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ムケチン作戦~夕日

時刻は午後5時40分を過ぎて、

空はオレンジ色に染まりつつある


チームチャーリーのサトシが合流して

3名となったチームブラボーは、

線路から石階段を上って社務所の前に居た。

2匹の犬は、ヨッシーとウメさんの側に

ピッタリとくっついて

性犯罪者サトシを警戒している


ウメさんは、

片手にサトシから受け取ったショットガンを

持っているが、

もう片手で通信機を取り出して言った



「こちらチームブラボー、矢之板智が合流した。

 彼から、ショットガンとシェル6発を

 受け取ったわ


 今の状況は、大砲の台座にC4を設置済み、

 人型との接触はなし、

 これから建物の防備を固めて列車を待つ」



即座に、返事が来た



「こちらチームチャーリー、ジジイです。

 ウメさん、サトシをよろしくお願いします

 

 サトシ、無事に到着して何よりだ。

 こちらは、順調にやってるから

 チームブラボーを頼むぞ


 おーいヨッシー、ウメさんにご迷惑を

 おかけしていないか? 

 ちゃんとしっかりとやるんだぞ!!」



何やら立て続けにメッセージを送るジジイに

ヨッシーは、仕方なく自分の通信機で返答する



「ああジジイ、こちらは任せてくれよ、

 今の所は心配することはないぜ。

 

 それと、一つニュースだ


 昔、俺、ここの神社で犬に噛まれたろ?

 そん時に俺を噛んだ犬と再会した。

 さらにもう一匹増えてて合計2匹だ


 犬太郎と犬次郎と名付けて、関係は良好だ」



すると、妹のスミレの声が言った



「え?マジで、あの時の犬と再会したの?

 そんで仲良くなったんだ!

 やったじゃん、にぃ、

 犬嫌いを克服したんだね、おめでとう!!

 昔の恨みは忘れて、

 存分に可愛がってあげなよ」



と、唐突に、

通信機の会話に割りこんできたのは

ちんかわむけぞうの声だった



「あー、こちらチームアルファ、

 会話に割りこんでスマン。

 しかし、遂に人型と接触したので報告する


 たった今、3体を倒したところで

 ...おっ!!」



通信機越しに、銃声が鳴り響いた



ズダンッ、ズダダンッ!!



再び、むけぞうの声が言った



「さらに2体を倒したので、合計5体だ


 列車の修理は順調だが、

 やはりまだまだ時間が掛かかりそうだ。

 その上にもうすぐ日も落ちて

 周囲は暗くなるだろう。

 チームブラボーにチームチャーリーも

 よく人型に警戒されたし


 それとヨッシー君、犬と仲良くなるのは

 いいことだ、彼らは人型の接近に我々よりも

 先に気が付くからね.....以上」



皆に緊張が走る....


ウメさんとヨッシーと犬2匹から

少し離れた場所に立っていたサトシが言った



「暗くなる前に急がないといけませんね!

 早速、俺は鉄条網を張りましょうか?

 ワイヤーとペンチはあるんですよね。

 えっと、この2棟の建物を囲めばいいですか」



ウメさんが答える



「ええ、この社務所と神楽殿を

 我々の拠点にする。

 

 矢之板さんとヨッシー君で鉄条網を張って、

 私は照明の設置と見張りをしましょう」



こうして、ヨッシーとサトシは一緒になって

作業を開始した。


胡麻毛の犬太郎が、

ヨッシーの側にピッタリとくっついていて、

まるで護衛でもしているみたいだ。

ウメさんには、白毛の犬次郎が同じく

くっついている


2匹とも、サトシが近くに来たとたんに

牙を剥き出しにして唸り声を上げるのだ


5年前、まだ世界が正常だった時に、

連続強姦事件を起して逮捕された男.....


