18 二年後
本日2話投稿の2話目になります。
三か月後に十五歳の誕生日を控えるアイナは、この二年間冒険者として地道に活動し、最低のFからCまでランクを上げていた。その間、独力でクエスト・ポイントを貯め、原初スキルをそれぞれLv4まで上げていた。
現在のアイナのスキルは以下の通りである。
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原初スキル『献身』Lv4
・聖属性
Lv1……大切に思う者の死を肩代わりする
Lv2……大切に思う複数の者の非致死ダメージを肩代わりする
Lv3……大切に思う複数の者の状態異常を肩代わりする
Lv4……大切に思う複数の者の死を肩代わりする
派生スキル『天翼』Lv7
Lv7……物理・魔術攻撃防御の結界(範囲:大)
派生スキル『祝福』Lv5
Lv5……身体能力の向上(範囲:中)
派生スキル『神の怒り』Lv3
Lv3……聖属性の全体攻撃(威力:小/範囲:小)
派生スキル『降臨』Lv1
Lv1……聖属性の全体攻撃(威力:極小/範囲:極小)
原初スキル『拒絶』Lv4
・闇属性
Lv1……強く拒んだ事象を拒絶できる(強:自分自身/弱:自分以外)
Lv2……強く拒んだ事象を拒絶できる(強:自分自身/強:自分以外)
Lv3……拒絶が狭い範囲に及ぶ
Lv4……拒絶が中程度の範囲に及ぶ
派生スキル『反射』Lv6
Lv6……物理・魔術攻撃を相手に跳ね返す(効果:大)
派生スキル『死神の鎌』Lv3
Lv3……防御無効の斬撃(発動時間:遅/範囲:極小)
派生スキル『地獄の炎』Lv2
Lv2……闇属性の全体攻撃(威力:極小/範囲:極小)
派生スキル『終焉』Lv1
Lv1……闇属性の全体攻撃(威力:極小/範囲:極小)
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色々とヤバい感じの派生スキルが発現した。『死神の鎌』はペネドラをして「死ぬかと思ったっす。て言うかマジでコワいっす」と言わしめたスキルであった。
闇属性の派生スキルは名前からしてヤバそうなので、アイナもあまり使っていない。レベルが上がったらなんだか怖そうなので。
そしてこの二年間、毎朝欠かさずに剣術と体術の訓練も行った。依頼で屋敷を空ける『銀獅子団』の面々に変わり、ほぼペネドラを相手にしたものであった。その結果、アイナの剣術と体術は――
少しマシになった。あと腹筋が割れた。
ちなみに二年で身長が九センチ伸びて百四十九センチになった。百五十センチのネネが戦々恐々としている。キュイックも、スズメくらいだった身体がカラスくらいに成長していた。未だにアイナの頭の上がお気に入りなので、アイナは肩こりに悩まされていた。
* * * * * * * *
『銀獅子団』の四人はカルデ王国の東に位置するメンネベヌク王国の王都、メネベルクに来ていた。メネベルクの冒険者ギルドを通して、メンネベヌクの王族から指名依頼があったためである。
その依頼内容は、メンネベヌク第四王子、マリウス=ツアール・メネベルクの護衛であった。
メンネベヌク王国とカルデ王国はかねてから友好国であったが、周辺国への侵攻を画策する北方のアドジオン帝国に対抗するため、本格的に同盟を結ぼうとしている。その第一歩として、第四王子のマリウスとカルデ王国の第三王女、ミリアナ=アシュトル・カルディアナの婚姻話が持ち上がった。
今回、マリウス王子がミリアナ姫に挨拶をしたいとのことで、カルデ王国の王都、カルディアナの王城をお忍びで訪れることになった。
なぜお忍びかと言うと、ミリアナ姫はかなりお転婆と隣国にまでその名を轟かせており、実際に会ってみて、もしかしたら「この結婚はナシで」となる可能性もあったからである。
大仰な訪問で結婚がご破算になればミリアナ姫が恥をかく。そのため護衛を最小限にしたかったのだ。
本来であればメンネベヌク王国を拠点とする冒険者パーティにでも依頼すれば済む話だったが、『銀獅子団』の活躍は隣国にも伝わっており、マリウス王子が「是非に」と言い出したのだった。王子はミーハーであった。
