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mission10 スレトゥンドラゴン

ギャグが……、ギャグが思い浮かびませんw

今回は、完結に向けての話になるので、ギャグが少なめなのはご勘弁ください。



 私はエージェントドラゴン。

 種族はエンシェントドラゴン。

 ゲザー国の偉大なる王、カレーナル=ド=ゲザー陛下に仕える一人のエージェントだ!


 ………………


 エージェントだ!


 と、いう訳で任務だ。

 任務なのだが……。

 何と言うか、正直、面倒臭い。

 やる気の起きない任務だ。

 やらない訳にいかないのでやるが、勘弁してほしいと思う。

 何せ、馬鹿の相手をしなければならないのだ。

 その馬鹿は、タイラン帝国という。

 馬鹿な連中だとは思っていたが、とうとうやらかした。

 あの馬鹿共……



 エンシェントドラゴンの子供を(さら)ったのだ。



 竜王のオッサンがキレていた。

 他のエンシェントドラゴンもキレていた。

 『タイラン帝国を滅ぼせ!』と、いうドラゴンが多数いる状況だ。

 しかも、過激派は『人間を滅ぼせ!』と、叫んでいる。

 これに慌てたのが、主とジンク皇帝をはじめとした他の国々だ。

 巻き込まれたら(たま)らんとタイラン帝国に対して軍を起こした。

 現在、東からはゲザー国を中心とした六か国同盟軍、西からはジンク帝国軍がタイラン帝国に攻めこむ事態になっている。

 そして、人間の手で解決するという事で、ゲザー国に仕える私が、エンシェントドラゴンの子供の救出に向かっている。

 これは、人間の手によって解決しつつ、エンシェントドラゴンも介入しているという事になるからだ。

 どちらか一方の手で解決すると問題がでる。

 人間だけで解決してしまうと、エンシェントドラゴンに解決能力が無いように見られるし、エンシェントドラゴンだけで解決すると、人間全体を悪者として(あつか)う者が出る。

 その点、私なら、人間の国家に仕えるエンシェントドラゴンだ。

 一人だから、どちらが主導権を持っているとかもない。

 まあ、私が適任という訳だな。


 それでだ。

 実際、どうなっているかというとだ。

 あの馬鹿共、エンシェントドラゴンの子供を攫っただけで勝ったつもりになっている。

 そのため、所在が明らかな私を名指しで交渉の場に呼び出した。

 使者の口上だと、エンシェントドラゴンの子供を人質にすれば、エンシェントドラゴンを従わせられると思い込んでいるらしい。


 馬鹿だ。


 そんな訳はない。

 創造神様に、世界の管理業務の一部を委託(いたく)されている種族だぞ。

 そんな事で従わせられる訳がない。

 その事を馬鹿共に説明しなければならないと思うと気が重い。

 理解できるだけの知能があるかも怪しいのだ。


 エンシェントドラゴンの子供は勿論(もちろん)助けたい。

 正直、助けるだけなら簡単だ。

 力任せでどうとでもなる。

 だが、一応は交渉しないといけないらしい。

 大人しく子供を返せば、多少は減刑する方向で話が決まっているのだ。

 だからこそ、馬鹿を相手に話し合いをしなければならない。

 それが、私の気力を削いでいた。

 本当に面倒臭い……。


 そんな事を考えていたら、指定された場所だな。

 タイラン帝国の軍が陣を張っている。

 数は……、二万程度か?

 まあ、それなりの数だな。

 一応は警戒しているのだろう。

 無意味だがな。


 とりあえず、着陸しよう。

 場所は……、ど真ん中で良いか。

 どうせ、配慮してやる必要がある連中じゃないしな。


 一気に降下し、着陸する。

 百人程吹き飛んだが、まあ、良いだろう。

 周りを見渡す。

 鎖に(つな)がれたエンシェントドラゴンの子供が目に入った。

 実際に目にすると想像以上に腹が立つな。

 本当に話し合いが必要か?

 一気に救出したいところだ。

 だが、仕方ない。話だけは聞いてやろう。

 相手の交渉役はどこだ?


 そう思っていたら、無駄に立派な天幕の下から人が出てきた。

 そのまま来るのかと思ったら、何を思ったのか馬車に乗り込んでいる。

 そして、逃げる訳でもなく、此方(こちら)に向かってくる。

 何をやっているんだ?

