第33.3話 女の子には恋をさせよ② with Mepha.
短編第参弾! ……というよりSSです。
今回もセリフのみ。
時間軸は創造祭二日目の午前中。
「あれ、ミーファじゃないか。大通りに出てきて、どうしたんだ? 喫茶店は?」
「レゼル君! ――今は休憩時間なの。レゼル君こそ、どうしたのよ独りで?」
「あー、セレンはエネディス先生と一緒にいるから」
「へぇ……でもさっきのレゼル君、建物の壁に凭れ掛かってちょっと不良っぽかったわ」
「……それは、悲しめばいいのか?」
「ううん。格好良かったわよ?」
「そ、そうか」
「ええ。――ねぇ、レゼル君、女装したらそのフード取って通りを歩けるのよ?」
「(ミーファ、忘れてると思ったのに!) ……朝の鬼ごっこの続きでもするのか? もうその女装何たらの話は止め――」
「……」
「そんな捨てられた子犬みたいな目(+上目遣い)で見ないでくれ……っていうか、ミーファは何処か行く途中だったんだろ?」
「え? あ、うん、他のクラスを視察にね。隅まで視察してやるわ」
「そうか、流石は代表だな。他のクラスを刺殺か……刺殺?」
「ええ、視察よ」
「ミーファ、お前……」
「どうしたのレゼル君?」
「そ、そんな純粋な目をして……刺殺……!?」
「え、何震えてるのよ?」
「しかも隅までって……一人残らずってことか……!?」
「えっ? あぁ、まぁ、そうね。出来れば(売上のほどや出し物の雰囲気だけじゃなく)生徒の方も視察したいわね」
「ッ! ミーファ、そんなことをするな!」
「レゼル君、何を言ってるの? 視察はしとかないと売上競争で勝てないわよ?」
「(……ッ!? 何を言ってるんだミーファ、生徒を刺殺して売上競争に勝とうなんて! ……いや、待て待て、ミーファがそんなことをしそうになったら俺が止めれば、落ち着かせればいいんだ!)」
「いや、まずお前が落ち着けレゼル」
「「ハルキ!?」」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「何だ、刺殺じゃなくて視察か」
「当たり前でしょ。どうして殺さなくちゃならないの」
「いや、ミーファが本当にキレたらそれくらいしそうだと……」
「それ以上言ったら撃つわよ?」
「ごめんなさいごめんなさいだから銃を創造しないで下さい本当すみません」
「……まぁ良いわ。それより私、行きたいところがあるの」
「行きたいところ?」
「ええ。レゼル君、時間は大丈夫?」
「ああ、うん。滅茶苦茶ヒマしてるな」
「良かった。じゃあ着いてきて!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ここって……たしか、三年B組の出し物してる建物だよな?」
「ええ、中では縁日をしてるの」
「縁日……日本の祭りか?」
「そうよ。さ、入りましょ。今年こそ私の宿敵である金八に勝つんだから……!」
「き、きんぱち?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「結構人入ってるんだな……ってミーファ、何処行くんだ?」
「金魚すくいの屋台を見つけたのよ」
「は? 金魚すくい?」
「ええ。必ずと言って良いほど、毎年の創造祭で一クラスは縁日をするわ。私は五歳のときから毎年、金魚すくいにチャレンジしてきたの。でも、一匹だけどうしても捕れない金魚がいるのよ……」
「まさか、それが金八か?」
「そう。金魚すくいマスター・ミーファ様でも勝てない、赤くて尾鰭が異常に長い出目金ちゃんよ!」
店主「おや、ミーファ様じゃないか。今年も金八に挑戦するのかい?」
「当たり前です! 先輩、私の腕前を嘗めないで下さいよ!」
店主「分かっているよ。ミーファ様の金魚すくいの腕は相当だと話を聞くし、毎年、金八に挑戦しているという噂も知っているからね。――でも、我が三年B組金八先生に勝てるかな?」
「勝ちますよ、今年こそ……!」
店主「噂通り、良い意気込みじゃないか。――っと、そこのコートの少年は? 君も金魚すくいするかい?」
「あ、いえ、俺は……」
「え、やらないの?」
「……えと、やります」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「こんなの絶対おかしいわ!」
「まぁまぁミーファ、落ち着けって」
「落ち着けないわよ! だって、私は普通サイズの金魚を50匹以上は捕ったのに、どうして金八はレゼル君があんなにも簡単にすくっちゃうのよ!」
「ミーファ、人が集まってるところではあまり大声で俺の名前を言わないでくれ。――というか、俺が金八をすくっちゃったのは完璧に紛れだろ。俺は普通サイズの金魚、一匹も捕れなかったんだぞ?」
「だから、それがおかしいのよ! 素人の紛れですくえるほど金八はヤワじゃないわ!」
「……」
「もう一度やって――」
「待てミーファ! また金魚を50匹以上すくって店主を泣かす気か!? また来年チャレンジすれば良いじゃないか」
「でも、金八はもう高齢なのに」
「大丈夫だ! コイは20年以上生きるヤツもいる!」
「金魚じゃないし」
「知るか! ――あ、ほら、あれやろう」
「え、どれ?」
「射的! ミーファは銃の扱い得意だろ?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……さて、何を狙おうかしら。レゼル君は何を狙うの?」
「勿論、棚の上から二段目にあるリスの縫いぐるみだ」
「縫いぐっ……レゼル君ってそんなキャラだったっけ!?」
「いや、この前、セレンと話をしてて、ミーファはリスに似ているということになった」
「どゆこと!? 素直に喜んで良いのそれは!?」
「だから、手に入れられたらミーファにやるよ」
「……ありがと」
「で? ミーファは何を狙うんだ?」
「そうね。私は……あれにするわ。下から四段目にある財津莉嶺のデビュー小説全巻」
「後で貸してくれ」
「了解」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『ほら、教えてやるから銃構えろ』
『わ、分かった。……て、ちょ、後ろ来るの?』
『お前の後ろから手ぇ伸ばして教えた方がやり易いんだよ』
『そ、そうかもしれないけど……その、近い……』
『あ?』
『う、ううん、何でもない』
「……ね、レゼル君」
「何だ?」
「私達の横で、かなり密着して射的やってるカップルがいるんだけど……」
「そりゃ、射的教えるってなったら、射的する奴の肩越しから見た方が教え易いからな。特に角度とか」
「……教えて」
「は?」
「レゼル君、私に射的を教えて」
「えと、何で? 銃は俺よりミーファの方が得意だろ。着弾点が正確なのがミーファの(戦闘)スタイルじゃないか」
「……そうだけど、教えて」
「……」
「……」
「……分かったよ。でも、教えるの下手でも勘弁な」
君に触れることの出来る瞬間
『れっレゼル君、やっぱり教えなくて良いわ! (顔が近過ぎて銃を持つ手が震える……!)』
『どっちだよ!?』
読んで下さりありがとうございました!
それにしても甘いですね、砂吐きますね。多分、察している方もいると思うんですが、如月は女です。乙女思考注意報発令ですねコレは。少女漫画なんて小学校以来読んでないのになぁ……(汗