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第38話 怪物進化! 悲劇の足音

 

「ほいそこそこ……よし、これでオッケー。ちゃんと撮れよー」

 逃げ惑う人々の背中から這い出て来たバデック達に指示を出し、《ガーデル》は破壊された建物や街灯を映させる。

「ご覧下さい。美しかった金識町の光景は見るも無惨な姿となってしまいました。悲しいですね。まぁ俺は微塵もそんなこと思ってな、いった!?」

 《ガーデル》の茶番を遮ったのは銃声。撃たれた額を擦りながら、地面に落ちた鉛玉を拾い上げる。

「いってぇ……俺じゃなかったら死んでたぞ多分」

「ちっ、やっぱこれじゃ駄目か」

「何してるんですか金弥さん! そいつは警部に任せて僕達は一般人の避難を!」

「しょうがねぇか、後は頼んだぞ警部!」

 銃の硝煙を吹き消し、銀一と共に金弥は走り去って行く。入れ替わるように琥珀が現れた。


「変身!!」


《ゲート カイホウ!!》


《土涛・クラッキング!! テラ・ファントム!!》


《ファントム・ノーム結合!!》


「えっ? どわぁっ!?」

 変身と同時に《ファントム》はジャンプ。全てのパワーを乗せたラリアットを《ガーデル》へぶつけた。

 転がりながら花壇へ衝突した《ガーデル》は、身体についた埃を払い落としながらすぐに立ち上がる。

「痛え目に遭ってばっかだな……で、また俺の相手は刑事さんか」

「それはこっちの台詞だ。性懲りも無く暴れ回って」

 《ファントム》はフラグメントメイスを取り出すと、跪く《ガーデル》目掛けて打ち下ろす。

「ぬん!」

 《ガーデル》は巻角がついた頭を打突部にぶつけ、フラグメントメイスを弾き飛ばした。そして《ファントム》へ組みつく。

「くっ!」

「また逃げ帰ったら流石にやばいからな。ちょいと本気でやらせて貰うわ」

 組みついた腕を蔦のように巻き付けると、そのまま振り回して建物へぶつける。更に道路へ引き摺り回し、もう一度振り上げて叩き落とした。

「これなら多分、あらぁっ!?」

 だが今度は《ガーデル》が振り回される。叩きつけられた場所に、《ファントム》は両足を着いて立っていた。その身体に傷らしい傷はついていない。

「これくらい日常茶飯事だ!」

「それは嘘だろガバァッ!?」

 頭から叩きつけられ、上半身が地面に埋まった間抜けな姿を晒す《ガーデル》。

「また仲間を増やすつもりだったのか? お前達が同時に暴れるなんて事無かったはずだ」

「……っ! 〜っ!!」

「答えろ!」

 次の瞬間、土の中から《ガーデル》の顔が飛び出た。

「この状態で答えられるわけないでしょうが!」

 そしてその手には、新たなフラグメントが握られていた。

「残念だけど本気出しても面倒いことが分かったんで、ちょっとズルしまーす!」


《ヘマタイト・ミノタウロス!》


 それを自らのフラグメントを抜き、代わりにフラグメントゲートに似た装置へ装填する。

「フラグメントゲートに似た装置……」

「改まってなんだよ……あ、名前知らねーのか。これグラインドゲートな」


《Mixing!》


《Impurities Mix Mix Mix!! ヘマタイト・ミノタウロス!!》


 《ガーデル》の姿が瞬く間に変容。右の巻角は湾曲して正面へ突き出し、山羊頭が備わった左肩に対して右肩に浮かぶ白目を剥いた牡牛頭。更には右腕に巨大な戦斧が絡みついていた。


「姿が、変わった……!」

「よっしゃ、いっちょ試してみますか」

 そして右手の戦斧を引き摺りながら突進する。《ファントム》は受け止めるべく構えた。

 だが、

「うぐぁぁぁ!?」

 受け止めるどころか、一瞬すら拮抗出来ずに突き飛ばされた。《ファントム》の身体が、停車していたパトカーに激突する。


「ほぉんほん、いいねこのパゥワー」




「おらおらぁ! 逃げ回れ雑魚どもぉ!」

 見境なく光弾を撒き散らし、街のあらゆるものを破壊し尽くす《セレスタ》。その魔の手は一般人にも伸びていく。

「ガキ見ーっけ。逃げられるかなぁ?」

 逃げ遅れてしまった子供へ、《セレスタ》は容赦なく光弾を投げつける。光弾は一切の慈悲もなく、幼子を打ち砕かんとした。


「変身!」


《ゲート カイホウ!!》


《風迅・ストーム!! ヴェントス・スピリット!!》


《スピリット・シルフィーネ理論!!》


 しかし光弾は、飛来した風の弾丸に掻き消された。幼子を攫った風の銃士は、駆けつけた両親の元へ届ける。

「ちっ、風の錬生術師か」

「弱い者イジメは良くないなぁ。弱っちい奴の癖に」

「はぁ!?」

 《スピリット》の挑発に容易く乗ってしまう《セレスタ》。これに気を良くした《スピリット》は更に畳み掛ける。

「あんれぇ、もしかして前回戦った時の事忘れちゃったぁ? 見た目だけじゃなくて頭まで鳥だったとは」

「こんのクソカスマフラー女ぁ!!! ぶっ殺す!!!」

 激昂した《セレスタ》の狙いが街や一般人から《スピリット》に移る。光弾は群れを成して《スピリット》へ降り注ぐが、

「単調単調〜」

 フラグメントマグナムとヴィトロガンによる弾幕がそれらを全て撃墜。《スピリット》に辿り着けたものはない。

「こんのぉ!」

「はいダメ〜!」

「ぁっ!?」

 《セレスタ》が追撃を浴びせるべく光弾を生成しようとした瞬間、《スピリット》の銃撃がその手を弾く。

 更に、

「飛んで〜!」

 フラグメントマグナムとヴィトロガンを地に向かって発射。反動で飛び上がった《スピリット》は《セレスタ》の胴体を両足で挟み込み、

「連射連射連射連射連射連射ぁ!!」

「うぁぁぁぁぁ!!」

 落下する最中、ひたすら2丁の銃を接射。そして地面に到達する直前で《セレスタ》を蹴りながら離脱し、《スピリット》だけが綺麗に着地した。

「残念でした〜。私にゃ逆立ちしたって勝てないね」

「調子に……乗んなよ!!」


 地面を殴りながら立ち上がる《セレスタ》。その手には新たなフラグメントが。


(何あれ……変な事されちゃ面倒だなぁ)