 呼び出したのはお前らなのだから、とっとと来い。


 苛々(イライラ)しながら待つと、馬車が目の前で止まった。

 そして、馬車から降りてくる事もなく、此方を見てニヤついている。


「タイラン皇帝陛下の御前だ! そこのドラゴン! 頭が高いぞ! ひれ伏せ!」


 どうやら、馬鹿の首魁(しゅかい)らしい。

 供回りらしい人間が偉そうに指図(さしず)してくる。

 どうするか……。

 とりあえず、立場を分からせておくか。


「貴様らこそ態度がデカいぞ! 皆殺しにされたいか‼」


 怒鳴りつけておく。

 結構な人数が失神したな。

 軟弱な奴らだ。

 そんな事では立派なゲザリストにはなれんぞ。

 まずは、危険を察知したら、素早く土下座する事から始めるのが正解だ。

 土下座は優れた防御姿勢でもあるからな。


 ん?

 良く見れば、馬車の馬も気絶しているな。

 馬は土下座できないから仕方ない。

 まあ、暴れだして暴走しなかったのは運が良いんじゃないか?


「き、貴様! 立場が分かっているのか⁉」


 膝を全力で震わせながら、馬鹿の供回りが言ってくる。

 いや、立場が分かっていないのはお前等だと思うぞ?

 それに、それ程に膝を震わせていると迫力も何もない。

 お前も、まず、土下座するところから始めたらどうだ?

 土下座は交渉姿勢としても最高だからな。


「ま、まあ、待て。(ちん)が話す」


 馬車に乗った馬鹿の首魁が言う。

 私は、お前と話す事は無いのだが、一応、話を聞かないとまずいんだろうなぁ……。


「朕が、エンシェントドラゴンの子供を捕えているのは知っているな?」

「知っているから来たんだろ」


 何を分かり切った事を言っているんだ?

 早く本題に入れ。

 あんまり話が長いとぶちのめすぞ。

 それが嫌なら、土下座をしろ。

 土下座の出来によっては真面目に聞いてやる。


「この子供を殺されたくなければ、エンシェントドラゴンは、今後、朕の支配下に入れ」

「馬鹿か」


 思わず言ってしまった。

 しかし、あまりにも馬鹿な発言だから仕方ない。


「い、良いのか? 子供を助けたいとは思わんのか?」

「思うから来ている。だが、お前らの要求を聞くつもりはない。とっとと子供を解放して責任者を差し出せ」

「なっ……⁉」


 絶句している。

 何か不思議か?

 私は当たり前の事しか言っていないぞ。


「子供が、此方の手にあるという事を分かっているのか⁉」


 怒鳴って来るが、怖くも何ともない。

 馬鹿だなぁ。と、いう感想しかなかった。


「お前らが攫った子供は、竜王のオッサンの子供とかではないぞ? 分かっているのか?」


 そこが疑問だった。

 此奴(こいつ)ら、その辺を分かっているのだろうか?


「それがどうした⁉」


 分かった上で、ここまで強気なのか?

 馬鹿が極まっている。


「お前等、末端貴族の子供を人質に取られたら、相手の要求をなんでも聞くのか? 属国になれと言われたらなるのか?」

「なる訳ないだろう! そんな要求をしてきた者を処刑してくれる!」


 ………………


 そう思うなら、何で、エンシェントドラゴンが従うと思ったんだ?

 馬鹿の考える事は分からん。


「我々とて同じだ。そんな要求を聞く訳がない」


 仮に、竜王のオッサンの子供が攫われたとしても結論は同じだっただろう。

 聞ける要求と聞けない要求がある。

 そんな事も分からんのか?


「一応、言っておくが、エンシェントドラゴンは、全竜族の頂点の種族だ。今回の事、竜族全体がキレてるから、子供を殺したら、数万のドラゴンがタイラン帝国に襲い掛かるぞ」


 私の言葉に、タイラン帝国の連中が揃って青くなる。

 一部、パニックを起こしている者もいた。


 ………………


 ……分かってなかったのか?


 分かり切った事だから、主もジンク皇帝も軍を発したのだ。

 巻き込まれたら堪らないと言っていた。


「……こ、子供を痛めつける事も出来るのだぞ?」


 お?

