「当たり前じゃん」


「でも……」


「でも、じゃないの!」


 笑顔でそう言ってくれる。


 その笑顔だけが、蓮にとって救いだった。


 ――だからこそ。


 あの日の出来事は、蓮の心を壊した。


 放課後。


 忘れ物を取りに教室へ戻った蓮は、廊下で足を止めた。


 教室の中から、美咲の声が聞こえたからだ。


「ねえ美咲ってさ」


「なに?」


「月島のこと好きなの?」


「え?」


 楽しそうな笑い声。


「だって、いつも一緒にいるじゃん」


「そんなわけないでしょ」


「でも、あんなに優しくしてるじゃん」


「……」


「もしかして本当に好きなんじゃないの?」


 僕は、なぜかその場から動けなかった。


 そして――。


「……違う」


 美咲の声が聞こえた。


「え?」


「あんなデブで醜い奴、好きなわけないでしょ!」


 時間が止まったような気がした。


「……」


「ちょっと、美咲?」


「だって、普通に考えたら分かるじゃん」


 笑い声。


 それ以上、僕は聞かなかった。


 聞きたくなかった。


 静かにその場を離れた。


 誰にも気づかれないように。


 その日の夜。


 蓮は鏡の前に立った。


 鏡に映る自分。


 醜く太った身体。


 伏せた目。


 自信のない表情。


「……醜い、か」


 美咲の言葉が頭から離れない。


 今まで優しくしてくれていたのも。


 一緒に帰ってくれたことも。


 笑ってくれたことも。


 全部、自分の勘違いだったのだろうか。


「……馬鹿だな、俺」


 その日から、蓮は変わった。


 学校にある海外留学制度。


 以前から両親に勧められていた一年間の留学。


 蓮はそれを利用することにした。


 誰にも詳しい理由を話さなかった。


 美咲にも。


 クラスメイトにも。


 そして、蓮は日本を離れた。


 海外での生活は決して楽ではなかった。


 慣れない言葉。


 慣れない環境。


 何度も挫けそうになった。


 それでも、蓮は自分自身と向き合った。


 運動を始めた。


 食生活を見直した。


 勉強もした。


 服装や髪型にも気を遣うようになった。


 何より――。


 自分を嫌いにならないために努力した。


 そして一年。


 蓮は帰ってきた。


 以前とは、何もかもが違っていた。


 ――そして現在。


 蓮は教室の前に立っていた。この学校は基本3年間クラス替えは行わない


 だから顔ぶれは変わっていないはずだ。


 懐かしい教室。


 懐かしい声。


 扉に手をかける。


「……戻ってきたな」


 ガラッ。


 扉が開いた。


 教室にいた生徒たちが、一斉にこちらを見る。


「……誰?」


「転校生?」


「いや、今日転校生なんて来ないでしょ」


「めっちゃかっこよくない!?」


 ざわざわと教室が騒がしくなる。


 蓮は静かに教室へ入った。


 誰も彼が誰なのか分からない。


 当然だった。


 一年前の彼を知っている人間ほど、今の彼と結びつけられない。


 そして――。


 教室の窓際。


 一人の少女が、蓮を見つめていた。


「……え?」


 白石美咲。


 彼女だけは、なぜか目を離せなかった。


 どこか見覚えがある。


 その目。


 その表情。


 声を聞く前から、胸の奥がざわついていた。


「……まさか」


 蓮が教室を見渡す。


 そして、美咲と目が合った。


 一瞬。


 ほんの一瞬だけ。


 二人の視線が重なった。


 美咲の目が大きく見開かれる。


「……蓮?」


 その名前を聞いた瞬間。


 教室中が静まり返った。


「……え?」


「月島?」


「嘘だろ……?」


「月島って、あの月島?」


 ざわめきが広がっていく。


 蓮は何も言わない。


 ただ、美咲を見つめる。


 昔と変わらない。


 綺麗な顔。


 優しそうな目。


 ――だけど。


 蓮の胸の奥には、一年前の言葉が残っている。


『あんなデブで醜い奴、好きなわけないでしょ!』


 蓮は目を逸らした。


「……久しぶり」


 それだけ言って、自分の席へ向かった。


 美咲は動けなかった。


 声も出なかった。


 あの日恥ずかしさのあまり、友達に向かって漏らした言葉が蓮に聞かれていたのは蓮が何の連絡もなしに急に海外留学にいったと聞いた時に察してしまった。


 1年間。


 何度も言おうと思っていた。


 謝ろうと思っていた。


 あの日のことを。


 自分が言ってしまった最低な言葉を。


 だけど――。


 目の前にいる蓮は、もう自分の知っている蓮ではなかった。


 そして何より。


 彼の目には、昔のような優しさがなかった。


 まるで、自分を知らない人間を見るような目だった。


 その瞬間。


 美咲は初めて理解した。


 ――私は、取り返しのつかないことをしたのかもしれない。


 そんな彼女の隣で、一人の少女が蓮を見つめていた。


 黒崎凛。


 普段からあまり他人に興味を示さない少女だった。


 しかし、彼女だけは周囲とは違うことを考えていた。


「……あの人」


 蓮が席に座る。


 周囲から向けられる視線。


 女子たちの小さな声。


 男子たちの驚いた顔。


 その全てを、蓮は気にしていない。


 いや。


 正確には――気にしているからこそ、気にしていないふりをしていた。


 凛はそんな蓮を見て、ぽつりと呟いた。


「……辛そう」


 帰ってきた蓮


 変わり果てた蓮


 そして、まだ誰も知らない一年間。


 蓮の高校生活は、ここからもう一度始まる。


 ただし――。


 一年前とは、全く違う形で。

 終わり

次回、別人のようになって帰ってきた蓮に、周囲の態度は一変する。しかし蓮の心は簡単には変わらない。すれ違う美咲、そして彼の心に触れ始める黒崎凛。止まっていた恋が、少しずつ動き始める。


作者です。読んでくれてありがとうございます。初めての作品で所々強引な設定になってしまっている気がしますが、それでも少しずつ上達していく事にするのでどうか温かい目で見守ってくれると幸いです。物語はある程度考えてから投稿しているのでいいペースで投稿できると思います。

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