第八話 剣士
村の道。
クロエとアイリスの前に
数人の男が立っていた。
革の鎧。
腰の剣。
荒い笑い声。
冒険者だった。
その中の一人が
クロエを見て言う。
「珍しい髪だな」
クロエは黙っている。
男は
クロエに近づいた。
「銀髪なんて初めて見たぜ」
別の男が笑う。
「どこのお嬢様だ?」
アイリスが言う。
「……ただの旅人よ」
男たちは
顔を見合わせる。
そして
また笑った。
「旅人ねぇ」
「こんな少女二人でか?」
男の一人が
クロエの肩に手を伸ばす。
その瞬間だった。
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「やめておけ」
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低い声が響く。
男たちが振り向く。
そこに
一人の男が立っていた。
背の高い体。
鍛えられた腕。
背中には
大きな剣。
落ち着いた目。
男は
冒険者たちを見て言った。
「少女相手に何をしている」
冒険者の一人が
顔をしかめる。
「……誰だお前」
男は
短く答えた。
「関係ない」
冒険者が舌打ちする。
「関係ねぇだぁ?」
「横から口出ししてんじゃねぇ!」
男は
静かに言う。
「帰れ」
冒険者が笑う。
「……は?」
「調子乗るなよ」
男は
小さく息を吐いた。
「そうか」
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次の瞬間。
冒険者が剣を抜いた。
男に向かって斬りかかる。
しかし
剣は当たらない。
男は
一歩横へ動いた。
それだけだった。
そして
腕を振るう。
ガンッ
冒険者の剣が
弾き飛ばされる。
男の拳が
冒険者の腹に入る。
「ぐっ……!」
男は
そのまま地面に崩れた。
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残りの冒険者が
顔を強張らせる。
「なっ……」
二人同時に
剣を抜く。
男は
静かに剣を抜いた。
大きな剣。
だが
動きは速い。
一瞬だった。
キンッ
剣が交わる。
次の瞬間。
冒険者の剣が
地面に落ちていた。
男の剣が
冒険者の首元へ向けられている。
「終わりだ」
冒険者たちは
完全に動きを止めた。
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男は
剣を戻す。
そして
短く言った。
「次はない」
冒険者たちは
悔しそうに
舌打ちする。
「……ちっ」
冒険者達は逃げる様に
村の奥へ去っていった。
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静けさが戻る。
男は振り向き片膝をつき
クロエとアイリスを見る。
そして
優しく笑った。
「怪我はないか」
アイリスが答える。
「ええ」
男は
小さく頷いた。
「そうか」
男は
少しだけ真面目な顔になる。
「この辺りで魔女が出た」
「気をつけろ」
アイリスが驚く。
「魔女?」
男は頷く。
「護送中の処刑馬車が襲われた」
「兵士が何人もやられている」
クロエは黙って聞いていた。
男は言う。
「村にも来るかもしれない」
「夜は外に出るな」
そう言って
男は歩き出した。
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クロエは
その背中を見ていた。
立ち方。
動き。
剣の扱い。
隙がない。
クロエは
心の中で思う。
(……強い)
アイリスが
小さく言う。
「怖い話ね」
クロエは
男の背中を見ながら言う。
「ああ」
クロエは
少し目を細める。
「あいつ」
「強いな」
アイリスが聞く。
「分かるの?」
クロエは
小さく頷いた。
「なんとなく」
男は
そのまま村の奥へ消えていく。
まだ知らない。
あの男が
レオン・ガルドだということを。
⸻
続く