 脅し方を変えてきたな。

 だが、根本が分かっていない。

 脅迫というのは、例外はあるが、基本的に実力が近くなければ意味がない。

 実力で()じ伏せられるからな。

 それに、私は土下座もできない連中と御行儀(おぎょうぎ)良く交渉するつもりなど無いのだ。


「子供に傷をつけたら、傷の一つにつき、お前の国の皇族を一人、貴族を十人、兵士を千人殺すぞ」

「………………」


 黙ったな。

 やっと、自分の立場が分かったらしい。

 自分の言った脅迫に、より規模の大きな脅迫を返された気分はどうだ?

 報復の可能性すら考えていなかったらしいな。

 意表を突かれたような顔をしている。

 そんな馬鹿の首魁が、助けを求める様に周りに視線を彷徨(さまよ)わせている。

 だが、無駄だ。

 起死回生の一手などありはしない。

 子供を攫った時点で、タイラン帝国に救いなど存在していないのだ。

 そう思っていたら、人間が一人、私の前に出てきた。


「黙れ! ドラゴン(ごと)きに恐れると思うな!」


 前に出てきた人間は、そう言って、剣を抜く。

 無駄に度胸はある様だが、私に勝てなければ状況が悪化するのを分かっているのだろうか?


「レッドドラゴンをも討ち果たした魔剣を受けられるか!」


 そう叫んで突っ込んでくる。

 なるほど。言うだけあって、確かにレッドドラゴンを倒せるくらいの実力はありそうだ。

 魔剣もそれなりの品だが、正直、ゲザー騎士団が使うゲッザー・トマホークの方が(はる)かに力がある。

 何せ、ゲッザー・トマホークは、一流のゲザリストが(あつか)うエネルギーの一つ、ゲッザー線を宿した武器だからな。

 それらの事から考えて、目の前の人間は、ハッキリ言って、ゲザー騎士団の見習い以下じゃないか?

 ゲザー騎士団は、土下座術を修めているから、見習いでもレッドドラゴンでは相手にならない。

 それに、そもそもの話……


「下位竜を倒したくらいで(いき)がるな」


 そうとしか言えない。

 せめて、中位竜位は倒して来い。


「ぶへぇぇぇっ!」


 軽く手で払いのけたら吹き飛んでいった。

 何がしたかったんだ?

 まあ、良いか。

 話は聞いたし、もう良いだろう。

 土下座をする様子もないしな。


 魔術を発動し、子供を捕えていた鎖を切る。

 子供が(あわ)てた様に此方に向かって飛んできた。


「逃がしたら終わりだぞ! 捕えろ!」


 騒がしいな。

 どうやら、子供を再度捕えようとしているらしい。

 仕方ないので、捕えようとしている連中を魔術で蹴散らしておく。


 子供が私の下に飛び込んできた。

 これで終わりだ。

 相手に交渉材料は何もない。


「……傷があるな」


 子供に幾つかの傷があった。

 大分、乱暴に扱われていた様だ。

 腹立たしい。

 どうしてやろうか……?


「ふむ……。都合よく、皇族が一人いるな」


 そう言って、馬鹿の首魁に視線を向けてみる。

 それだけで、馬鹿の首魁が蒼白な顔で震えだした。

 涙と鼻水で顔をグシャグシャにしている。

 中々、愉快(ゆかい)な顔だな。

 しかし、この状況で、土下座の一つもせんとはな。

 主なら、こんな状況ならば、見事な土下座で場を制するぞ。

 やはり、国を()べる者としての器が違うという事か。

 そもそも、主は、こんな馬鹿な真似をしないしな。


 さて、どうするか?