ヨッシーから見たサトシは、テキパキと働く

気の良さそうな30代前半のオッサンだった。

灰色の作業着を着て、比較的小柄で細身の体格、

髪は短くスポーツ刈りで、

よく日に焼けた顔は真剣だった


....先ほど、4キロ走ってきたばかりなのに

本当に、大したものだ


サトシは、ワイヤーの円状の束から

少し線を切り取ると、それを使って束を縛り、

真ん中からスムーズに取れるように加工した


そしてあっという間に、

二つの建物の裏の森に鉄条網を張る。


森と境内は、腰の高さほどの石製の玉垣で

仕切られている。

サトシは、張り出した木々をうまく利用して

玉垣の上にワイヤーを張り巡らせていた


ヨッシーは、束からワイヤーを手繰り寄せて

サトシのほうへとスムーズに送る手伝いを

していた。

すぐ側に犬太郎が居て、サトシを警戒している



「矢之板さん、すごく手慣れてますね!」



犬太郎の頭をなでなでしながら、

離れたサトシに向けて声を掛けるヨッシー


サトシはヨッシーのほうを向いて答えた



「山林班でいつもやってるんだよ。

 山の木々を使って、作業範囲をこうやって

 即席の鉄条網で囲むんだ。

 すっかり手慣れたものさ


 でも人型は、人間の近くに来ると

 力が強くなるだろ?

 数体程度ならなんとかなっても、

 集団になると鉄条網を破られるかもしれない


 だから、あえて通り道を残しておくんだよ」



サトシによると、神楽殿と社務所の裏の森は

鉄条網で厳重に壁を作るが、

境内のほうはあえてそうせずに、

人型を迎え撃つようにするということだ



「どういうわけだか人型は、

 目の前の障害物を強行突破するよりも、

 近くの侵入路を察知して

 そこに向かうことが出来るみたいなんだ


 リバーサイド同盟では、

 対人型迎撃戦闘の基本になっている」



サトシの説明に、ヨッシーが答えた



「ええ、どの道、ここへ来た人型は全て

 駆逐しないといけないわけですからね。

 だとしたら、人型を迎撃しやすい神楽殿へと

 おびき寄せたほうがいいですね」



サトシはニコリと微笑んだ



「ビンゴ!!多分、ウメさんも

 そのつもりでいると思う


 社務所は、張り出した軒下の柱に

 ワイヤーを巡らせよう。

 そうすれば、脆弱な窓ガラスや壁を

 破られずに済む」



すると、ウメさんが視察にやってきた


濃紺色の警察の出動服に、腰に差した軍刀、

単発式ショットガンを肩に担ぎ、

白毛の犬次郎を引き連れている


その様はまるで、『西郷どん』のようだった



「ウメさん、一瞬、西郷どんに見えましたよ」



ウメさんが言った



「おやっとさー、二人とも」



サトシが、ウメさんのほうに近寄って

説明している。


興奮する犬次郎を押さえながらも、

ウメさんは微笑んで言った



「矢之板さん、あなたに任せて大正解だったわ。

 あなたの言う通り、神楽殿の高い舞台の上で

 人型を迎撃するのがベストよ


 そういえば、社務所の中に携帯食と水が

 あるから、適度に休憩を取ってね


 あっ、確か...

 ヤキタコが作った弁当があったわよね。

 ヨッシー君、私のぶんを矢之板さんに

 あげていいわよ」



神楽殿と社務所の裏の森は、すでに大方、

鉄条網が出来上がっている。

後は、森のほうから倉庫を通って、

社務所の柱と、

さらに神楽殿の柱にワイヤーを張れば完成だ


周囲は濃いオレンジ色に染まっている


3人と2匹は、ふと、海のほうへと目をやった



「おおー、なんて美しいサンセットなんだ」



サトシが感嘆の声をあげている。


ヨッシーはつくづくと言った



「本来、海は、人型の支配が及ばない

 平和な場所のはず....


 海にこそ、生き残った人間の未来が

 あるはずなのに。

 結局の所、力を振りかざす連中の独壇場に

 なってしまうんですかね」



しばらく無言が続いた後、サトシの声が言った



「ヨッシー君、君たちの島って

 ここから見えるのかい?」



ヨッシーは、南東のほうを指さした



「ほら、地平線の彼方、

 薄っすらと粒のように見えるのが

 俺達の島ですよ」



淡いオレンジ色の太陽がドンドンと沈んでいく


3人は、それぞれの物思いに耽りながら、

しばらくその光景を見つめていた



 

 

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