きっかけ
優しく焦げたあかね色の空。
夕暮れ空を見上げる1人の少年。
「何とかなるさ。」
そうつぶやく顔にはどこか影が目立つ。
夕暮れの小麦畑の中で少年はどこに向かうわけでもなく、くねくねと歩みを進める。
少年は陽気に鼻歌を歌いながら、合間にぶつぶつと何かを言葉にしている。
「と、、さ、、い、、、、」
すると、遠くから彼を呼ぶ声が広がる。
少年は呼び声の元に走り出す。
少年の歩いた後は、なにかの記号の跡になっていた。
夢を見た。
夢にしては、現実味があるがしかし幻想的であった。
無意識の呼吸を追い求めてその真理を探し続けている、ある青年。
比山 征吾はいつも何かを思案していた。
彼の父は、彼が生まれた直後に行方不明となり、研究者である母の比山 亜紀子と2人で5年の歳月を過ごした。
そして、後に比山 亜紀子は再婚し、真瀬 浩一を夫として新たな生活を送っていた。
浩一も言語学の研究者であった。
生物学の研究者である母と浩一。
征吾は学問に触れる機会は多かった。
征吾は色々な事に興味深く、答えというよりも、事象の理解を求めた。
小学生の頃は何かと問題を起こした。
彼はすでに彼の中での実験を行っていたのだ。
しかし彼の奇行はある事件でピタリと止む。
同級生の少女が自殺をしたのだ。
彼の目の前で。
学校の屋上で街の周りの観察を行っていた時だった。
「あなたは自分を解釈できますか?」
いつもの様子ではない、その少女はいきなり口調を変えて征吾にそう言って、飛び降りた。
征吾は20歳の今でも、それを鮮明に覚えている。




