第61話 重光合身!! 砲光の錬生術師!!
「ま、これで完成だな」
ソウリストユニオンの技師達は完成したものを手に取り、ラプラスの元へ届ける。
フラグメント・Vの姿で漂いながらそれらを眺めているのはレヴァナントだった。
「ほんとは俺が直接調整したかったけど、相棒は今忙しいからなぁ……おーい、せっかくの力作なんだから何か感想くらい寄越してくれたらどうだよ!」
フラグメントの精製に集中し、レヴァナントの呼びかけにも応じないラプラス。精製装置の中で揺蕩うフラグメントの結晶は、それぞれ赤、青、黄、緑の輝きを怪しく放っている。
「進捗は確認している。後は私達だけでも量産は可能だ。協力感謝する」
すると装束を着た数名の組員がレヴァナントへ報酬を渡す。ラプラスからの依頼でレヴァナントが製造に協力したものの完成品。
スライド後部にフラグメントゲートに似た装填部が備わった、新たなヴィトロガン。従来のものやイリガルヴィトロガンよりも一回り大きく、銃口が縦に2つ存在している。
「おっほー! 俺も貰っていいのかよ! いやまぁ俺が設計したんだからその権利はあるんだが……あ、ちょっとそこの美人な姉ちゃん、一緒に持って行ってくれよ。俺こんな身体だから持ってけないの」
「……かしこまりました」
機嫌良く去っていくレヴァナントを横目に、ラプラスは新たなヴィトロガンを手に取る。
「アーティフィスヴィトロガン……これで私達も戦いの場に赴ける」
必要なピースであるフラグメント、そして変身者はすぐに完成する。
「デーモンハート完成後の計画も、問題なく進みそうだ」
ユニコーンストライカーに乗り、力無く自らの身体に寄りかかるユナカの重みを気にしながら駆けるザクロ。バランスが取れないユナカを落とさない様にバイクの状態で走り続けるが、それ故に焦りは積もる。
「大丈夫だユナカ……もう少しで……」
ユナカに、そして自分に言い聞かせる様に呟き、先を急ぐ。
しかし、
「っ、うわぅ!?」
道の先に黒い刃が無数に突き出す。回避しようとユニコーンストライカーをドリフトさせるが、減速した瞬間に刃が車体を貫く。
「まずい、ユナカ!!」
自分達が貫かれるより早く、ザクロはユナカを抱いて跳んだ。ユニコーンストライカーが砕け散るものの、2人は地面を転がりながら逃れることが出来た。
「あーれぇ……あの2人じゃなかったかぁ」
黒い刃が消失すると、その主が姿を現した。リシアだ。
「でも確か……仲間、なんだよねぇ?」
「あの黒い刃……晶くんが言っていた……!」
「じゃあ君達を痛めつけたらぁ……」
リシアの身体から大量の黒い水晶が突き出し、瞬く間にその姿をアトラムのものへ変化させる。
以前とは異なり、無数の黒い腕が身体を抱くように巻きつき、装飾は全て欠け、それらを補うように黒い水晶が纏わりついた姿をしている。両手の爪は、リシアの歪みの始まりとも言える果物ナイフの刃へ変化していた。
「助けに来てくれるんだよね?」
迫る《マーダーアトラム》には構わず、ザクロはユナカを起こして逃走を図る。
「っ、ユナカ!?」
だがユナカはそれを振り払い、今にも倒れそうな足に力を込めて前へ出る。
「やめろ! 今はフラグメントゲートのセーフ機能が、いや、それ以前に身体が!!」
「逃げる隙を、作るくらいなら……!」
ユナカはフラグメントを装填するが、フラグメントゲートは警告を放つ。だがそれに耳を貸さず、《ヘリオライトフェニックス・フラグメント》が放つ炎を込める。
「今の俺にも出来る!」
《ゲート カイホウ!!》
《業火絢爛!! Re バースト!!! イグナイト・リーパー!!!》
《リーパー・サラマンダーの法則!! アペンド・フェニックス!!》
《イグナイトリーパー》へ変身、《マーダーアトラム》へ向かっていく。
「光結お姉さん、さようなら!」
「さようなら文香ちゃん」
礼をし、家の中へ入る文香を見送った晶と光結。晶と特に親しい友人達を送り届け、ようやく晶は安心して帰路に着く事が出来る。
「ありがとうございます光結さん」
「私が提案した事だから」
光結の提案である送迎。それは逃げた後から消息が分からない《マーダーアトラム》を警戒しての事だった。
『晶くんに何かあればすぐに分かる。でも彼奴は晶くんのお父さんとお母さん、それに友達を狙うかもしれない。私の施設を狙った様に』
光結の言葉を思い出す。《マーダーアトラム》、リシアはその美しい容姿に似合わず平気で狡猾な手段を取る。一般人を人質に迫ることも躊躇わないだろう。
「帰る前にジュエルブレッドに寄ってもいいかな?」
