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虫けらは半死半生で彷徨う  作者: 米中毒
主人公がボコボコにされる章
20/53

20話 フレイ

「……分かった。アテナ…」

「特に制裁はしないが、城壁が直るまではこの町にいろ。ダン、お前にディアナを任せていいんだな?」

「それくらいはしておきましょう。」

僕が後悔をしている間にも話は進む。他の人はもう動いている。

シアだって、今は落ち込んでいるだろうがきっと立ち直るのだろう。

分かっていても…動けない。

平気な顔をして恩人に敵意を向けていたという事実に、愚かな行為に、心が荒む。

今この場所にいるのが申し訳ない。息をすることすら苦しい。

「お前は本当に気に食わない奴だな」

顔をあげずとも分かる。一番の功労者で、僕よりずっと辛いはずの人の声。

「死に急ぐ馬鹿のくせに、心が折れたら何もできないか?気に食わないな…」

何も返す言葉が思いつかないし、思いついたとしても、ほざく権利なんてない。

余裕だってない……。

「……ダン!後は頼むぞ?魔力を消耗しすぎたからな……。」

「はい。」

去っていく彼女の思いは計り知れない。それほどまでに僕は浅い。

「正直さ、やる気も目標もない子に興味もないから、もう手を貸してあげるつもりないよね」

ダンさんのは最初にあった時のような、ぶっきらぼうな態度に戻っていた。

いや、あの時よりも、もう少し冷たい視線だったかもしれない。

……分からない。

後悔に侵された頭では、相手の感情を推し量るなんて、とてもとても……

「だけど、義務は果たさないといけないよね~」

「はい。」

そう言って何かを渡してきた。情けないが、申し訳ないが、読む気力すら…

「あなたと別れてから、地上の村で召喚されてね。契約は渡すとこまでで、読み聞かせはしないよ。」

村…?村だって?どこの……?

まだ立ち上がろうとしない僕に、もう少し説明をしてくれた。

「あなたの幼馴染だって?あのそこそこかわいい女の子。帰ってあげたら?」

鈍感な僕にだって分かる。立ち上がる理由をくれている。

「それと、こっちはお願いなんだけど、」

振り返らずそのまま歩き始める。でも、前よりも小股で歩いてくれている。僕に立つ時間をくれている。

そこまで助けられてようやく立ち上がれた。

歩いて直ぐに目的地についた。隣の部屋のドアの前。

シアは僕よりもっと立派だ。涙をぬぐって自分で立って来た。

「さっきも言ったけど、ローディアは『記憶』を捧げた。」

「だから、ここに居るのは決してローディアじゃない。」

「この町には残しておけないんだ。」

「名前は、私の友人から取って”ディアナ”とすることにした。」

扉を代わりに開けてくれる。中にいるのは長身で長髪、緑髪の女性。

「彼女を連れて出て行ってくれない?」

あぁ本当に僕は運がいい。

こんなにも恵まれている。

こんなにも気にかけてもらえている。

こんなにもチャンスが与えられている。

これからは、もっと他人を知ろうとしよう。警戒することと、疑うことは違うと分かった。

後悔はずっと心に残るだろう。だったら直ぐに動き始めた方が何倍もいいと思う。

さて、こんなに早く立ち直る僕はさぞ図々しいのだろうが、第一印象は大事だとも教わった。

無表情で見つめる彼女から、感情を読み解く事は出来ない。

これから徐々に理解できれば上々、理解できなくても、理解しようとすれば今よりずっとましだろう。

精一杯の笑顔を浮かべて、後悔を心の奥にしまってから、手を伸ばした。

「僕はフレイ。一緒に旅をしてみない?」

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