 《スピリット》はそれを見た瞬間、フラグメントマグナムで弾き飛ばそうとする。しかし《セレスタ》は読んでいたのか、

「やらせねぇよ!」

「おっと!」

 空いた手で光弾を放ち阻止する。そのままフラグメントを装填。


《セレンディバイト・ロック!》


《Mixing!》


《Impurities Mix Mix Mix!! セレンディバイト・ロック!!》


 胸部には新たに巨大な怪鳥の頭部が出現。背中から巨大な翼が二対出現し、左手の甲から生えた鉤爪の様な刃が煌めく。

「何よこれ……!?」

「やっば! 早くトドメ刺さないと!」

 すぐさま《スピリット》は風の弾丸を乱射する。だがそれらが着弾するより早く《セレスタ》は空へ舞い上がり、翼の先から光線を、そして全身から羽根に似たエネルギー刃を大量にばら撒き返した。

「ちょわっ、っ、と、とっ、痛っ!!」

 光線を掻い潜り、羽根の刃を撃ち落としつつ回避していた《スピリット》だったが、その先で待ち受けていた光弾に衝突。

 地面に転がるが、間髪入れずに地面を焼きながら迫る光線を跳ね起きて避け、瓦礫の山に身を隠す。


「やっばぁ……最っ高ぉぉぉぉぉぉ!!!」



「オレの方はお前が相手か。水の錬生術師」

 既に姿を変え、街路樹や電信柱を毒で腐食させていた《モルオン》。

 その前に姿を見せたのは、青いバイクに跨った灰簾だった。ユニコーンストライカーとよく似た外観でありながら、鰭に似たフロント部とマフラー、青いラインが走る車体。灰簾自身がユニコーンストライカーを解析し、ユナカの許可を得つつザクロの無許可で工房にて精製した、ケルピーストライカーである。

「イカすじゃねぇかそのバイク。どんくせぇ形してちゃんと運転出来んのか」

「アトラム相手に無駄話してる時間はないから」


《ゲート カイホウ!!》


《水渦・カタラクト!! アクア・レイス!!》


《レイス・ウンディーネの方程式》


 バイクを降りると同時に変身、水球を複数展開し、《モルオン》を囲い込む。

「おいおい、美人なんだからもう少し愛想良くしろよ」

 《モルオン》が茶化すも耳を貸さず、《レイス》は水球から鋭利な針を突き出させる。

 だが《モルオン》も2本の尻尾を振り回し、針を捌く。

「魔法使いってのは、殴り合いが出来ねえって相場が決まってんだ」

 そのまま尻尾の刃で水球を斬り裂くと、無防備な《レイス》を拳で打ち倒さんと迫る。

 しかし《レイス》は足元から水流を噴出。自らを天高く打ち上げて躱すと、反撃として水の剣を大量に生成。それらを《モルオン》へ向けて射出した。

「ぐっ、うぉぉ!?」

 《モルオン》は尻尾で払い落とそうとしたが、揺らめく姿からは想像も付かない高度で弾かれる。何とか直撃を免れるも、2つの尾は半ばから切断されてしまった。

「やっちまった……っ、ちっ!」

 歯噛みする間もなく《レイス》の猛攻は続く。先端は槍の穂先を模した水、それらを繋ぐのは鞭のように暴れ狂う水流。《モルオン》の尾にも似た2つの激流が襲い掛かる。

「やっぱ、ぐぉっ!? 水の錬生術師、昔っから強くて、相手なんか、してらんねぇ!」

 《モルオン》は付近に転がった瓦礫を《レイス》へ投げつける。飛来するそれらは激流によって切断されるが、当然そんな事は分かっていた。

「こいつを……試してみるかぁ」

 取り出したフラグメントを自らのグラインドゲートへ挿し込む。


《オブシディアン・ナーガ!》


《Mixing!》


《Impurities Mix Mix Mix!! オブシディアン・ナーガ!!》


 切断された2つの尾の断面から、大蛇の頭が這い出す。左肩から泣き叫ぶ女の顔が浮かび上がり、身体の筋肉は更に隆起。体毛の下からは爬虫類の鱗が迫り出す。


「何、あれ……姿が……!」

 《レイス》の感覚は変容した《モルオン》の姿に警鐘を鳴らす。2つの激流をすぐさま彼へ叩きつけようとするが、

「これは……やべぇなぁ!!」

 《モルオン》の尾に付いた蛇が毒の霧を吐きつけると、激流は瞬く間に黒ずみ、形を失って四散する。

「やぁっべぇぇぇ!!」

「そんな、うぁぁっ!!?」

 そのまま一気に走り出した《モルオン》は、《レイス》が回避しようとする間もなく接近。拳を胸へ叩きつけた。

 地面に叩きつけられる前に《レイス》は水の障壁を作り出して体勢を立て直すが、その足元が僅かによろめく。


「キマってんなぁこれはぁ! ハッハッハッ!!」



続く

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