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第39話 完全覚醒!! 光の錬生術師

 

 光の拳を炎の足が弾き、闇の蹴りは炎の蹴りが叩き落とす。《イグナイトリーパー》と《アンフィス》がぶつかり合う度、街の中を衝撃波と瞬光が走る。

「ぐっ、何だこの力、がぁっ!?」

 だがその力の差は明白だった。崩された体勢を立て直すより早く《イグナイトリーパー》の蹴りが胸の中心へ突き刺さり、呻きを上げる間にもう片方の足が喉笛を打つ。吹き飛ばされた《アンフィス》は地面を削り、止まると同時に跪く。

「ありえん……片方しかない紋章で、代償も無しに……!!」

 《アンフィス》は吐き捨てると同時に取り出したフラグメントを装填。


《アルゲントゥム・ワイバーン!!》


《アナライズ》


 飛竜の鉤爪と片翼を現出させ、《イグナイトリーパー》へ飛翔。落下の勢いと加速を乗せた蹴りを喰らわせようとする。しかし《イグナイトリーパー》は炎の翼を展開、《アンフィス》を蹴りで迎え撃った。

「こ、の……!」

「はぁっ!!」

「うぐぁぁぁっ!!」

 ぶつかり合った決着は、《アンフィス》が纏う銀色の鉤爪が溶けてひしゃげたことにより着いた。

 墜落した《アンフィス》はすぐに立ち上がり、もう1本のフラグメントを取り出した。


《アウルム・ワイバーン!!》


《アナライズ》


 途端に《アンフィス》の黄金の翼が突き出し、金と銀の翼が並ぶ。更に右腕の装甲も鉤爪の様に変形。2つの飛竜のフラグメントにより、更に攻撃的な姿へ変化する。

「消えろっ!!」


《アルゲントゥムワイバーン ルミナスクラッシュ》

《アウルムワイバーン ルミナスクラッシュ》


 右腕から黄金の爪を模した衝撃波、左足から銀色の爪を模した衝撃波の二連撃を繰り出した。


《チタニウム・ヘルハウンド!!》

《マグネシウム・ケルベロス!!》


《カンゼンネンショー!!》


 対して《イグナイトリーパー》はヴィトロサイズへ2本のフラグメントを装填。一度大きく振り、そして振り上げた。


《バーニングストライク!! ニセン!!!》


 3匹の白狼のエネルギーは、飛竜のエネルギー2つへ喰らいつき、共に爆散。爆風が吹き荒れるが、《イグナイトリーパー》がその中から飛び出した。


《ショートサイズ》


 その手には折り畳まれたヴィトロサイズ。高速回転するそれには地獄の黒犬の牙のエネルギーが纏っている。

「ウグルガァァァァァァ!!!」

 押し当てられた刃に《アンフィス》の身体は耐え切れず、再びその背を地面に付ける。



 今の不完全な自分では勝てない。



 屈辱と怒りに心が煮えたぎる中でも、《アンフィス》の思考は極めて冷静に結論を出す。加えてそれに答える選択肢は極めて少ないという結論も同時に生み出した。

 逃げる事は完全な敗北と自身の消滅を意味し、このまま戦い続けても同じ。そして自身の目的はこの戦いに勝利する事ではない。

「私の目的は!」

 《アンフィス》はイリガルヴィトロガンを取り出し、《イグナイトリーパー》の足元へ乱射。巻き上がるアスファルトの粉塵と土煙が視界を塞いだ。


 その一瞬で、《アンフィス》は《イグナイトリーパー》の後ろにいたザクロと晶の元へ迫る。

「そう来るとはね!!」

 ザクロはすぐにヴィトロガンで《アンフィス》を狙い撃つが、その程度では止まらない。

「完全な力を、取り戻す事だぁ!!!」

 《アンフィス》の手が、晶へと届く。


 事はなかった。


「な、にが……!?」

 《アンフィス》が伸ばした右腕に、炎の刃と鎖が巻き付いていた。


《ハーフサイズ》


 《イグナイトリーパー》は分割したヴィトロサイズの片割れを、《アンフィス》へ投擲、巻きつけていたのだ。

「晶くんは渡さない。そう言った」

「貴様、ぁぁぁ!!」

 背負い投げの要領で引かれた鎖。それは《アンフィス》を《イグナイトリーパー》の元へと引き寄せる。


《クリティカル リアクション!!》


 《イグナイトリーパー》の足へ、結晶の様な炎が宿る。そして、



《サラマンダー・フェニックス!! アルケミック・イグニッションブレイク!!》



 すれ違いざま、その背を切り裂く様に蹴り抜いた。


「ぁぁぁぁぁぁ!!?」


 地面へ何度もぶつかり、転がるうちに変身が解除されるアンフィス。その身体はピクリとも動かない。

「倒した……!?」

「いいや、まだだ」

 ザクロはヴィトロガンに透明なフラグメント・Vを装填。ゆっくりとアンフィスへ近づいていく。