「はい。ユナカさん達に用事ですか?」
「いや明日のパンを」
その会話が不意に遮られる。2人の先の大通りに投げ出された《イグナイトリーパー》によって。
「ユナカさん!?」
「パン屋のお兄さん、何と戦って……!?」
「そんなんじゃ逃げる隙なんて作れないよ」
《イグナイトリーパー》へ降りかかる無数の腕、そして声。正体を察するには十分すぎるくらいだった。
「あのアトラム!!」
「っ、晶、くん、光結ちゃん!?」
視線が逸れた刹那、《イグナイトリーパー》は宙に持ち上げられ、電信柱、民家、道路へ何度も叩きつけられる。
「やめろ!!!」
それを阻もうと、ザクロはヴィトロガンで銃撃。しかし《マーダーアトラム》を傷つけることは叶わない。
「殺しちゃうとまた振り出しだからぁ……あっ」
と、ようやく《マーダーアトラム》が晶と光結を認識。《イグナイトリーパー》を投げ捨てる様に解放する。
「ユナカ!!」
「ユナカさん!!」
変身が解け、地面に倒れたまま動かないユナカ。駆け寄るザクロと晶、そして3人を守るべく背にして立つ光結。
「ようやく見つけたよぉ。こうしてる間にもさぁ、子供達が苦しんでるんだ。だから君達2人を早く始末しなきゃ」
「……あなたと話なんかする意味ないけど、どうしてもその物言いが鼻につく」
フラグメントゲートを出現させながら、光結は冷たい視線を向ける。
「あなたにどんな過去があって、どんな信条があるかは知らない。でもこれだけはハッキリ言える」
フラグメントゲートに、醜い《マーダーアトラム》の姿が映し出される。
「あなたはただの殺人鬼。自分より力が無い子供しか殺さない、卑怯で臆病な人間でしかない」
「……違うんだよなぁ……違う、違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!!!」
突如叫び出し、辺りのものを腕で破壊する《マーダーアトラム》。それは何処か、癇癪を起こした子供の様だった。
「僕は人間じゃない!! 汚い大人達に利用される子供を助ける為にぃ、怪物に、いや、ヒーローになったんだ!! 僕は間違ってない! 僕は正しいことをしてる!! 卑怯で臆病なのは大人と、それに考えなしに従う君達みたいなガキだろうがぁ!!!」
自らの信条すら忘れた、あまりに身勝手な言葉。光結の表情が歪み、《ウィスプ》へ変身しようとした時だった。
「ふざけるな」
その場にいた誰もが凍りつく様な声が止めた。そして、それを発した主は、
「誰が正しいって……? 誰がヒーローだって……?」
晶だった。
《マーダーアトラム》の叫びの意味を呑み込んだ時、脳裏をユナカ達と出会ってからの日々が走った。光結の過去を見たあの日が走った。
「苦しんで、傷ついて、辛い過去があって……それでも、それを呑み込んで戦ってる人達がいる前で……!!」
光結を追い越し、《マーダーアトラム》を睨みながら溢す晶。そんな彼を見た《マーダーアトラム》は、無自覚に後ずさる。
「自分に負けて他人を傷つけることを選んだお前が!! 二度とその言葉を口にするな!!!」
晶の激情に応える様にフラグメントゲートが出現。紋章が太陽の様に輝きだす。
「光結さん……僕にやらせてください……!!」
「……いいよ、晶くん」
光結は嬉しそうに微笑むと、フラグメントを装填。その身体は粒子となってフラグメントゲートに吸収され、晶のフラグメントゲートと合体。
両眼に紋章が浮かび上がる。
《ルクスドラゴン レフト》
《ルクスドラゴン ライト》
《アナライズリアクション ライトサイド》
2匹の光竜は巨大な門へ姿を変える。今まで自分を守ってくれた錬生術師達への想いを両手に握り締め、
「変身っ!!!」
両手で門を押し開けた。フラグメントゲートの光竜が分厚い甲殻を備えた双頭の陸竜へ変形。
《ゲート カイホウ》
《Bright the Shining!! ルクスドラゴン・カンデラ!! ギラギラギラーン!!》
閉じた竜の顎門に走る白色のアイライン、両肩には竜の角が突き出し、胸部中央から爪の様な3本のブレードが出現。黄金の装甲に白いモールドが刻み付けられている。
腹部に竜の頭部を模したクレストが浮かび上がり、背中の翼が展開し、再び閉じて背中へ格納された。
「なん、だよ……何で子供がぁ……!?」
狼狽える《マーダーアトラム》から一度視線を外し、《ウィスプ》はユナカとザクロへ振り返る。
「晶、くん……」
「……」
「今度は、僕が」
「ユナカさん達を守る番です!!」
続く