と言う訳でアレスたちは王都メネベルクに来たのだが、四人とも苛立っていた。立て続けの指名依頼のせいでこの二か月、アイナに会えていないからだ。
Cランクに上がったお祝いもまだだし、三か月後にはアイナが十五歳になる。十五歳は成人になる歳で特別な意味がある。盛大に祝わなくてはならない。
万が一にもアイナの誕生日に間に合わなければメンネベヌク王国を滅ぼしかねない。それほどまでに『銀獅子団』の四人は殺気立っていた。二年間でシスコン的な何かも落ち着きを見せるかと思いきや、重症化の一途をたどっていた。
「ねえっ! 王子はまだなの!?」
王城の城門前で、モニカが衛兵に食ってかかる。
「俺たちには時間がない。急いでいただくようお伝えしてくれ」
いつも冷静なアレスでさえこのざまである。『銀獅子団』の評判など地に堕ちても構わない。なんとしてでもアイナの誕生日までに帰らなければならない。
「ん……ん……遅い」
いつもあんまり動かないネネがそわそわしてウロウロしている。ヒューイなど五分おきに「ちっ!」と舌打ちして貧乏ゆすりをしていた。四人は爆発寸前だ。マリウス王子、早くっ! 衛兵の誰もがそう願っていた。
メネベルクからカルディアナまで、どんなに急いでも馬車で一か月半はかかる。途中で何かトラブルがあれば、その倍かかってもおかしくないのだ。
もう指名依頼などほっぽり出して帰ろう、アレスがそう言おうとしたとき、ようやく城から三人の人影が現れた。マリウスと護衛の騎士二人であった。
『銀獅子団』の四人は「ギンっ!」と三人に向けて殺気のこもった視線を飛ばした。マリウスの口から「ひぃっ」と言葉が漏れ、騎士の二人は気圧されながらも腰の剣に手を伸ばした。
次の瞬間には「ふっ」と殺気が消え、アレスが笑みを浮かべて挨拶をする。
「殿下、お待ちしておりました」
『銀獅子団』の面々はマリウスの前に跪いて頭を垂れた。ヒューイはまだ貧乏ゆすりをしている。
「先程、殺気を向けられた気がしたが――」
騎士の一人、ガルドスと名乗る男の言葉をアレスが遮る。
「周囲を警戒しておりましたので」
顔を上げた四人の笑顔は、良く見れば口の端が引き攣っていた。
「それでは早速参りましょう」
衛兵から、『銀獅子団』がなにやら急いでいると聞かされていたもう一人の騎士――メルリアと名乗った女性が気を利かせる。
紋章が付いていない王族御用達の豪奢な馬車は六人座ってもゆったりしている。御者席も横に三人座れるほど幅広だった。
途中で何度も野営する必要があるため、馬車後部の荷物スペースには溢れんばかりの荷物が積まれている。それなりに重量があるので三頭立てになっており、御者席にはヒューイが一人で座り手綱を握っていた。その両隣にはモニカとネネが座っている。風に当たって気持ちを落ち着けるためだった。
先程まで貧乏ゆすりしていたヒューイだが、仕事が始まれば心得ている。手慣れた様子で三頭の馬を操り、じんわりとスタートさせる。
馬車の中では、マリウスが三人掛けに一人で座り、ガルドス、メルリアの二人の騎士に挟まれてアレスが座っていた。
マリウス王子は明るい金髪の細身の少年で、緑色の瞳は好奇心に満ちていた。
「殿下、我々は冒険者ですから礼儀を弁えておりません。道中のご無礼、どうぞお許しください」
「そんなことは構いません! それに、僕のことは『マリウス』と呼び捨てにしていただいて結構ですよ。友人として接してもらえたら嬉しいです」
ガルドスとメルリアの眉がぴくりと持ち上がったがアレスは気にしない。
「ではマリウス。道中何かあれば気軽に声をかけて下さい」
早速呼び捨てにすると二人の眉が更に上がり目つきが険しくなるが、アレスは全く気にしない。
「では早速ですが――」
マリウスが銀獅子団の冒険の話をせがむ。こりゃ先が長くなるな、と思いながらアレスは話を聞かせる。
アレス、ヒューイ、モニカ、ネネの心はカルディアナのアイナの元に飛んでいた。ただし警戒だけは怠らずに。ペネドラのことは忘れられていたのだった。
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