「その少女からアンフィスを引き剥がす。結び付きが弱い今なら出来る筈だ」

 ヴィトロガンの銃口を向けられてなお、アンフィスは何も言わない。ただ憎しみの籠った視線を向けるだけだ。



「なぁんだよこれでおしまいかぁ!? アンフィス雑魚になっちまったわぁ……」

 それを見ていた《レヴァナント》は寝転がり、尻を掻きながら天を仰いだ。

「相棒悪い、ちっとも盛り上がんねーショーだっ……あぁ?」

 しかしその時、《レヴァナント》の眼はあるものを捉えた。

「ちょっと待て……こりゃもう一波乱あるぜ相棒」



「さようならだアンフィッ!?」

 それは一瞬だった。

 ザクロの身体を、虚空から突如出現した黒い刃達が突き刺した。肩、腕、足、いずれも急所は外しているものの、ヴィトロガンを取り落とした上に一切の動きが封じられる。

「ザクロ、っ!?」

 《イグナイトリーパー》はすぐさま彼女を助け出そうとするものの、同様の黒い刃が檻を形成する様に取り囲む。

「私に構うな!! 晶くんを!!」

「くっ!!」

 炎の翼で刃を破壊し、《イグナイトリーパー》は晶の元へ行こうとする。

 しかし、倒れていたアンフィスが突然飛び上がり、《イグナイトリーパー》より先に晶へ組み付いた。

「晶くん逃げろ!!!」

「逃がすものか!!」


 アンフィスの左眼が輝き、呼応する様に晶の右眼も光り始める。


「うっ、くぅ……!!」

「遂に、遂に完全な、っ、なぁっ!?」

 だが、誰も予想していない事態が起きる。


 晶の右眼の輝きの方が、アンフィスの放つ輝きよりも優っているのだ。

「ぁぁぁ、あぁぁぁぁぁ!! バカな、いくら力が弱まっているとはいえ子供如きにぃぃぃ!!?」

「僕だって……何も出来ないなんて、言ってられない!!!」

 中身が無理矢理引き摺り出されそうな、感じたことのない不快感に抗いながら、晶は叫ぶ。

「そのお姉さんから、出て行け!!」

「代替品如きがほざくなぁぁぁ!!!」


「晶くん!!」

 ようやく《イグナイトリーパー》が2人の元へ到達する。しかし手を伸ばした瞬間に再び黒い刃が降り注ぎ、その腕と身体を貫く。

「くっ、さっきからなんだ、何処から!?」


「僕は、僕だって!!」

 晶の右眼の光は遂にアンフィスを呑み込むまでに強くなる。対するアンフィスは膝を着いた。

「ここまで来て、こんなぁぁぁ……!!」

「みんなを……!!」



── 嫌だよ ──



「ぇ」



── もう、帰りたくない ──



「今のって」



 2人を包む光が、爆発した。


「うぁっ、くぅっ、晶、くん!!!」

 黒い刃が弾け飛び、《イグナイトリーパー》とザクロは自由になる。だが既に遅い。行く末を2人は見届けることしか出来なかった。


 光が収束した場所にいたのは、



「晶くん……!」







「何が起きたのかは分からないが」



 駆け寄ろうとした《イグナイトリーパー》の足は、晶の言葉を聞いて止まった。ザクロの表情は苦痛に歪んでいる。


 その手には、もう1つのフラグメントが握られていた。


「目的は達成だ」


 晶、否、アンフィスの両眼に、光の紋章が浮かび上がった。


《ルクスドラゴン・レフト》

《ルクスドラゴン・ライト》


 左手に備わったミッシングゲートの欠けた右部分が発光、砕け散り、左と同じ扉が出現。真の姿である《ステラゲート》へ変化する。そこへ2本のフラグメントを装填した。


《アナライズ》


 両方の扉を閉じる閂に似たロック部に手をやり、小さな笑いを浮かべて、

「変身」

 それを外した。2匹の竜が向かい合い、その眼が同時に眩い光を発する。


《ゲート・カイホウ》


《Open the Gate!! Glory and Wisdom intersect!! Twin Dragons dominate The World!!! Perfect Awakening Shining Dragon!!》



 光が満ちた満月の様に、その身体に纏う黄金の装甲に一切欠けている場所はない。2匹の竜の頭が向かい合う複眼はブラックゴールドの輝きを放ち、顎は牙が並ぶ様な造形へと変化。装甲はより鋭利な刃の様に逆立ち、背には翼脚が息を潜める様に折り畳まれている。



《Open the Dragons Eye》



「遂に返して貰ったぞ……私の右眼!! 完全な私の力を!!!」


 《アンフィス》の本来の形態。取り戻した光をその身に宿し、《イグナイトリーパー》へ向き直った。



続く

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