四年後の襲来 Ⅱ
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「マルシア様……!」
次の瞬間、私はバルドスを背後に残して、走り出していた。
走りながら、私の頭に何度も浮かぶのは、否定の言葉だった。
シャルルがここに?
そんなこと、あり得る訳がない。
これまで何度も戻ってきてほしいと願ったことがあった。
しかし、それでも戻って来なかったのだ。
だから、そんなことあり得る訳がない。
そう思い……いや、願いながら私は走る。
「やあ、マルシア。久しぶりだな」
しかし、今回も私の願いが叶うことはなかった。
来客用の客間。
そこに駆け込んだ私に笑顔で口を開いたのは、俯いた長い黒髪の女性と──見慣れた金髪の人間だった。
記憶にある姿より成長し、少し小汚い格好をした彼は、私に満面の笑顔を浮かべて口を開く。
「記憶にあるよりきれいになったね」
それは、激怒してもおかしくない言葉だった。
しかし、呆然とたたずむ私の胸の中に浮かぶのは、焦燥感だった。
どうしてこんな時に、そんな言葉が胸に浮かぶ。
ようやく領地が軌道に乗ってきた時、そんな時に現れたシャルルの存在に私は唇をかみしめる。
……一体なにを考えてここにいるのか、それが分からないことがさらに私の中の不安を膨らませていた。
目の前の笑顔のシャルルに、私は唇をかみしめる。
本人も、自分がなにをしたのか分かっていない訳がないだろう。
その上で、こうして突然現れた。
その裏で、どんな狙いを持っているのか。
いや、こんな時の為に私はこうして働いてきたはずだ。
そう言い聞かせ、私は自分の胸に広がりつつある不安を押し殺す。
どんなことになっても、今一番働いているあの人に面倒事をもっていくわけにはいかないのだから。
「……久しぶりね。シャルル、あんなことをしてどんな顔でかえって来ると思ったら、そんな気の抜けた顔を見ることになるとは思わなかったわ」
「そんなことを言うなよ。婚約者だろう?」
明らかな嫌みに対しても、シャルルの表情が変わることはなかった。
そのことが、さらに私の中で警戒心を煽る。
「そのことを謝る為に今日来たんだよ」
「……へえ、どうやって?」
狙ってであることもわかりながら、脳天気な返答を続けるシャルルに思わず私の声にも怒りが混じる。
それを受けて、シャルルは満面の笑みで口を開いた。
「だから、ここに戻ってきたんだろう?」
「……は?」
「──マルシア、愛しの婚約者が戻ってきたよ。さあ、これからは二人で一緒にこの領地を盛り上げていこう!」
その時、ようやく私はもう一つの可能性に気づくことになった。
もしかしたら、自分は考えすぎである可能性。
……つまりシャルルは、ただ歓迎されると思って帰ってきたのではないか、と。
明日から朝、夜の一日二話投稿にさせて頂きます!
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