第一章 _一
馬車が車体をガタガタと不規則に揺らしながら走り出し数時間後、煌良は深い眠りにつき懐かしい夢を見ていた。
夢の中では更地になってしまった町の中心部には巨大な星が落ちた影響で建物は崩れ、なにか焦げ臭い匂い、砕けた星の欠片が地面に転がっていた。煌良は生存者を探すために町の中心部に向かい辺りを調べていると、星の欠片の中に他とは違うものがあることに気づいた。
それは少し濁った水晶のような見た目をしており、弱々しく死にかけの心臓のように脈打っていた。少し怯えながらも好奇心を抑えきれずに震える手でそれに触れた瞬間、眩く煌めく幻想的な光が欠片から溢れ出した。その光に包まれた時…
煌良は夢から覚めた。
御者「お嬢さん…お嬢さん!」
御者の声が煌良を夢から引き剥がす。
煌良「んぅ…おはよう。」
煌良は眠たげな目に擦りながら起き上がる
御者「村に着きましたよ、ここがカル村、あなたがこれから魔物の調査をする村です。」
そう言いながら御者は村の方へ目を向ける。
煌良は御者の目線の先を見ると、そこには穏やかで木造の家屋と大きい畑、楽しそうに遊んでいる子供達が見えた。
煌良「ここがカル村…。」
煌良はそう呟き、初めての遠征任務に対する緊張と少しの高揚感を心に秘めながら馬車を降りた。
煌良「御者さん!ここまでありがとう。」
御者「ええ、どういたしまして。」
御者「私は村長の元に荷物を届けてから、この村を後にします。」
煌良「うん!またね!」
煌良は御者にお礼と別れを告げて馬車を見送ったあとこの村の村長に会うため行動を始める。
煌良「おーい!そこの君〜!」
煌良が元気な声で小屋の前で地べたに座りながら弓の手入れをしている少年に話しかける。
少年「…僕に言ってる?」
少年は首を傾げながら無愛想にそう言う。
煌良「君しかいないじゃん。」
煌良は少年に近付きながら言葉を返し、少年の傍にしゃがみ込み、話を続ける。
煌良「ここの村長に会いたいんだけど村長がいる場所って知ってる?」
少年「知ってるけど…もしかして魔物の調査に来た人?」
煌良「知ってるんだ!良かったら村長の所まで案内して欲しいな〜。」
煌良が少し驚きながら少年に道案内をお願いする。
少年「わかった、着いてきて。」
少年はほんの少し面倒くさそうにしながら手入れしていた弓を片付けてから歩き出す。
煌良「名前を言うのがまだだったね
私の名前は煌良だよ!君の名前は?」
煌良は元気に自分の名前を伝え、怜の名前を聞く。
怜「怜だ。」
煌良「怜って言うんだ、素敵な名前だね。」
怜は淡々と答え、煌良はそれから雑談を続ける。
怜「もう着くよ。」
雑談を続けながら畑や遊んでいる子供達の横を通り過ぎるうちに目的地に着いた。
怜「それじゃあ、僕の役目は終わったね。」
怜はそう言ってからそそくさと立ち去ってしまった。
煌良は目の前の村の役場に入り、受付に案内され、役場の中の一室の前に立った。
煌良「失礼します。」
そう言ってから目の前の扉を開け、
椅子に座っていた2mはありそうな少し年老いた筋骨隆々の大男に話しかける。
煌良「魔物の調査をするために
派遣されました、煌良と言います。」
煌良はお辞儀をしながら大きな声で元気に挨拶する。
村長「来たか!俺の名前は迅臣だ。話は聞いてる、早速調査を…と言いたい所だが、先に煌良さんがこの村に居る間に寝泊まりする場所を案内しよう。」
迅臣は豪快に笑いながら軽い自己紹介をしてから立ち上がり、煌良の前に立った。
迅臣「こっちだ、煌良さんの荷物もそこに置いてある。」
迅臣は煌良に着いてくるように促しゆっくりと役場の外へと歩き出した。
迅臣「ここだ。」
少し歩いてから迅臣が立ち止まり、指を指した先には少し古びた民家があった。
迅臣「ガワは古く見えるが中身はそうでも無い、煌良さんが来る前に掃除も済ませてあるし家具も一通り揃ってる。」
迅臣は民家に入りながら説明を続ける。
迅臣「困ったことがあれば村の住人に聞けば応えてくれるだろう、みんな気のいい人たちだ、気軽に話しかけてくれ。」
迅臣「あぁ、言い忘れる所だった、明日10時頃に役場まで来てくれ、調査の協力者を紹介しよう、この辺りの事をよく知ってる奴がいた方がなにかと便利だろう。」
迅臣は煌良に次の予定を伝え、民家を後にした。
その後、煌良は家の中と周辺を探索してから、空いている部屋に研究道具などを置いてその日は眠りについた。
次の日、煌良は迅臣がいる役場に赴いた。
役場の前に着き、迅臣が小さな鉢植えに水やりをしているところに煌良は挨拶をする。
煌良「おはようございます!」
迅臣「おはよう、朝から元気でいいな!煌良さんには今日、協力者を紹介する予定だったな。」
迅臣は水やりを中断して役場の中に歩き出し、煌良もそれに続き歩き出す。
迅臣「今日紹介する奴はここら辺に詳しくてな、詳しくは後で説明するが…まぁなんというか悪いやつじゃないんだが少し無愛想でな。」
役場に向かう道すがら、迅臣はほんの少しだけバツが悪そうに言った。
それから少しだけ歩き、煌良達は役場の中の応接室に入った。
迅臣「その辺にかけていてくれ、今呼んでくる。」
そう言われ、椅子に腰掛けてしばらく待っていると見覚えのある少年が出てきた。
煌良「怜くん!もしかして怜くんが協力者なんですか!」
煌良は歓喜と驚きが混じった反応をする。
迅臣「なんだ、もう会っていたのか。」
煌良「怜くんが役場まで案内してくれたんですよ!」
村長「そうなのか、案内できて偉いな、怜!」
怜「子供扱いはやめてくれ。」
迅臣が幼い子どもを褒めるような態度で怜を褒め、怜はそれに少しの苛立ちと大きな恥じらいを感じていた。
迅臣「本題に入ろう、今回怜を協力者に選んだのは魔物が森で確認されたからだ。」
迅臣「こいつは幼い頃から森で遊んだり狩猟の手伝いをしていて弓の腕も立つし村じゃ一番森に詳しい。あとは、この魔物に関する報告書を読んでくれ。」
迅臣「俺も着いて行きたかったんだが、村を守る為にやる事があってな。」
迅臣は少し残念そうに言い放ち、立ち去ってしまった。
怜「すまない、迅臣さんは昔から大雑把な人でね…細かい説明をしたがらないんだ。」
怜「魔物については僕が説明しよう、実際に見たこともあるし。」
煌良「うん、お願い。」
それからしばらく魔物の説明が続いた。
煌良「まとめると、魔物は大型犬くらいの大きさのイノシシってこと?」
怜「あぁ、それだけじゃなく普通より牙がとても発達していて、体毛が大量の虫が這っているように蠢いている。」
煌良「虫が蠢くような体毛って…」
煌良は魔物に虫が這う想像し、その姿に身の毛がよだつような気持ちになった。
怜「まぁ、魔物の姿は説明した通りだ。」
煌良「うん、わかった。」
怜「出発は明日の朝だ、装備を整えて役場前に集まろう。」
二人は魔物に関する資料をしっかりと確認してからその日は解散し、魔術の研究や装備を整えてから眠りについた。
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