小劇場 涼太の家の小さな秘密
小劇場 涼太の家の小さな秘密
辺りは静まり返っていた。
作者はいない。
涼太もいない。
その時、涼太の部屋のベッドの下から、かさこそ、と小さな音がした。
次の瞬間、小さな粘土のかたまりが、ベッドの下からひょこっと顔を出した。
それは左右をきょろきょろと見回す。
誰もいないことを確認してから、ようやくゆっくりと這い出してきた。
『皆さん、こんにちは!』
『先に言っておくけど、ボクは作者じゃないよ!』
小さな粘土は胸を張った。
もっとも、胸なんてものはなかった。
『すごいでしょ? ボクも作者と同じような吹き出しで話せるんだ!』
『ボクはネバネバ~』
『作者がこの物語を作っている時に、うっかりこっそり入り込んじゃった小さな怪物だよ』
ネバネバは身体をゆらゆら揺らした。
読者に手を振っているつもりらしい。
『ボク、ここでずっと観察してたんだ』
『今は作者も涼太もいないから、やっと出てこられたよ!』
ネバネバは急に声をひそめた。
『でも、お願い』
『作者にはボクのこと、言わないでね』
『バレたら、きっと外に放り出されちゃうから』
そう言うと、ネバネバはまた不安そうに辺りを見回した。
『それじゃあ、今日はここまで』
『また作者がいない時に、こっそり出てきて皆さんとお話しするね』
『ちゃんと秘密にしてね、ネバ~』
その時、部屋の外から足音のようなものが聞こえた。
ネバネバの小さな身体が、びくっと震える。
『まずい! 誰か帰ってきたかも!』
ネバネバは慌てて涼太の机の上へよじ登った。
次の瞬間。
その小さな粘土のかたまりは、きゅっと丸まり、静かに動かない小さなフィギュアへと姿を変えた。
部屋は再び静かになった。
ただ、机の上には、いつの間にか小さな粘土の怪物のフィギュアが一つ増えていた。
そしてそのフィギュアの顔には、ほんの少しだけ得意げな笑みが浮かんでいるように見えた。