 この馬鹿を始末してしまっても良いのだが、その辺は主に任せた方が良いだろう。

 なら、要件を終わらせて、さっさと帰ろう。


「竜王のオッサンからの伝言だ」


 一応、伝言を預かってきていたのだ。

 最初から言っても聞かなさそうだったから今まで伝えていなかったが、もう、大丈夫だろう。


「今後、百年間、タイラン帝国は他国に攻め入る事を禁止する。破れば、ドラゴン総出で攻め滅ぼす。……以上だ」


 私の言葉に、馬鹿の首魁が必死に(うなず)いている。

 この様子なら大丈夫だろう。


「現在、ゲザー国を中心とした六か国同盟とジンク帝国がタイラン帝国に攻撃を仕掛けているが、領地の奪還なども考えるなよ。それも攻撃と見なすからな」


 主達の電撃戦で、現在、タイラン帝国は国土の三割以上を失陥(しっかん)している。

 主の指示で、入念に通信遮断を行っているので、この馬鹿共は気づいていないだろうがな。


 ちなみに、私が見た限り、戦局は一方的だった。

 もちろん、ゲザー国の圧勝だ。


 陸上戦では、タイラン帝国は臨時動員した兵力も差し向けてきていた。

 そのため、六か国同盟十万に対し、タイラン帝国は十五万程となっていたのだ。

 だが、ゲザー騎士団のゲザ突撃の前には数的優位など吹き飛んだな。

 土下座の群れが重装騎兵を跳ね飛ばして進む姿は圧巻だった。

 あと、タイラン帝国には魔剣部隊とかいう連中もいたが、ゲッザー・トマホークに剣をへし折られていたな。

 それを目撃して、タイラン帝国は敗走を開始したのだから話にならない。

 あれが精鋭部隊だったとでも言うつもりなのだろうか?

 まあ、結局、(ほとん)どゲザー国のみで完勝し、同盟国は捕虜の回収に終始していた。

 被害が少なくて何よりだったと思う。


 また、海上戦でも圧倒的だった。

 ジンクの皇太子が指揮するジンク海軍がタイラン海軍と戦う中、ゲザー国が誇る総旗艦、戦艦ゲザトが参戦したのだ。

 艦首のゲザー砲が敵艦隊を()ぎ払う姿は素晴らしいものだった。

 タイラン海軍は、ゲザー砲に戦意を(くじ)かれた上、単艦突撃を敢行(かんこう)したゲザトのゲザ粒子砲の連続斉射で完全に士気崩壊した。

 しかも、陣形は崩れ、統率もままならなくなったところに、追い打ちの様にゲザー艦隊の本隊が到着。

 戦闘艦ゲザ風、ゲザ波、ゲザ雪らの活躍もあり、タイラン帝国の総旗艦、グレート・タイランを鹵獲(ろかく)する大勝利だった。

 そして、その勝利の勢いのまま、タイラン帝国南部の港湾都市は全て陥落させてある。

 要は、タイラン帝国は海を失ったのだ。


 タイラン帝国は、この後も国土の失陥は続くだろうし、海を失った事で塩の入手も難しくなる。

 この事に気付いた時には立て直しは不可能だろうな。

 そのため、もう、これまで通りの様にはいかない。

 下手したら、タイラン帝国は亡ぶかもしれんな。


 だが、まあ、私の知った事ではない。

 要件は終わったのだから、これ以上、馬鹿共の相手をする義理も無い。


「さて、帰るか」


 空に飛び立つ。

 子供も遅れずについて来た。

 どうやら、怪我は大した事はなさそうだ。

 楽しそうに空を飛び回っている。

 無邪気な姿に、思わず(ほお)(ゆる)む。


 とりあえず、主の下へ向かおう。

 そこで、子供を親に返せば任務は終了だ。

 面倒な任務だったが、子供に大した怪我が無かったのは幸いだ。


 子供に合わせて、速度を加減して進む。

 帰ったら、主に御褒美を貰わないとな。

 それくらいは許されるだろう。

 何せ、特級馬鹿の相手をさせられたのだからな。

 主の土下座。

 それを思えば疲労感も消えていく。

 心が浮き立つ。


 やはり、主は最高だな!






「結婚しましょう」


 帰ったら、主に土下座でプロポーズされた。

 何が起きたのだ?

 訳が分からないが、とにかく確認しなければならない。


「とうとう、兄に総掘りを埋められたのか?」


 創造神様も舌を巻く稀代(きだい)の卑怯も……、いや、策士の兄の仕業だと思った。

 だが、返答は意外なものだった。


「……タイラン帝国がやらかしたので、竜族と人間の友好を目に見える形にしないといけないんです」


 ………………


 なるほど。と、思った。

 つまり、あの馬鹿共の尻拭(しりぬぐ)いを主がする訳だ。

 私の事ではあるのだが、何と言うか……



 流石に、主が可哀(かわい)そうになった。


最近、土下座の夢まで見る様になりました。

この話、書いていて気が狂いそうになりますw


あと一話か二話で完結させる予定なので、良かったら最後までお付き合いください。

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