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第64話 錬生造身!! 贋作の錬生術師

 

(光結ちゃんが送ってくれた位置は……!)

 別の事件を捜査していたところを、金弥と銀一の2人に現場を任せて琥珀は駆けつける。その事件が、紫リシアと思われる少年の怪死だったことは、また別の話である。


「ここか……」

『お、1発目から当たり引いたぜ、オイ!』

 声がする方向に目をやる。そこにいたのは車椅子に座る透と、側を漂うレヴァナント。

「お前は……レヴァナント、だったな」

『おうよ、ちゃんと話すのは初めてだったか』

「初めまして、お巡りさん」

 明らかに奇妙な雰囲気を纏うレヴァナントもだが、何より琥珀が不気味に感じたのは透の方だった。あまりにも無垢なその笑みが、果たして事情を知っているのかそうでないのか、レヴァナントに利用されているのかそうでないのか。琥珀の目には霧がかかった様に透の本質が見えてこない。

「今度は何をするつもりだ」

『安心しな、お巡りさんの厄介になる様な事はしねぇよ。ただちょいと遊んで欲しくてな』

 レヴァナントが透へ合図を送ると、透はホイッスルを吹いた。甲高い音が空へ響き渡ると、物陰から5つの影が姿を現す。

 琥珀は彼等、彼女等の装束に見覚えがあった。

「ソウリストユニオンの……どうしてお前が!?」

『そりゃこれの開発者だからよ。てなわけで相棒、お巡りさんに見せてやりな!』

「じゃーん!」

 透が掲げたのはアーティフィスヴィトロガン。異様な造形のそれを目にし、硬直する琥珀に見せびらかす様に振って見せる。

 そして全く同じ物を、ソウリストユニオンの錬生術師達も取り出す。

『まずは俺達の新しい衣装を見せてやる。相棒、練習通り頼むぜ!』

「うん」


 透はレヴァナントのフラグメントを掴むと、アーティフィスヴィトロガンの後部、装填ユニットを展開。その中へレヴァナントを入れ、閉じる。


《ローデッド レヴァナント!!》


「えぇっと……ここを、2回」

 透は更に装填ユニットを2回スライド。


《コンセントレーション・ダークマター!!》


「それで、上に向かって」

 アーティフィスヴィトロガンを天に掲げ、空を撃ち抜いた。


「変身」


《ゲート カイホウ》


《Infinite Abyss Spiral!! レヴァナント・エクスノウン!!》

《Let′s laugh!! HAHAHAHAaaa!!》


 骨に似た装甲は角や牙の様に鋭利に変化。本体は死者の灰に似た白色となり、その上を漆黒のラインが無数に走る。髑髏のフェイスは他者を嘲笑う様に口を大きく開けて笑い、紫に染まった眼の孔には小さな金色の光が灯る。


「どうよ、イカすだろ?」


 生き物の皮と包帯を繋ぎ合わせたようなローブを腰に纏い、《レヴァナント・エクスノウン》は人差し指を突きつける。

 琥珀もまた変身しようと構えると、

「まぁ待て待て待て待て! まだ見せたいもんがあるんだって! ……ってなわけで待たせたな! お前等も変身しろ!」

「何だって……!?」


 《レヴァナント・エクスノウン》の合図を皮切りに、ソウリストユニオンの錬生術師達はアーティフィスヴィトロガンへフラグメントを装填する。

 それは歪な人型を模した、無色透明のフラグメント。


《ローデッド ホムンクルス》


 装填ユニットを1回スライド。その表情を窺い知ることは依然として叶わない。


《コンセントレーション・プリミティブ》


 アーティフィスヴィトロガンを正面へ向け、5人は一糸乱れず引き金を引いた。



「「「「「造身」」」」」



《ゲート カイホウ》


《Creation of Extra Factor! ホムンクルス》


 灰赤色の身体に銀色の装甲、それらを無理やり繋ぎ止める白銀の鎖。胸の中央に浮かび上がった水晶は無色透明であり、額から伸びる捻れた角もまた透き通っている。しかしながらそのアイレンズは大穴の様な漆黒に染まっている。


「ふーん中々悪くねぇ。ま、俺達と比べちゃちょいとシンプル過ぎだが……っと、悪い悪い待たせたな。さっ、お前の番だ土の錬生術師」

「ユニオンの錬生術師達も変身するなんて……」

「紋章が貧弱過ぎるってのと、適応したシステムがなかった訳だからなぁ。それを解決してやりゃ良いだけだ。ってんなこたぁ良いから早く変身しろって!」


 急かす様に足踏みをし始める《レヴァナント・エクスノウン》。これ以上情報を引き出す事は難しいと判断した琥珀はフラグメントを取り出した。


《ファントム・フラグメント!!》

《フラグメントアンプ・テラノーム》

《オスミウム・ガネーシャ!!》


《ハードニングリアクション!!》


「うぉ! お前も新しいやつ手に入れたのか!? 興奮してキタァ!!」

 新たなフラグメント、そしてフラグメントアンプを見た《レヴァナント・エクスノウン》は小躍りを始める。冷えた視線を向けつつも、琥珀は構えを取り、

「変身」


《ゲート カイホウ!!》


《ガッチガチ ガッキーン!! ビルディング・ザ・メタルアーマー!! ダイハードファントム!!》


《ファントム・ノーム結合 オーバーラップ・ガネーシャ!!》


 《ダイハードファントム》へ変身。人差し指をスナップして《レヴァナント・エクスノウン》と《ホムンクルス》達を挑発する。


「来い」

「そんじゃあ……行かせて貰いまーす!!」





「今日はおやすみです。帰って下さい」

 光結の言葉は棘が含まれていた。だがそれをユナカは諌めない。

「おやすみ、ですかぁ。残念です」

 その男、ベリルが纏う異様な雰囲気が、ただの客ではない事を伝えていたからだ。

「一度、味わってみたかったんですけどぉ……愛を失った手が作り出す、パンの味」

「……何者なんだ、お前は」

 ベリルの言葉の裏を読めないユナカではない。正体を問いただすと、自らの、そしてユナカの炎の紋章を同時に指差した。

「私はぁ、炎を模して作られた存在。謂わば、もう一人の炎の錬生術師」

「何を言ってる……俺はユニオンに協力した覚えは」

「あなたの師匠に聞いてみれば良いじゃないですかぁ。私も詳しい事情は知りません」

 ベリルは懐からアーティフィスヴィトロガンを取り出す。

「デーモンハート、でしたっけ? 完成、手伝いますよぉ」

「それが目的か……!」

 ソウリストユニオンからの使者ということにも納得がいく。完成が待ちきれずに戦う相手を用意したということだろう。

 ユナカは敢えて挑発に乗り、デーモンハートを取り出そうとする。

「ダメだって」

 しかしそれを光結によって止められる。

「灰簾さんはまだ戦えない。光結ちゃんだって晶くんがいないと」

「大丈夫」


 光結はジュエルブレッドの壁を見る。すると突然光の扉が現れ、中から晶が飛び出してきた。


「うわぁビックリした! こんな感じなんだ……」

「ごめん晶くん、早速だけど」

「あっ、はい! 丁度休み時間、で……」

 晶はベリルを見た瞬間、表情が一気に険しくなった。彼の眼は、ベリルを危険な存在だと激しく警告している。

「光結さん……まずは、僕が」

「うん。お願い」


「光、ねぇ……君達の愛と絆はぁ……甘過ぎる」


《ルクスドラゴン レフト》

《ルクスドラゴン ライト》


《アナライズリアクション ライトサイド》


 晶のフラグメントゲートへ光結が吸い込まれ、連結したフラグメントゲートを展開する。


「変身!」


《ゲート カイホウ》


《Bright the Shining!! ルクスドラゴン・カンデラ!! ギラギラギラーン!!》  


 《ウィスプ》へ変身。晶が主となるカンデラモードのアイレンズがベリルを睨む。


 だが当のベリルは眉一つ動かさず、気味の悪い笑みを浮かべ続けている。

「子供同士のそれも気になりはしますがぁ……君達を痛めつければ、彼の覚悟にも火が点くでしょうか」

 虚空からフラグメントが浮かび上がる。アーティフィスヴィトロガンの装填部へそれを挿し込んだ。



《ローデッド ガイスト》


 ユニットを2回スライド。フラグメントエネルギーを濃縮する。


《コンセントレーション・イグニス》


 そしてその銃口を、自らの頭へ突きつける。表情を崩さぬままトリガーを引いた。


「造身」


 放たれたエネルギーはベリルの頭を弾く。地に付かんばかりに反り返った身体は、大きく変容した。


《ゲート カイホウ》

《Creation of Ignis Factor! ガイスト!!》

《ガイスト・サラマンダーの法則:未解明》


 その姿は何処か《リーパー》に似ていた。だがその身体は骨の様に白く、水晶もまた燻んだ白。しかしながら装甲は鮮血の様な赤、その上に赤紫の刃が逆鱗の様に並んでいる。頭部はハイエナやオオカミの頭骨に似た形状、白色のアイレンズからは生気がまるで感じられない。


「遊びましょうかぁ。初めての、実戦で」


 《ガイスト》はアーティフィスヴィトロガンを撫で、銃口を《ウィスプ》へ向けた。



続く

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